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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第93話 ほとぼり冷めたかな?


 物置小屋への2機のガソリン発電機とガソリンタンクの設置、それに排気管の延長は一度やったことがあった関係で簡単に終わってしまった。玄関前で巻いて束にした100V用のコードと200V用のコードを伸ばして、物置小屋の出入り口の上あたりに孔を空けて中に通し、発電機につなげてやった。プラグをコードの先につなげるところは多少面倒だったが、何とかなった。


 しかし、黒焦げになっていただろうガソリン発電機やガソリンタンクだがこうして新品として蘇った姿を見ると、錬金工房とはまさにとんでもない能力だかスキルである。


 人間それなりに生きていると、大抵は過去の自分に足を引っ張られるものだが、アイテムボックスと錬金術のレベルをマックスにまで上げた過去の自分に今の俺は大いに助けられている。



 片側の発電機を起動し、コンセントにコードのプラグを差し込んで屋敷に戻った俺は、屋敷の中の電気製品をもう使っていいと華ちゃんに言っておいた。



 その日は、その後いつも通り風呂に入り夕食を食べ、金のサイコロを作ってぐっすり眠った。



 翌日。


 俺は日本の状況を確認するため意を決して東京駅に転移することにした。東京駅の近辺は人が多そうだし、俺も簡単に思い出すことができる場所だったからだ。スマホを持って跳べば、何か連絡があれば受信するだろうし、なくてもニュースを見ればなにがしかの情報が得られるだろう。


 朝食を食べ、子どもたちを送り出した俺は、華ちゃんに、


「日本の状況を確認してくる。1、2時間で帰ってくるつもりだ」


「分かりました。何かあったら教えてください」


「もちろんだ。

 それじゃあ。転移」


 スマホのスイッチを入れて俺は日本に転移した。



 俺が現れたのは東京駅の八重洲側の一画。人が沢山行き来していたが、誰もいきなり現れた俺のことを気にとめてはいないように思う。今回も何も考えず転移したのだが、転移先に何かあったらどうなるのだろうか? 転移術Lvマックスに隙はあるはずないので『い・し・の・な・か・に・い・る』といった極端な状況の回避は当たり前で、周囲の注意を引いてしまうと言った術者に不利になるようなことも起こらないと思ってよさそうだ。


 気付けばポケットの中のスマホが着信を知らせるため盛んに揺れている。俺はスマホを振動させながら東京駅を左手に見ながら歩き、その先の横断歩道を渡ってさくら通りに入り、最初に目に付いた喫茶店に入った。そのころにはスマホはおとなしくなっていた。


 店に入り、ホットコーヒーだけ頼み、代金を払って出てきたホットを持って、空いていた2人掛けの席に座った。


「さーて、どんな具合だ?」


 メールボックスを見たところ、差出人が山本(一等陸尉)と書かれたメールが並んでいた。メールの数は多かったが、タイトルは『女子高生失踪事件について』『金の取引について』『連絡求む』の三種類だった。


 進展があったのかなかったのか?


『なになに。

 まずは、女子高生失踪事件について』


 メールを開いて一読。


『ふむふむ。

 女子高生失踪事件の捜査は打ち切りとなった。その結果重要参考人の岩永善次郎おれへの捜査も打ち切られた。

 いいじゃないか。山本中隊長、できるな。

 次は、金の取引について。

 やっぱ、アレも知られていたか。日本の官憲はなにげに優秀だな。

 それで、中身は?』


 次の『金の取引について』を一読。


『ふむふむ。

 金の頻繁な売却から国税からマネーロンダリングを疑われ、警察庁に連絡が入り警視庁による捜査が行われていたが、事件性はないということでこちらも捜査は打ち切られた。

 やったじゃないか。まかり間違えれば全国区のところ、これで俺は晴れて一般人だよな。一般人という言葉はなんて甘美なんだ。

 それで、最後は、連絡求むだな』


『連絡求む』のメールを開くと、


『下記の連絡先に連絡を求む』


 連絡先は、あれっ? 山本隊長じゃないのか。


『防衛省情報本部D関連室 室長 川村一郎』


 D関連室? まさか峠を爆走するわけじゃないのだろうが、妙な名まえの部署だな。階級付きじゃないところを見ると、この室長さんは制服組じゃないんだろう。山本隊長くらい融通のきく人物ならありがたいが。


 さっそく俺は、メールに書かれていたアドレスに返信メールを入れておいた。内容は、


『みなさんのご尽力のおかげで、ようやく一般人に戻れました。三千院華ともども感謝いたします。 岩永』だけだ。


 一般人になった以上、今さら防衛省に用事はないからな。


 そう言えば、スキルブックを分析するとか言っていたが、その件でのメールはなかったから、今のところ進展はないんだろう。そうそう進展があるはずないか。


 俺は残ったコーヒーを一飲みして席を立とうとしたら、スマホに着信があった。今度は電話みたいだ。


 どう見ても、防衛省からの電話だよな。面倒だから知らんふりでもいいが、それじゃあ大人げなさすぎるし社会人として失格なので、俺は通話に出ることにした。


 喫茶店の中なのであまり大きな声は出せないが、客も少ないし電話の応答をしてもそれほどマナー違反ではないだろう。


『岩永さんですね。わたしは防衛省情報本部D関連室の室長をしています川村と申します』


「はい。岩永です。どういったご用件でしょう?」


『時間がおありのとき、ぜひ市ヶ谷の防衛省までご足労願えませんでしょうか? そのさい三千院華さんもご一緒していただければありがたいのですが』


 先方は話が分かるご仁かどうかは今のところ分からないが、ずいぶん腰の低い人だ。むしろした手に出ているようにも思える。相手がした手に出たからと言って俺が横柄な態度をとるわけにはいかないが、何か裏があるような気もする。とはいえ、相手は国家権力だ。断るのはどう見ても得策ではないだろう。


「分かりました。三千院を連れて、明日午前10時ごろそちらに伺います」


「いらっしゃる場所が分かれば、こちらから車をお出ししますが」


 した手を通り越してへりくだってないか? この室長さん。


「いえ、それには及びません。

 市ヶ谷の防衛省に着いたらどこに伺えばよろしいですか?」


「門衛にひとことおっしゃってください。迎えの者を立たせておきます」


「分かりました。それでは明日」


「失礼します」


 何だか、知らぬ間に偉くなってるんじゃないかと錯覚させるような室長さんだったな。



 明日のことはいいとして、一般人になった以上、これからは大手を振ってどこにでも出歩ける。今は喫茶店の中でコーヒーを挽いた匂いがするが、娑婆の空気がこれほどうまいものとはな。


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