第92話 物置小屋3、完成。
毎度、誤字報告ありがとうございます。
翌日。
昨日とは違う作業員の面々が現れ作業を始めた。
資材置き場から運ばれたひと際太い材木が、昨日張られた糸に沿って地面に並べられていった。これが物置小屋の土台になるのだろう。作業員たちは位置を微調整しつつ、隙間などにクサビなどを打ち込みしっかりと土台の枠組みが組み上がった。
土台の材木にはあらかじめ柱が立つ位置に穴が空けられているようだった。ほぞ穴に柱側の出っ張りがかみ合って、立ち上がった柱はズレることなく固定される。
大工見習の俺としては大いに勉強になるのだが、見れば見るほど俺に大工仕事など無理な気がし始めた。
『展示場で展示ハウスを収納してしまうと、電気、ガス、水道が切れて大変なことになってしまうので、さすがにそんなことはできないけれど、自分で買ったログハウスなりなんなりに電気、ガス、水道を引かないまま収納すれば、ニューワールドで使えるんじゃないか? 地盤だけはしっかり作る必要があるだろうけど、華ちゃんの魔法もあるしなんとかいけるような気がしてきた』
そんなことを考えているあいだにも、物置小屋の骨組みができ上り、昼前には窓枠まででき上った。
昨日と同じように昼の休憩時間にリサに冷たいお茶を運ばせたところ季節が季節なのでかなり喜ばれた。
午後からは屋根板から始まり壁板が張られていった。俺はその間に、コピー用の素材にするため材木を買おうと、リサと一緒に材木屋にいった。もちろん近くまで転移で飛んでいる。
材木屋では、今回物置小屋用に運ばれてきた材木の量と同程度の木材を購入することができた。俺がどんどんアイテムボックスに買った木材を収納していくものだから店の連中は驚いていたが構わず収納している。
材木屋から屋敷に戻って2時間くらいしたところで、板張りが終わりあとは窓と扉の建具が残るだけになった。
「今日はここまでです。明日、扉と窓を入れて出来上がりです。午前中には仕上がりますから、午後一でギルドの担当者が確認と料金の受け取りのため参ります。何も支障なく作業が進みましたので、料金は金貨40枚ほどになると思います」
「了解しました」
仕事を終えて帰っていく作業員たちを見送り、門を閉めてから屋敷に入った。俺の後ろには作業を見物していた子どもたちがくっ付いている。
そして翌日。
午前中に、昨日とは別の作業員たちがやってきて、物置小屋に窓と扉を付けていった。明り取りの小窓の他、南面と北面に窓が一つずつ。東面と西面に窓が3つずつ付いている。窓は両開きの板戸だけで内側に鎧戸が付いているわけではない。
作業は午前中に終わり、作業員たちは後片付けをして帰っていった。
昼食後のデザートのアイスをみんなと食べていたら、門を開けたままにしていた屋敷の前庭に馬車が乗り入れてきたようだ。
商業ギルドの担当者のハズなので、俺が迎えに玄関までいって扉を開けた。
もちろんやってきたのは商業ギルドの担当の女性だったので、玄関ホールを挟んで居間の反対側にある応接室に彼女を案内した。
いままで応接室など使ったことはなかったので掃除されていたかも知らないまま案内してしまったのだが、応接室はしっかり掃除されていた。リサに抜かりはなかったようだ。
「立派な物置小屋ができました。ありがとうございます」
そう言って軽く頭を下げた。
「わたしも先ほど確認いたしました。ご満足いただけたようで何よりです」
「それで料金はいかほどになりますか?」
「追加の工事など何もありませんでしたので、金貨40枚になります」
少々高くなろうがかまわなかったが、値段は昨日の親方が告げた通りだった。
簡単なお盆を錬金工房で作り、ついでにどこかで手に入れた布の小袋がアイテムボックスの中にあったので金貨40枚と一緒にお盆に乗せて彼女に渡した。
「確かに金貨40枚。こちらが領収書でございます」
俺は準備してあったらしい領収書を受け取った。
「また何かご用命があればよろしくお願いします。それでは失礼します」と言って彼女は前庭の中に停めていた馬車に乗って帰っていった。
今回の物置小屋建築工事の見学は、日曜大工見習いの俺にいい勉強になった。結論として俺に日曜大工は無理ということが分かり大収穫だった。
『よし。ジーゼル発電機はまだ先になるから、ガソリン発電機を元のように設置しておこう。
おっと、その前に物置小屋のコピーだ。
収納してからコピーは簡単だが、出すときキッチリ出さないとゆがんだりしたら大ごとになるからな。まあ、アイテムボックスLvマックスの自分を信じよう。
まずは、収……。待て、待て、待て、待て』
『現状の土台の位置をなぞって地面にしるしを付けておけば次にアイテムボックスから出すとき目印になる』
俺は50センチくらいの鉄の棒を作ってその先で小屋の周りの地面をなぞってしるしをつけていった。
『よし、これでいいだろう。
収納!』
俺は木で組まれた土台ごと物置小屋をアイテムボックスに収納して複製ボックスに移した。
素材ボックスの中には昨日空いた時間に材木屋から仕入れた材木がそれなりの量入っているので楽にコピーはできるだろう。それに木の主成分はセルロースだから炭素、水素、酸素があれば合成できるので少しぐらい素材ボックスの材木が不足したとしても何とでもなる。
『複製!』
俺にしては珍しく準備おさおさ怠らなかったおかげで、簡単に物置小屋が1棟丸々コピーできた。
『さて、次は慎重に。さっきなぞった線に沿って物置小屋を排出だ。
すっすっはー、すっすっはー。
すっすっ排出!
うまくいった。うまくいくと分かっていたけど少し緊張した』
俺は、いったん屋敷の中に入って、電気製品のスイッチを切るように華ちゃんに頼み、玄関わきに置いた発電機を止めてコンセントからプラグを抜いてアイテムボックスに収納しておいた。




