ごはんの時間!
「なーアロウ、いつ起きるんだよ」
その日、アロウはいつまでも起きてこなかった。
布団の奥からかすかに返事はある。
「……大技使ったあとは……ねむ…」
昨日帰ってきてからこの調子だ。
もっとも、疲労困憊するほど大太刀回りをしたのだから仕方がない。仕方はないのだが…
「ボクおなかすいたよぉ」
食をアロウに頼っているシンには死活問題だ。
おなかがぐうぐう鳴る。
「……財布そこ……好きなの買っていい…」
毛布からにゅっと突き出た手がテーブルの上を指さすが、すぐにぱたりと布団に落ちてしまう。
「はあ!?」
シンは仰天して大声を上げる。
財布というのは、シンにとっては命綱のようなものだ。それをアロウは持って行って好きにしろと言う。
「ボクが使いすぎたり、持って逃げたらどうすんの!?」
アロウの肩をゆするが反応は鈍い。
「……んー…また稼ぐからいいよ……」
ゆらゆら揺れる手がぽんとシンの頭の上に載せられる。
「腹減ったらまた戻ってこいな」
「なっ……」
信じられない思いでいっぱいだった。
「財布を他人に預けるとか頭おかしいんじゃないの!?」
「他人じゃ…ないだろ……」
「え」
シンの感覚では自分がいはすべて他人だ。心底信用することなんてできない。
「た、他人じゃなかったら何……」
「……ぐぅ」
恐る恐る聞くが、アロウはまた寝入ってしまって反応はない。
取り残されたシンは意味が分からなくて頭を抱える。
「ばかー!!」
腹立ちまぎれに思い切り布団をかぶせて埋め、ついでに自分の毛布と布団も持ってきて積んでやる。
アロウは指の先がかろうじて見えているが、もはや何の反応もない。
「……生きてるよね?」
ちょっと不安になって覗き込むと、規則正しい寝息が響くだけだった。馬鹿馬鹿しくなってシンは身を起こす。
「こいつがそうそう死ぬわけないか」
テーブルの上のアロウの財布に目を移す。
いいと言われたのだから、朝餉を買ってこればいい。
「……罠じゃないよね?」
盗人だと言われ嵌められる可能性を考えたが、布団の底でむにゃむにゃ言っている相手がそんなことを言う姿がどうにも想像できなくて困る。
「調子悪い時は粥がいいんだっけ……?」
ぼやきながら上着に袖を通した。
ゆっくり寝させて、体によさそうなものを食べさせて。元気になったら、今度こそ文句を言ってやろうと決意する。
「行ってきます」
小さな声で告げて、シンはそっと扉を閉めたのだった。




