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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第520話 魔神のハンマー5、避難3


 大空洞での諸施設、物資は全てオストラン王国の好意によるものだと政府は避難開始前から国民に知らせていたのだが、大多数の日本国民が不自由な生活を我慢している中、不平不満と同時に待遇改善を要求する者たちも現れ始めた


 避難生活を支えているのは、自衛隊員たちとゴーレムたちだ。そういった連中はゴーレムに対して文句を言うわけにもいかず、自衛隊員たちに向かって不平不満をぶつけ始めた。


「こんな狭いところに住めるか! ちゃんとした住居を提供しろ!」


「テレビがないし、ラジオも聞こえないじゃないか! なんとかしろ!」


「軍服を着て街の中を歩き回るな!」


「税金で食べてるくせに、ちゃんと仕事しろ!」


 これまでの自衛隊員たちならそういった雑言は無視していたのだが、避難生活を我慢して送っている一般人にも悪影響を与えかねないので、目に余る場合、自衛隊員は公務執行妨害の現行犯でその者を逮捕し、隔離施設に連行した。


 隔離施設内でも、一般の避難施設と同等のサービスを受けることができたが、隔離施設内には日本国内の刑務所や拘置所の既決囚や未決囚の他、不法滞在者などが収容されており、立派な犯罪者の一員となり、大洞窟内であるが、将来司法が回復すれば名実共に犯罪者として処罰される。



 一部の政府関係者や地方公共団体の職員、社会インフラを支える人たちが地上に残る中、いち早く大空洞に避難した上、地上での特権を大空洞に持ち込もうとする者もそれなりの数現れた。


「このバッジは何だかわからないのか? 俺はXXXXX党の参議院議員五十川いそかわだ! この避難生活が終わってわが党がふたたび政権をとったらお前たち全員首にしてやるからな!」


「元文科省次官の前山を知らないのか! 貧困調査の邪魔をするな!

 うぉー、きみ可愛いねー」


「きみはどこの人間なんだい? 今のを言いふらしたらきみのところはお終いだから。分かるよな?」


「俺がわざわざ視察に来てるんだから迎えに来るのが当然だろ!」


「カボチャの天ぷらまた落っことしたんだけど、料金とるの?」



 日本政府は一切の政治活動を禁じていたが、大空洞内は別と勘違いしたのか、大空洞内で名まえつきたすきをかけて選挙運動を始める者や、政治活動を始める者まで現れた。


「XX党の〇〇さ〇りをよろしくお願いします。XX党の〇〇さ〇り、XX党の〇〇さ〇りです」


 もちろん大空洞内には原発などないが、原発に反発する者。


「この弁当ベクレてんちゃうんやろなぁ!? 原発反対!」


「オスプレイがこんなに低く飛んでいる。うるさいです! 軍備拡張反対!」


 もちろん大空洞内にはオスプレイは飛んでいないし、戦争したくてもする相手もいない。


「みなさん、これからのタンパク質はコオロギです! 何かあればわたしが全責任を取ります」


 ちゃんとした食材や弁当を配っているのに変なことをわめく者。



 一般人と一緒くたにされて、自己のアイデンティの確認のために大声を上げているのだろうが、一般人から見ればうるさいし鬱陶しいだけなので、度を過ぎた者は自衛隊員ないし警察官が隔離施設に連行していった。


 隔離施設に連行されそうになると「このバッジが何だかわからないのか!? 俺は国会議員なんだぞ! ……」


 と大声を上げるのが定番になっていた。



 一風変わったところでは、なにかの営業を始める者まで現れた。


「貴方は神を信じますか? 今回の彗星は神の裁きなのです。われわれがこうしてこのダンジョン内で生活できるのはひとえに神の恩恵なのです。

 その恩恵を、もっともっと確実なものにするため、このツボを枕元に置いてみませんか?」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 避難が進んでいく中、田原一葉たちグリーンリーフの面々も大空洞に避難していた。


 3人は家族と別れてしまうものの、チームで行動しようということで、3人揃って大空洞に避難し、今は自衛隊員たちとともに、大空洞内の自衛隊の駐屯地で寝起きして雑務などを受け持っている。


