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ねがいごと

 シンは律儀な子だ。

 借りを作って行動に制限を受けるのが嫌なのだろう。

 アロウに対しても部屋代を(割安に設定してはいるが)きちんと払ってくる。

 装備品はさすがに高価でどうにもならないため、「貸す」ということで話をつけたが……


 アロウは悩んでいた。

「プレゼント、って言っても今は受け取らないか……」

 アロウの手元には今、小さいサイズの靴がある。

 先日シンに自分の古めの靴を一足貸したが、サイズが大きすぎて詰め物をして渡した。

 案の定歩くたびにかぽかぽと音をたたているし、走ろうとして転倒していた。

 あれでは何かあった時に全速力が出せない。

 靴の調達は優先事項だった。

 そんな中、知り合いの店先でちょうど探していたサイズの靴がほぼ新品同然で売りに出されていた。

 新品の靴をオーダーできるのは、金のある連中だけだ。

 ぴったりのサイズの靴などめったに手に入らない。

 当然、その場で購入を即決した。

 しかし受け取らせるのにどうしたらいいのか。


「何か仕事をやり遂げた時に"ご褒美"って言ってみるか」

 アロウは部屋の隅の道具の山の覆いを外し、てっぺんにそれを置く。

「まあ、もし俺がいなくなった時は全部あいつのものだしな」

 積まれた材料や道具一式には買取を依頼する文書を用意してある。

 売ればしばらくは食べるのに困らない。

 その間に協会や薬屋の店主がシンの処遇を取り計らってくれる筈だ。

「……もしもの話だ」

 アロウはため息をつくと、覆いを元通りにした。

 いつか自然に手渡しできる日が来ることを願って。

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