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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第79話 真・第2層2


 第1層から階段を50段下りた先の真・第2層は洞窟型のダンジョンだった。目の前の洞窟は高さで4から5メートルほど、幅で5から6メートルはあるので如意棒を振り回すことに支障はない。


 日本に現れたダンジョンは全部洞窟型のダンジョンだったようだから、ここと似たようなものなのだろう。出会うモンスターが、日本のモンスターと同じなら何らかの関連があるかもしれない。俺がスマホのニュースで見たのは、狼型とスライム、コウモリ型、それに蜘蛛型だ。


 コウモリ型と蜘蛛型はこのダンジョンの中で既に遭遇している。


 狼型とスライムはお目にかかったことはないが、どっちもいかにもなモンスターだからそろそろ出会うかもしれない。


 俺は如意棒をアイテムボックスから取り出して、不意を突かれないよう聞き耳を立てて進んでいった。俺の後ろに続く華ちゃんからブツブツ独り言が聞こえてきているが、新しい魔法を考案中なのだろう。


 どんな魔法を考案中なのかと、独り言の内容をよく聞いてみたら、


『ピョンちゃん、半日離れ離れで寂しかったですねー』


 まっ、まだ枝道を通り過ぎたわけでもないし、魔法はおいおいでも完成すればいいからな。


 しかし、こうやっていつも話しかけていたらピョンちゃんは言葉を話せるようになるかもな。今華ちゃんが話しかけている言葉は日本語だから、異世界産のピョンちゃんが日本語を話せるようになるわけだ。話せると言ってもちゃんと受け答えできるわけじゃなく、適当に覚えている言葉を口に出すだけだろうがそれでも凄いことだ。


 俺も子ども時代犬を飼っていて、一時期言葉を覚えさせようとしたことがあったのだが、うちの犬は全然言葉をしゃべってくれなかった。あたりまえだな。


 その時、気付いたのだが、犬には人間のような唇がない。従って口から出せる音には限りがある。いくら話そうとしても人の言葉を話すことはできないと理解した。


 しかし、九官鳥やオウムは人の言葉を確かに口にできる。しかも嘴の付いた口でだ。つまりあいつらは腹話術的な何かで発声しているのだろう。だから変な裏声なんだ。


 これから先ピョンちゃんが言葉を口にできるようになってもそれは変わらないだろうから、きっと裏声だ。


 ところで、ピョンちゃんに性別はあるのだろうか? オスでもメスでもいいが、最低でももう一羽いないと始まらない(・・・・・)ものな。


 下らないことを考えて注意がおろそかになってはならないので、俺は片手で頬をはたいて気合を入れ直して洞窟を進んでいった。



 階段から100メートルほど進んだところで、最初の枝道があった。枝道の方は今いる洞窟と比べ若干細い。それでも、高さで4メートル、幅で5メートルはある。


 華ちゃんは枝道に向かってデテクトなんちゃらをかけ、ついでに今いる洞窟の先に向かってデテクトなんちゃらをかけた。いまのところ赤い点滅はどこにもない。


「岩永さん、どっちにいきます?」


「このまま、まっすぐ本道をいってみよう」


 今いる洞窟を本道ということにして、俺たちはそこからさらに100メートルほど進んだ。


 ピヨン、ピヨン。ピヨン、ピヨン。……。


 それまでおとなしかったピョンちゃんがいきなり鳴き始めた。


 立ち止まって振り向くと、華ちゃんがピョンちゃんに話しかけた。


「ピョンちゃんどうしたの?」


 ピヨン、ピヨン。ピヨン、ピヨン。……。


「何か異変があるのかもしれない。注意しよう」


 前方の壁の膨らみを越えて何やらこちらに向かってきている。速くはない。そいつの色は周囲の岩とほとんど同じなので気づきにくい。


 ナイスだ! ピョンちゃん。


「おそらくあれはスライムだ。

 華ちゃん、魔法でやっつけてくれ。ファイアーアローでいけると思う」


「はい。ファイヤーアロー!」


 華ちゃんの指先から現れた白い炎の矢が狙いたがわず、スライムに命中し、スライムはジュッっといって、壁から剥がれ落ちて、洞窟の地面に転がった。


 スライムの死骸に近寄って観察すると、ファイヤーアローに焼かれて黒ずんだ体が少しずつ保てなくなって溶け始めていた。


 何かの役に立つかもと思ってスライムの死骸も収納しておいた。


「いつ見ても華ちゃんのファイアーアローは凄いな」


「得意技って言うんでしょうか?」


「極めれば、さらなる進化があったりな」


「それは夢がありますね。

 最初のころのファイアーアローはだいだい色だったんですよね。なるべく温度が高い方がいいと思って意識していたらだんだん白っぽくなって、今みたいになりました」


「それこそ、才能だな。

 一皮むけると、レーザー光線みたいになるかもな」


「そうか、レーザー光線は無理でも、今よりアローの速度を上げることを意識してみますね」


「それは良さそうだな。華ちゃんは賢者だったっけ? 天職だったみたいだな」


「フフフ。岩永さんに褒めてもらえるとすごくうれしい」


 そう言ってもらうと俺もすごく嬉しいぞ。


「よし、じゃあ先に進もう。今回はピョンちゃんと華ちゃんコンビの大金星だったな。次も頼むぞ」


「はい!」「ピヨン、ピヨン!」


 ピョンちゃん、人の言葉が全部分かってるんじゃないか?




某識者のお勧め。

現代ファンタジー『異世界で魔王と呼ばれた男が帰って来た!』

https://book1.adouzi.eu.org/n0154gb/ よろしくお願いします。

注意:この物語はフィクションです。また、残酷描写あり、暴力描写ありは保険ではありません。登場する人物・団体・名称・国名等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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