第61話 喫茶店
数日後……。
私は下山さんに指定された喫茶店へと足を運んだ。
ここはセンテンドーの東京支社の目の前にある……都内一等地の喫茶店だ。
恐らくコーヒー一杯で1000円とか普通に飛ぶだろう……覚悟するか。
「いらっしゃいませ」
「あの……人と待ち合わせをしていまして……」
「会川様ですね、お話は存じております、こちらへどうぞ」
「あ、はい……」
店員さんは私が名前を名乗ろうとしたその時、まるで予知していたかのように私の名前を出し、席へと案内された。
下山さん、既に話を通していたのかな?
案内された席は……ちょっと高めなお店にありがちな個室の席だった。
中には、そんな高級なお店とは全く釣り合わない、地味目のパーカーに地味目なジーンズをはいた、眼鏡を掛けた女性が座っていた。
この人が……下山さん?
「あ、と、とととととととととと、突然、よ、よよよよよよよ、呼び出してしてしてしてして……」
……下山さんは緊張しているのか、私が個室に入るや否や、即座に立ち上がり、頭を何度も下げた。
言葉にも呂律が回って無く、同じ言葉を何度も繰り返していた。
「あ、あの……落ち着いてください」
私は冷静に彼女の肩を優しく叩き、犬をあやすように座らせた。
「あ、すすすすすす、すみません! わ、私……あんまり、人と……話したこと無くて……も、もももも、もしかしたら、失礼な事、言っちゃったりとか、不愉快な思い、させちゃったりとか……その……ごめんなさい!!」
「いや、貴方何も悪いことしてないですよね!?」
どうやら下山さんはかなりのコミュ障らしい。
私も人と話せない方だけど、流石にこのレベルは……。
「と、ととととととと、とりあえず、せ、席へどうぞ……お、お飲み物は、既に注文したので、す、すすすす、すぐ来るかと……あ、でも、もしかしたら、嫌いな飲み物だったり……」
「い、いえ! 別にいいですから!」
正直今喉乾いてないし、コーヒーだろうがお茶だろうが、こういう店の飲み物は値段相応で美味しいに決まっている。
チラッとメニュー表を見たら、コーヒー一杯で900円……今後よほどのことがない限り来ることはないだろう。
私たちはお互いに自己紹介を済ませ、しばらくすると、店員さんがコーヒーと茶菓子を持ってきた。
この茶菓子もきっとめちゃくちゃ高いんだろうな……2人合わせて5000円は行くだろう、多分。
……私は早速コーヒーを口に含んだ……美味しい、けど、私はインスタントで十分かな……。
ふと、下山さんを観てみると、茶菓子にもコーヒーにも手を付けず、ただ下を見てモジモジとしていた。
……この人、何のために私を呼んだんだ? しかもこんな高級なお店に……ちょっとこっちから切り出すか、埒が明かないし。




