第73話 ダンジョン生物
普段あまり使っていなかった隣街のスーパーで牛乳などを買った俺は、次にフライドチキン屋にいった。
屋敷にいるのは俺を含めて7人なので、一人二つとしても14個。なので5個入りセットを3つ買った。セットには普通のフライドチキン5個と骨なしチキンが3個、それに大ポテトが入っている。セットのポテトは小さいのが1つだけだったので、大きいサイズのポテトを人数分買った。
チキンを買った俺は、再度自分の街の駅前に転移した。駅自体はピラミッドの現れた公園からの距離がそこまで離れていないのでおそらく避難指示区域内にあるのだろうが、駅を使用不能にはできないようで、公園側の出入り口には人気はなかったが、駅を挟んだ向こう側の出入り口からは人が出入りしていた。
駅の反対側なら避難指示は出ていないだろうと思ってやって来たのだが、駅前の商店は一様にシャッターが閉まっていた。この調子だと俺がいこうとしていた寿司屋や天ぷら屋も開いていないかもしれない。
思うに避難指示は街のブロック単位だろうから、道を挟んだ反対側は避難指示区域外の可能性もある。
そのつもりで俺の知っている寿司屋の前まで行ったら、休業中ではなかったが準備中だった。スマホで今の時間を確認したらまだ10時過ぎだった。こんな時間に寿司屋が開いているわけなかった。店の出入り口に置いてあった看板を見ると、開店時間は11時30分からだった。ちょっと中途半端な時間なので、ここは午後からだな。
次は天ぷら屋だ。天ぷら屋も寿司屋と同じ並びなのできっと避難指示区域外だ。
そう思って天ぷら屋に回ったら、ちゃんと店が開いていた。テイクアウトで一人頭2つずつになるよう一種類あたり14個ずつ天ぷらを買っていった。
内訳は、エビ、キス、アナゴ、シイタケ、アスパラ、レンコン、サツマイモにカボチャ、オクラにオオバにナス。今日食べるわけではないが、うどん、そば用に小エビのかき揚げを14個買っておいた。天ぷら用のタレだけでなく塩もついてきた。
今日は寿司も用意するつもりだから、一人1種類ずつでもいいかもしれないか。かき揚げじゃなくて普通の天ぷらでも麺類に入れればおいしいものな。
かき揚げを注文したところで、麺類を買い忘れたことに気づいた。さっきスーパーで目にしていたはずだがその時思い出せなかったわけで、相当俺の頭もガタがきている。
頭のガタがヒールポーションで何とかなればありがたいが、多分無理だろうな。ヒールポーション極ならワンチャンあるかもしれないが、どうだろう。どこかに若返りの薬とか、ボケ防止の薬とかあれば、コピッちゃうんだがな。できなくて元々だから、今日寝る時にでも試してみるか、ボケ防止薬。
勘定を済ませて天ぷら屋を出た俺は再びスーパーに。
乾物を売っているコーナーに回って、乾麺のうどんとそば、それにソーメンを買っておいた。ソーメンはよく見るブランドだが、妙にお高い種類があったので、試しにそれを買ってみた。海苔もちょうど目に付いたので買っておいた。
あと、忘れずにツユの素を何本か買った。おっと、危うくネギを忘れるところだった。ニューワールドにネギがあるかもしれないが、あったとして西洋ネギじゃあ、麺類に合いそうにないものな。
野菜売り場でネギを買って一安心。
スーパーの中で、いったり来たりした関係で、だいぶ時間が経ってしまった。これから屋敷に帰って一休みすれば昼食時だ。フライドチキンを出すだけなので簡単だし、冷えたコーラやジュースもアイテムボックスの中に入っている。足りなければハンバーガーはいくらでも作れるからな。
それじゃあそろそろ屋敷に戻ろう。
裏道に入って人通りが途切れたところを見計らい「転移!」
俺は居間に直接転移した。
「ただいま!」
「お帰りなさい」「「お帰りなさい」」
居間には華ちゃんと子どもたちがいた。みんなピョンちゃんの鳥かごの前に集まっている。
「うん?」
「岩永さん、ピョンちゃんの様子が変なんです」
