第70話 素直な気持ち
「じゃ、入ろ、純ちゃん」
「はい……」
純ちゃんは表情を緩め、私の腕に絡みついてきた。
だ、大胆だな……まぁいいけど。
お互いに片足ずつ、湯船に足を踏み入れた。
お風呂の中に入った私たちは、お互いに背を向けて座った。
「ふぅー……あったかくて気持ちいい……っと、ちょっと年寄りみたいかな?」
誰かと一緒に入るのは恐らく幼少期以来だけど、なんか気分が清々しい。
「ふふふ……」
「……純ちゃん、今笑ってる?」
「はい……ふふふ」
「……あはは」
純ちゃん、すっかり元気を戻してくれた……のかな?
今なら……何があったのか、教えてくれるのかな?
「ねぇ、純ちゃん……その……錦糸町で別れた後、何かあったの?」
「……」
純ちゃんは……何も答えてくれなかった。
うーん……やっぱりダメかな?
あんまり無理して言わせない方がいいかもしれないけど……ここは。
「ねぇ……純ちゃん」
「……」
「純ちゃんってば!」
私は純ちゃんの方に振り向き、声を掛け続けた。
しかし……純ちゃんはこちらに振り向くとことも無く、沈黙していた。
これでもダメか? これじゃあ埒が明かないな……ここは……仕方がない。
「……純ちゃん」
私は……純ちゃんを包み込むように、後ろから抱きしめた。
「……え?」
純ちゃんは……私の行動に驚いたのか、驚愕の表情で、こちらに振り向いた。
私は純ちゃんの体を……力強く抱きしめた。
「純ちゃん……」
「み、美羽……さん?」
「純ちゃんの身に何かあったのか……教えて?」
「……」
「私……純ちゃんのそんな姿……もう見たくないよ」
「……」
私は思っていることをありのまま話した。
今の純ちゃんは……らしくない。
このままだと……私まで暗い気持ちになってしまう。
「ねぇ純ちゃん……たとえどんなことがあったとしても……私は……純ちゃんの味方だよ」
「美羽……さん」
純ちゃんは体を震わせ……涙を流し始めた。
私はその姿を見て……つい、貰い泣きしてしまった。
だめだね……年取ると涙脆くなっちゃって。
「……美羽さん!!」
「じゅ、純ちゃん!?」
純ちゃんは突然、私を抱きしめ返してきた。
私はバランスを取れず、首まで湯船がついてしまった。
「ちょ、ちょっと純ちゃん……私……溺れちゃう……」
「あ、す、すみません!」
間一髪、私は溺れることはなかった。
私たちは……お互いに肩を掴み……見つめ合っていた。
なんだろう……今の純ちゃん……凄く綺麗……。
「あ、あの……美羽さん?」
「あ、ごめん!」
いけないけない……変な気分になっちゃった。
「そ、それで……純ちゃん、結局、あの後何があったの?」
「あ、そうですよね……じゃあ……」
……純ちゃんは……錦糸町で何があったのかを離し始めた。




