第515話 好事。
アスカ2号はコアに鉄甲艦と貨物船のコピーを創らせ、探照灯などを双方に取り付けていた。軍用の本格的探照灯は手に入らなかったので、軍用と称する高光束のライトを購入し束ねたものを製作して探照灯としたそうだ。ライトは単体でも相当の発熱があるそうで、それを束ねた探照灯の後部には強力な冷却ファンがついている。
俺は最初にハリトの港に持ち込んだ鉄甲艦と貨物船を回収して、改修済の鉄甲艦と貨物船をハリトの港に運んだ。さらに、追加として2セットコアに創らせたものを運んだので、ハリトの軍用桟橋には鉄甲艦、貨物船各々3隻が並んだ。
探照灯が付けば夜間航行の安全性は増すだろう。船長や航海士たちは経験則で危険な海域などを避けて航海しているのだろうが、将来的には正確な海図が欲しいところだ。これはオストランにも言えることだ。
7月までにハリトの海軍に改装済みの6隻の鉄甲艦と同じく改装済みの6隻の貨物船を引き渡した。さらに、貨物船に客室を追加した貨客船を6隻建造して引き渡している。
そういえば、オストランについては日本町のことばかり考えていたので失念していたがオストランにも貨物船は導入したいところだ。現状の貨物船はダンジョン内での使用を前提としているため、ダンジョン外では動かない。従って動力部や発電機をメタルゴーレムコマからダンジョンの外でも使える超高性能ゴーレムコマに替える必要がある。
メタルゴーレムコマより超高性能ゴーレムコマの方が高出力なので、動力系が少し小さく成る程度で全体の設計を大きく変えることなく建造できるはずだ。オストラン国内に限れば主要都市間の輸送はダンジョン経由のゆらぎで繋げてしまえばいい。
オストランに建設中の日本町の建設も順調だ。第1期工事は8月中旬に竣工予定で、短期留学生たちはそれに前後して帰国する。帰国した短期留学生たちによって実地での営業開始準備が始まる。付随する機器の発注なども終わっており、建物工事に合わせて搬入され据え付けられている。第2期以降の建設工事についても着工しており、物流センター、オストラン王国政府新庁舎と日本大使館の建設も始まった。日本大使館の建設では、土地はオストランから賃貸で提供し、上物は日本側で設計から建築まで行なっている。
物流センターは1階にオストラン国内向けの馬車用荷役設備、2階に日本向けトラック用荷役設備、大型エレベーターからなる。日本からの荷物のうち日本町内で使用・消費されるものは小型トラックに移し替えられて日本町内に配送され、日本町以外の場所で使用・消費されるものは馬車に積み替えて配送される。残念ながら、オストランから日本に輸出できるものは今のところない。
日本との交易について、オストランは日本国内と同じで関税はお互いに課さないことにしている。もちろんオストランは日本から見れば外国なので日本から物品の購入やサービスの提供を受けても消費税を日本に支払うことはない。
さらにポーション診療所営業開始に向けて、出入国管理システム、予約システムも外注で開発が完了し8月に入れば予約を受け付けることになる。そういった管理用システムの運用は当面外部委託することにしている。
日本国内では第1ダンジョン内に1千万kWの発電所からの高圧線のダンジョン外への引き出しのため、ゆらぎを地下方向に延ばすよう防衛省での会議の席で依頼を受けた。そのうち全ダンジョンで発電所が造られるだろうと思い、日本国内の全ピラミッド=ダンジョンのゆらぎについて対応しておいた。
7月に入り第1ダンジョン内に1千万kWの発電所が完成した。予想通り第2、第3ダンジョンでも1千万kWの発電所が建設されることになった。各々の発電所用のメタルゴーレムコマを受注し4兆円を受け取ることになった。今回も前回同様年利0.5パーセントで10年間、半年ごと2000億円+金利の分割払いとなった。受取先はイワナガ・コーポレーションとした。これで帳簿上のイワナガ・コーポレーションの資産が4兆円増えた。適当に経理とダンジョン協会間で処理するだろう。会社を作っていて正解だった。
第2、第3ダンジョンで1千万kWの発電所が完成すれば第1から第3の3つの発電所で首都圏の電力需要の8割近くをダンジョン発電で賄うことができるようになる。それに伴って順次火力発電所は停止していくことになる。日本国内では再生エネルギー発電については全面的に見直しが入り新規の着工は全て停止しているそうだ。
7月末、東京都内に学生寮が完成した。学生たちは一部を除いて夏休み中だったが、これまで各自が入居していたアキナちゃん所有の借り上げマンションから寮に入寮した。
夏休み中オストランに里帰りする者がいるかと思ったが誰も里帰りしなかったようだ。彼らは学校の図書館などに通って学校の課題をこなしたり勉強を続けた。さすがは留学一期生だ。体調を崩したものはいないように見受けられたが、8月に入って全員にヒールポーションを支給して体調を整えさせた。ある意味役得なのだろうが、頑張ってる連中を見ると不思議と応援したくなるものだ。
日本町に隣接して大学を作ろうと思っている。そのために日本町の近くの土地の買収を進めており、講師は日本から招へいするつもりだ。日本への留学も進めていくが、都のオストランだけでなく国内各地にも高等教育機関を作っていくつもりだ。
ハリト、オストラン、どちらも順調に回ってる。物事が順調に進んでいる時は内だけにとどまらず何か問題が起こりがちだ。気を抜くことなく一つ一つの事柄を確実にこなしていくよう心していこう。
次話から『魔神のハンマー』編。最終章になります。526話『終話、岩永善次郎。エピローグ的人物紹介、他。』までよろしくお願いします。