華ちゃんの声は泣きそうなほど上ずっていた。
「どうした?」
俺も鳥かごの前にいって、中を覗くと、ピョンちゃんが巣の中で体を突っ張って伸ばしたまま動かなくなっていた。
「痙攣しているのか?」
「分かりません。止まり木から急に落っこちたので、巣に入れてやったら、体を伸ばしたままになってしまって」
「困ったな。朝はちゃんとエサを食べたんだろ?」
「はい。楽園リンゴを半分食べました。もっと欲しかったみたいだったんですが、昨日から一度もウンチをしてないし食べ過ぎは良くないと思って半分だけにしました」
「なるほど。
それで、まだ生きてはいるんだよな?」
「ときおり足を震わせていますから生きていると思います」
「分かった。効くかどうかわからないが、ヒールポーションを飲ませてみよう」
俺はアイテムボックスの中にあったかなりいいヒールポーションを1瓶取り出して華ちゃんに渡し、
「嘴を開いて、これを、そうだな、5分の1、20CCくらい口の中に流し込んでくれ。
華ちゃん一人だと難しいだろうから、誰か手伝ってやれ」
「わたしが手伝います」
そう言ってエヴァが最初に鳥かごの中に体を屈めて入り、続いてポーション瓶を持った華ちゃんが体を屈めて中に入っていった。
先に中に入ったエヴァがピョンちゃんの嘴に手をかけた。
「うーん」
エバが力を込めてピョンちゃんの嘴を開こうとしたが、開かないようだ。
「わたしがやってみるから、エヴァちゃん、ポーション瓶を持っててくれる?」
「はい」
華ちゃんがエヴァに代ってピョンちゃんの嘴に手をかけて開こうとしたら、すんなり開いた。
すかさず上を向かせ、
「エヴァちゃん、ポーション瓶のふたを開けて、口の中に垂らして」
「はい」
ロウ付けされたポーション瓶の蓋をねじって外し、そーっと瓶からピョンちゃんの口に向かってポーションを垂らした。
「そのくらいでいいわ」
ポーションは、うまく口の中に入ったようだ。一度のどが動いたのでちゃんと飲み込んだのだろう。
しばらく様子を見ていたら、今まで閉じていたピョンちゃんの目が開いて、それと同時に硬直していたように見えた体も力が抜けたようだ。そしたらピョンちゃんはすぐに羽ばたいて飛び上がり華ちゃんの肩に乗った。
「はー、よかった」
「ハナねえさん、ホントに良かったね」
「ありがとう、エヴァちゃん」
そのピョンちゃんだが、今度は華ちゃんの肩の上でしきりに『ピヨン、ピヨン』鳴き始めた。
「何だろう?」
「昨日あれだけ元気いっぱいに楽園リンゴを食べたところを見ると、楽園リンゴ半分だと足りなかったのかもしれないな。どれ」
そう言って俺はアイテムボックスの中から楽園リンゴを取り出したら、ピョンちゃんは華ちゃんの肩から俺の方に飛んできて、俺の腕に乗っかって先ほど同様鳴き始めた。
「お腹が空いてたんだ。
ちょっと待ってろ」
俺の言葉を理解したのかどうかは不明だが、ピョンちゃんが俺の腕から肩に移動してくれたので、俺はナイフを取り出してリンゴを昨日のように8等分してエサ箱の中に入れてやった。そしたらピョンちゃんは俺の肩からエサ箱の前に飛び降りて、リンゴを入れる傍からむさぼり食べ始めた。
華ちゃんとエヴァが鳥かごから出て、
「エサが足りなかっただなんて。
岩永さんごめんなさい。ピョンちゃんごめんね」
「最初だから仕方ない。ヒールポーションが効いてよかった。
しかしウンチもせずにこれだけ食欲があるということはちょっと変だよな」
「変ですね」
「ピョンちゃんはオウムかもしれないけれど、ダンジョンにいたわけだし、俺たちの知っている普通の生き物とは違うんだろうな」
「そうみたいですね」
某ダンジョン識者のお勧め。
『闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-』
https://book1.adouzi.eu.org/n6512gg/




