白銀の輝き[冬まつり]
部屋に入ると、誰かが絨毯の上にペタンと座り込んでいた。
レースで縁取られた裾の長いドレスがふわりと広がり、散りばめられたビーズが暖炉の火の揺らめきを写してキラキラと光る。
淡い色の布よりも白い肩には銀色の髪がかかり、前髪の下から覗く同じ色のまつ毛には、真珠のような涙の粒が宿って…
思わず息をのんだアロウだったが、はっと我に帰る。
「えっ、泣いて…?」
途端に人形のようだったドレスの子の表情が崩れる。
「うわーんアロウ!!たすけてえ」
「ちょ…」
聞きなれた声の持ち主が飛びついてきた。
「今日もう着替え5回目だよお!!もうやだああ!!」
祝祭の日のイベントを前に女性陣の着せ替え人形と化したシンが泣きつくが、アロウは首を横に振る。
「すまん、シン…無理だ」
年に一度のお祭りにかける女性陣を邪魔したらどんな目に遭わされるか。
背後で女性陣がひそひそと話し合う声がする。
「この反応は120点ですね」
「じゃあこのドレスをベースにしましょう」
「シン君、今度は髪を結いましょうねーこっち来てくれる?」
「まだやるの!?」
シンの悲鳴が響き渡る。
年末のお祭りの『ドレスアップコンテスト』の豪華賞品を目当てに、女性陣は一切の容赦がない。
アロウはそっと部屋を出て扉を閉めた。
「あっ、モデルが逃げた!」「窓閉めて窓!」「確保―!」
部屋の中でどたばたと足音が響く。
魔獣ならどんな相手でも怯まない冒険者も、目の色を変えた女子には敵わない。
心の中でシンに謝りつつ、アロウは部屋に逃げ帰ったのだった。




