一緒に行こうよ
アロウがみなしごのシンと行動を共にするようになってしばらく。
生まれも育ちも、考え方も違う二人。
アロウはシンに歩み寄ろうとするがなかなかうまく行かない。
市場は多くの人が行き交い、混雑していた。
「ほら」
アロウが手を差し出す。
その手をシンはきょとんと見返した。
「…なに?」
その戸惑いを接触拒否と捉えたアロウが付け加える。
「触るのが嫌だったらこっちでもいい」と袖を示す。
つかまってろ、ということらしい。
「そうじゃなくてさ…」
シンにとって市場は買い物に立ち入ったことはないとはいえ、勝手知ったる市街地の一角だ。
心配される必要はない。
「はぐれたら、宿に戻って待ってるからいいよ?」
「そういうことじゃなくてだな」
アロウはアロウで、意図するところが伝わらずに髪をぐしゃぐしゃとかき乱す。
シンと話していると、何かが微妙に伝わっていない感じがする。
「はぐれないようにするためだ。…うまい店案内するから」
一緒に市場を回ろうという趣旨が通じていない。
だが、食事と聞いてシンの目が輝く。
「えっ、行く!!」
あっさりとアロウの手を掴んで引っ張った。
「…飯が食えたらなんでもいいのかよ」
アロウはぼやきながら、小さな手をそっと手を握り返す。
食事も寝床ももう心配ないのだと、シンが理解して普通の生活を送れるようになるまでには、想像以上に時間がかかりそうだった。




