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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第513話 処刑


 これでブンちゃんは何とか使い物になるはずだ。全然使い物にならないようなら廃棄処分にするしかないが、いなくなってしまうとアキナちゃんが残念がりそうだから、玄関先にでも立たせて置物にしてやろう。後ろに映画のポスターでも貼っておけば映えるだろう。



 それから数日経った。


 ブンちゃんは普通に24時間旧屋敷の掃除をこなしている。問題は起こっていない。ハズだ。


 日本町スタッフ要員たち120名が期間3カ月の短期留学に旅立った。予定通り日本町のゆらぎ前に待機した大型観光バス3台に分乗してゆらぎを通って出雲空港に向かい、そこで専用機に乗り込み羽田に移動。そこから大型観光バスに乗り、都内各所にある受け入れ施設に向かった。受け入れ施設には外務省の担当者がいて研修者たちの世話をしてくれることになっている。


 彼らは8月中旬にオストランに戻ってきて営業開始の準備を始めることになる。その時には彼らの勤務先は完成しているはずだ。



 そして今日はマハリト城への出勤日。


 前王と前王妃の処刑に立ちあう日だ。気が滅入るが義務であるならばこなすだけだ。幸い俺はグロ耐性はあるので、刑の執行そのものに対して何も感じることはないだろう。


 城の玉座の間に現れたら、スカラム宰相が待っていて、そのまま城の出入り口に向かい、そこで待機していた馬車に二人で乗り込み処刑場の中央広場に向かった。


 馬車の中でスカラム宰相が今日の段取りを教えてくれた。


「陛下がお席に着くと、刑の執行が始まります。

 処刑台に引き出された前国王に対して執行官が罪状と刑の内容を告げます。

 その後斬首刑が執行されます。

 前王の首は、塔の前の晒し台の上で10日間さらされたうえ、港から海に投げ捨てられます

 引きつづき、前王妃が処刑台に引き出され、執行官より罪状と刑の内容が告げられます。

 刑が執行されたあと、前王妃の首は前王の首と同じく晒されたのち、海に捨てられます」


 結構(むご)いな。


「前王、前王妃の処刑のあと、前王と前王妃との間の子どもたちが順に処刑台に引き出されます。

 彼らは陛下のご慈悲により、処刑を免れ奴隷となることが許されたと執行官が告げます」


「次は前国王と妾妃たちの子どもたちです。

 彼らについても陛下のご慈悲により、処刑を免れ奴隷となることが許されたと執行官が告げます。これで一通り、今日の刑の執行は終了します」



 


 刑場となる中央広場の周りには多数の人で混みあっていたが、護衛の兵隊たちが道を開けさせた。広場には檻を乗せた荷馬車が5台も並んでいた。各々の檻には4人から10人、大人と子どもが乗っていた。


 広場の中央に立つ塔の前には処刑台、そこから少し離れた場所におそらく俺たちの席が設えられていた。


 俺とスカラム宰相が馬車を降りてその席に着くと、さっそく荷馬車の上の檻から、両側を屈強な兵士に抱きかかえられるようにして一人の男が引きずり出された。男はそのまま処刑台の上まで連れていかれた。処刑台の上には執行官と処刑人、数名の兵士が立っている。処刑人は大柄な男で長柄の首切り斧を刃の部分を上にして片手で支えて持っていた。


 処刑台の上に引きずり出された男は小太りで下腹がだらしなく膨らんでいた。しかも三白眼で細目だ。先入観のせいかもしれないが相当の悪人面あくにんづらに見える。


 中央広場を囲んだ群衆から、罵声が男に浴び去られる。


「あれが前王コウセインです」


 となりの席に座るスカラム宰相に耳打ちされた。


「コウセインは先代と正室との間に生まれた三人兄弟の末弟にあたります。コウセインの実の兄にあたる先代の長男と次男はコウセインが皇太子に指名された時、ハリトを出奔しゅっぽんし数年後客死(かくし)したとのこと。

 そろそろです」


 どこかの国の歴史みたいだ。


 スカラム宰相の耳打ちは執行官が前王の罪状を読み上げ始めたところで終わった。


 前国王の罪状は無益な戦いを始め数万の兵を失ったこと。城を打ち捨て逃亡したこと。奢侈に溺れ、国庫を圧迫したことが主な罪状だった。他にも罪はあるのかもしれないがこの三つはマギレもない事実だから罪状認否も必要ない。


 執行官が罪を読み終えたところで、前王を脇から抱える兵士とは別の兵士が、用意していた黒い袋をかん高い声で喚き散らす前王の頭から首まですっぽり被せ袋の口を紐で縛った。それでうるさくわめいていた前王はおとなしくなった。


 前王は小太りで首も短かったので袋が首切りの邪魔になりそうだが、首切り斧を持って横に控えている処刑人はプロなんだろうからその程度はどうってことはないのだろう。


 その後前王は両脇の兵士によって首切り台の後ろにひざまずかされ頭を首切り台の上に押し付けられた。


 群衆の罵声はそこでおさまった。


 処刑人が首切り斧を振り上げ無造作に振り下ろすと、前王の首が首切り台の前に置かれたカゴの中に落ち、首の付け根から鼓動に合わせて血が噴き出た。3度ほど盛大に血が噴き出たあと、心臓が止まったのか噴き出るほどの血がなくなったのか血の噴出は止まった。


 群衆はそこで歓声を上げた。それほど苛政を敷いていたようには見えなかったが、国民からそうとう嫌われていたのだろう。


 群衆の歓声の中、前王の死体と首はすぐに片づけらた。


 次は前王妃が前王と同じように檻から引きずり出され群衆の罵声の中、処刑台に立たされた。血で汚れた周辺はそのままなので、俺のところまで血の臭いと異臭がわずかに漂ってきた。


 執行官の読み上げる前王妃の罪状は、王妃でありながら国王のこういった行為を諫めなかったこと。前王同様奢侈に溺れたことが主な罪状だった。王妃については若干同情の余地はあるが、こういった世界だし諦めてもらうほかない。


 そして同じように刑が執行されて、群衆は歓声を上げた。


 それからあとは流れ作業で、シナリオ通り前王の子や妾妃、その子どもたちが檻から引き出されて、奴隷に落とされ、また檻に戻され国民へのパフォーマンスは終了した。


 俺とスカラム宰相が馬車に向かっていたら、群衆から、「ゼンジーロ国王万歳」の声が上がった。それがどんどん広がっていった。スカラム宰相あたりが仕込んだのかもしれない。パフォーマンスの締めくくりとすれば意味のあることなのだろう。


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