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第60話 Sideロナルド


〈ロナルド視点〉



初めて、自分の命より大切だと思えるものを見つけたんだ。


あいつが俺とディグレに結界を張った時、無防備のあいつに向かって行く魔物を初めて怖いと思った。


魔物を怖いとは思った事は無かった。憎むべき存在なだけだった。その俺が……恐怖を覚えた。自分のせいでクラリスを失ってしまうのかと思った時、俺は自分のこの行動を死ぬほど後悔した。


彼女は驚く程のスピードで魔物の股下をくぐり抜けると、ひときわ大きな弓を作り出す。彼女の聖なる力は本当に美しい。あんな時なのに、俺は一瞬見惚れてしまった。




「どうしてあんな無茶をしたんだ」


骨が折れたと思った。だけどそれをクラリスがたちまち治していく。彼女は魔物を倒すのに力を使いすぎたのか、思うように俺を治せず、焦っている様だった。


責めるような口調になったのは、自分の不甲斐なさにイラついていたからかもしれない。


気付けば俺は、彼女を抱き締めていた。そんな自分に俺自身驚いた。




「頼むから……もうあんな事はしないでくれ。不甲斐なかった俺のせいだが、お前に魔物が向かって行った時、心臓が止まるかと思った」


素直な俺の気持ちだった。俺がクラリスを無理矢理森から連れ出した事をこれ以上後悔させないでくれ……そう思った。


彼女が腕の中に居る。改めてそう思うと、胸が異常にドキドキして煩い。


彼女にそれを悟られていませんように……俺は神に祈るしか無かった。


いよいよ魔王が封印された山へと入る。さっきの小さな山かと思うほどの魔物には驚かされたが、クラリスの結界のお陰で、山登りに集中出来た。


彼女の歩幅がほんの僅かだが、小さくなった気がした。俺は足を痛めたのではないかと心配になる。




「大丈夫か?」


きっと彼女はこう答えるだろう。




「はい、大丈夫です」


ほらな。思った通りだ。俺もディグレも彼女のお陰で体力も回復、痛みもない。だけど、彼女は?


アナベルは大勢の聖騎士に癒されながら旅をしている事だろう。しかも馬車に乗って。


それに引き換えクラリスはどうだ。力を使い、疲れ果ててもなお、俺とディグレの為に力を使う。痛みも、我慢。ハァ……不公平なものだ。




「ほら、手」


また背負ってやると言った所で彼女は背負われながら、俺を癒し続けるのだ。これなら、彼女に余計な気を使わせずに済む。そう思って手を繋いだのだが……これは思ったよりも恥ずかしい!!!


俺はそれを誤魔化す為に、口を動かす事にした。




「私を下剋上に誘う前にちゃんと調べて下さいよ!!」


怒られた。


恥ずかしさを誤魔化す為だったが、俺は大切な話を忘れていた。




「聖女から選ばれた人間にしか教えられないんだよ!お前こそ聖女試験で歴史とか学んだんだろ?その中に無かったのか?封印方法」


つい強めに反論してしまった。恥ずかしさを誤魔化す事に力が入りすぎた。


だけど、何だが学園時代に戻った様な気持ちになって何故かホッとした。




「ロナルド様、私に嘘をつきましたね?」


俺が王宮を飛び出した理由を彼女に話した時だった。急にそう言われ戸惑ってしまう。


しかし彼女は言った。




「……私、下剋上を決めて良かったです。貴方に付いてきて良かった」


そう言われた時……俺は許された気がした。自分のわがままに彼女を巻き込んだ事を。


彼女を失うのが怖い。そう思った瞬間から、俺は自分の計画を後悔していた。


下剋上なんてかっこいい事を言ってるが、彼女の力を利用するだけだ。彼女は魔女のレッテルを貼られていても、森で穏やかに動物達と暮らしていた。その生活を壊したのは俺だ。彼女に何かあったら……俺は自分を許せない、そう思っていた。


だが、彼女は俺を許してくれたんだ。


ならば俺は、全力で突き進むだけだ。必ず兄さんやアナベルより先に魔王を封印する。そして彼女に……兄さんとの結婚をプレゼントするんだ。


そう思った俺の心が軋む。痛くて堪らない。だけど、俺はその気持ちに蓋をする。




……俺は国王になる。もう一つ欲しいなんて、それは欲張りというものだ。



































































































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