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第36話　Sideロナルド

〈ロナルド視点〉

「やっと着いた………」

俺は森の前で、馬を降りた。

「お前も疲れたよな……本当にごめん」

愛馬の首をポンポンと撫でる。何度も馬を変えようと思ったが、その度にこの馬は『まだやれる』という目で俺に訴えかけてきた。

だが、あまりに馬を酷使しすぎた。俺は愛馬を手放す事も出来ずに、最後は馬を引いて歩く羽目になってしまった。

既に俺もへとへとだった。魔物の数は日に日に増えている様に感じる。魔物を倒しながらの旅路はなかなかハードだった。

さて……と。いよいよ森に入る。俺は愛馬を置いていこうとしたが、馬は痛む脚をヒョコヒョコしながら付いてきた。

「お前……」

そう呆れた様に言ってみたが、内心は嬉しかった。

森の外に置いていても魔物に襲われるかもしれない。そんな言い訳を自分自身にしながら、俺は相棒と共に森へと向かった。

しかし中々緊張する。この森の雰囲気がそうさせるのか、はたまたクラリスがどうなっているのか分からないからなのか。

俺は『フッ！』と大きく息を吐いて、森へと入っていく。

少しずつ森の奥へと入っていくのだが、なんだか足元が、おぼつかなくなってきた。フラフラする。それでも気力で俺は足を進めた。

「はぁ……」

今度は目が霞む。視界が歪んで見えた。

「やばいな……」

自分の状況に危機を感じる。このまま倒れたりしたら……魔物の餌食になるかもしれない。

とはいえ、この森に入ってから魔物には出会っていない。

禍々しい雰囲気を纏っている森の割に……と、そんな事を考えていたら、今度は頭に靄がかかった様な感覚が俺を襲う。

あ……倒れる。そう思った瞬間、歪んだ視界の先に白いものが物凄い勢いでこちらに向かって来るのが見えたが、俺はそのまま意識を手放した。

カチャカチャと食器が合わさる様な音が微かに聞こえる。

えっと……俺は今何をしてたんだっけ？あれ？森に着いた所ぐらいまでは覚えてる……でも、今俺の背に当たっているのは、土でも、砂でもない。

俺はゆっくりと目を開けた。

見知らぬ天井が目に入る。丸太で組まれた小屋の様だ。

すると俺の目の前に……

「ワッ！！」

白い獣がぬっと顔を出した。

「あら？目が覚めましたか？」

女の声が聞こえる。しかし俺の視界には全面に白い獣……虎の顔。

その女の声がこの虎から発せられたものでないとしたら、この小屋には誰かがいる筈だ。

だが、こいつが退いてくれなければ、それが誰かも確かめられない。

それに……少しでも動けばこの虎に食われるかもしれない。此処まで来て虎に殺られるのは嫌だった。

「ディグレ、看病ありがとうね」

そう言って、その虎の後から顔を出したのは、

「クラリス！」

俺がこの森に来た目的である女性の顔だった。