第86話 本社前
バイクを走らせて数時間……途中でサービスエリアで野宿したり、ネカフェでシャワーを浴びたり、一緒に添い寝したりして……ついに。
「ここが……」
「……センテンドー本社」
センテンドーの本社、それは、ニュースの映像で見た時とかなり違っていた。
辺りは岩石で覆われているように見え、ビルというよりも、まるで悪魔のお城のように見えた。
この辺りは関西でも有数のオフィス街のはずだが、人っ子一人見えず、全員避難しているように見えた。
「純ちゃん……」
「はい……この中で……社長が籠城していると思われます」
「なるほどね……」
まさに魔王って感じ?
まぁ、世界を混乱させているわけだし、間違ってはいないね。
……討伐と行きますか。
「それじゃ……配信スタートしようか、純ちゃん!」
「はい!」
私たちは腕輪を付け……携帯を口元に近づけた。
「「ライブオン!!」」
『オーソライズ、百地美羽、ログイン』
『オーソライズ、井上純、ログイン』
機械音声とと共に、待機音が鳴り響く……純ちゃんの待機音は、私のとは違って、ロック調のかっこいい感じだった。
なるほど、純ちゃんらしいかもね。
「えーっと……これで、腕輪に嵌めるんですよね?」
「そうだよ!」
「よーし!」
私たちはお互いに、携帯を腕輪に嵌めた。
『百地美羽、ライブ、スタート』
『井上純、ライブ、スタート』
そんな音声と共に、私たちはVtuberの姿へと変身した。
純ちゃんの姿は資料通りの赤い衣装……おお……生で観ると、凄いカッコいい……。
『こんみうー! ダンジョン配信?』
『おおおお!? 美羽ちゃんの隣の人誰?』
『Hey Who That Red Guy?』
『え? これ純様の配信枠だよね? この人……誰?』
『イノジュンどこよ?』
お互いのコメント欄を見てみると……どうやら、純ちゃんの視聴者さんは、当然だとは思うが、困惑していた。
そりゃ、見たことのない赤い人が突然配信枠に現れたらそうなるよね……ま、挨拶しようか。