 グリーンリーフの面々は一度は自力で到達した大空洞だったが、プレハブだらけとはいえ知らぬ間に避難用の巨大都市ができ上がっていたことには心底驚いた。しかもこの都市を作ったのは、オストラン王国ではなくあの岩永善次郎個人という話だ。


「ダンジョンマスターっていたんだね」


「岩永さんたちが、コアを守るガーディアンを斃したってことでしょ?」


「ほんの数日第1ダンジョンに潜っただけで、コアのところまでたどり着いてタッチダウンしたそうだから、もうどこまですごいのか分からないよね」


「それに、あの国の王さまだし」


「笑っちゃうくらいすごいよね」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 一方こちらは勇猛果敢の3名。足立の父親と火野の母親はイワナガ・コーポレーションの正社員のため、家族ともどもオストランへの避難をエヴァが持ちかけたのだが、今後のことも考えて、二人とも一般枠で大空洞に避難した。他の社員たちも同様に大空洞に避難している。お互いの住所が近い関係で3人とも洞窟内のプレハブの位置は近い。避難先ですぐに3人は再会できた。


「ここがダンジョンの中だって信じられないよね」


「太陽はないけど、ちゃんと空は青いし、雲も流れてるし」


「避難先に家があると政府が発表して、その映像見た時CGかと思ったけど、ホントだったものな。

 俺たち、日本人でよかったな」


「それを言うなら、Zさん、いえ、ゼンジロウさんが日本人でよかったってことじゃない? 異世界のオストラン王国から見れば、日本に何の恩も義理もないんだもの」


「そうだよな」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 そして、こちらは、熱海の温泉マーク団のブー、フー、ウーの3人。3人も大洞窟に避難している。少しお腹のでっぱりは引っ込んでいる。


「俺たち日本に生まれててよかったな」


「そうだな」


「ここの施設を作ったのはオストラン王国の王さまだっていううわさだけど、あの王さまどこかで見たことあるような気がするんだよなー」


「俺も、そんな気がしてた」


「俺たちに縁がない雲の上の人だ。気のせい気のせい」


「まっ、そうだろうな」「だろうな」


「しかし、この弁当うまいな」


「うん」「ここで一生暮らしてもいいな」


「上じゃ100年以上人が住めない世界になるって話じゃないか。いい悪いも、ここで一生暮らすことになるだろ」


「そうだった」「だな」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 国際通信が次々不通になっていく中、日本のダンジョン開放の動きをどうやってか察知した国連は、日本に対して入国制限の撤廃と全国のダンジョンの無条件開放を要求し日本政府はこれを受け入れた。が、しかし、各国とも混乱が続く中、暴動やテロが次々発生し、日本への脱出船が破壊されていった。


 また人為的かどうかの判断はできないが事故なども発生し、正規の脱出船で無事日本に向けて出港できたものは極めて少数だった。そのころにはスエズ運河もパナマ運河も不通となっているため、地中海沿岸諸国、大西洋沿岸諸国からの脱出船は大回りに喜望峰やマゼラン海峡経由で日本に向かうことになる。


 日本へ向け無事脱出した船もスエズ運河やパナマ運河の通航をあてにしていた船がほとんどで、途中で燃料が尽き漂流を始めるものが続出した。


 大陸方面からは避難のため多くの小型船が日本を目指したが、おりからの連続した巨大台風が日本列島をかすめるように日本海側に抜けていった関係でほとんどの避難船は転覆し、日本にたどり着けた船はごくわずかだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 大空洞内の避難設備を提供したのはオストラン王国であると日本政府は発表しているのだが、俺が個人的に提供したのだといううわさが広まっているそうだ。個人的というのは、日本人の俺が本来助ける義務などないにもかかわらず大空洞に避難設備を魔法で作ったということらしい。


 悪いことをしているわけではないので構わないといえば構わないのだが、誰がそういった根も葉もあるうわさを流したんだろう? 少しだけ気になる。



 これとは別の話だが彗星の地球への衝突のニュースが日本国内を駆け巡り国内が騒然としているころ、日本の政治家、日本政府の高官その他から国境ゆらぎを封鎖したオストラン政府に対して保護を求める依頼が殺到した。俺の指示でオストラン政府はそのすべてを断った。


 一般国民が大空洞の中で不自由な生活を余儀なくされる中で、一部の者が地位を利用して特別待遇を享受するのはいかがなものかと判断したからだ。




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