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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第512話 ブンちゃん


 お掃除ゴーレムの名まえがもろ文ちゃんではまずいし、(まる)ちゃんではキツネやタヌキになってしまうのでブンちゃんとした。


 そのブンちゃんを連れて俺は旧屋敷に戻った。誰にも紹介してない状況でブンちゃんを旧屋敷の掃除に就かせると、華ちゃんに見つかれば見敵必殺の魔法で破壊されてしまうし、パトロール中のアスカ1号に見つかれば、相手が人間なら捕まえるだけだが相手がゴーレムとなると容赦なく拳で粉々にされてしまう。さすがにブンちゃんのコピーをとる気はなかったので壊されたらそれっきりだし、頭とか四肢がどっかに紛れてしまって、あとから見つかっても嫌なので先にみんなに紹介することにした。


 みんなが定時に集まるのは新屋敷の食堂なのでブンちゃんを紹介するのはその時だ。アスカたちだけでも先に紹介しておくため、俺はブンちゃんを連れてアスカ3号がいそうなマンションに行ってみた。


「アスカ3号いるか?」


 玄関から居間の方に向かって声をかけたら、すぐにアスカ3号がやってきた。


「アスカ3号、旧屋敷のお掃除担当として新しく作ったブンちゃんだ。不審物と間違えて破壊しないようにな」


「はい。マスター」


「アスカ1号と2号には、アスカ3号から伝えておいてくれ」


「了解です」


 これでよーし。


「ブンちゃん、俺のアイテムボックスの中で待機していろ」


 そう言ってブンちゃんをアイテムボックスにしまっておいた。


 そういえばブンちゃんの声を俺はまだ一度も聞いていない。よく考えたら、コアは文ちゃんの顔かたちを正確に再現してくれたが、声がどうとか指定はしていないのでコア任せになっていたはず。


 どう考えてもオリジナルの声とは違うはずだ。ドラ〇もんの声優さんが交代した時の違和感が蘇るわけだ。お掃除専門のゴーレムだからそれほど話す機会はないと思うが違和感に戸惑わないようにしないとな。



 俺はその後、ハリト海軍司令部で教師を務めているアスカ2号を連れ帰って、ロイヤルアルバトロスの風呂から海を見ながらゆっくりした。ブンちゃんをわざわざ取り出して説明するのが面倒だったのでブンちゃんのことはアスカ3号頼みだ。



 その日の夕食時。


 新屋敷の食堂兼居間にみんな揃ったところで、


「旧屋敷のお掃除ゴーレムを創ったので、見ず知らずの人間が屋敷にいて驚かないように食事前にみんなに紹介しておこう。

 お掃除専門ゴーレムのブンちゃんだ!」


 俺は『ブンちゃんだ!』の言葉と同時にブンちゃんを居間の真ん中に取り出した。


 作務衣に草履姿がキリリとして確かにカッコいい。


「ブ、文ちゃんじゃーー!」


 アキナちゃんが喚声を上げた。


「ゼンちゃんは分かっておるのじゃ」


「さすがはお父さん」「すごいです」「働き者そうー」


 子どもたちの反応は上々だったが、華ちゃん、はるかさん、後藤さん3人の反応は、


「「……」」


 だった。


 まっ、いいや。これで顔見世は終わったから出合い頭の不幸な事故は起きないだろう。



「それじゃあ、ブンちゃん。旧屋敷のお掃除を開始してくれ」


「はい、マスター」


 ここで初めてブンちゃんの声を聞いた。期待通りの期待外れの声だった。アキナちゃんが口をあんぐり開けてブンちゃんを見つめる中、教えたハズはないのだがブンちゃんはちゃんと居間を出てゆらぎのある玄関ホールに向かった。


 そこまでは良かったのだが、なぜか玄関のドアが開いて閉じる音がした。


 はて?


「岩永さん、いま玄関の扉を開け閉めした音がしませんでしたか?」


「したような気がする。

 ちょっと見てくる。みんなは先に食事を始めていてくれ」


 そう言って俺は急いで玄関ホールに出て玄関の扉を開けたら、ブンちゃんが楽園の壁に向かって歩いていったようだがなぜか元プール(ぬま)にはまったところだった。ブンちゃん大丈夫なのか?


 いったん水没して立ち上がったブンちゃんをずぶ濡れのままアイテムボックスに収納しておいた。食事が終わったら、コアルームに行ってブンちゃんの頭の中をオーバーホールをしてもらおう。



 食堂に戻ったら、みんな俺を待っていてくれたようなので、


「ごめん、ごめん。

 それじゃあ、いただきます」


「「いただきます」」


「それでどうでした?」と、華ちゃん。


「今は沼になっている元プールにはまってたのでアイテムボックスにしまっておいた」


「はまってた?」


「なぜか沼に突っ込んで転んだようだ。

 食事が終わったらコアルームに跳んで、ブンちゃんの頭の中のオーバーホールしてもらおうと思う」


「アスカちゃんたちを見ているから、みんな高性能だと思ってしまうけど、そうでもないんですね」


「いやー、ブンちゃんは特別みたいだぞ」


「その特別は、悪い意味で特別なんじゃろ?」


 俺は正直者なのでアキナちゃんの質問にちゃんとうなずいた。


「わらわはちょっと悲しいのじゃ」


「アキナちゃん、オーバーホールすればきっと普通になる(・・・・・)と思うから大丈夫だ」


「それなら安心なのじゃ」



 食事を終えて、デザートも食べ終わった俺はさっそくコアルームに跳んだ。


 そこで、ずぶ濡れのブンちゃんをアイテムボックスから取り出して、


「コア、ブンちゃんに一般常識と屋敷回りの地理を教えておいてくれ。それと一般的な掃除の仕方もな」


「はい、マスター。

 完了しました」


「サンキュ」


 俺はオーバーホール済みのブンちゃんをアイテムボックスにしまっていったん錬金工房で濡れた衣服から水分を抜き取って(かわかして)旧屋敷に跳んだ。


「ブンちゃん、この屋敷と屋敷の周りの掃除を任せたからよろしくな」


「はい、マスター」


「掃除道具入れの場所は分かるな?」


「はい、マスター」


「よし。それでは頼んだ」


「はい、マスター」


 ブンちゃんは、掃除道具入れのあるトイレの方向に歩いていった。


 やや不安はあるが、何とかこれで一件落着したはずだ。







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マキナドール、アスカの誕生から文明の崩壊までを描くSF

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― 新着の感想 ―
[一言] 「ASUCAの物語」どんなだろう?って見に行ったら、 最終話まで読んだ履歴&しおりがあって、ブックマークも完結済に入ってた。 が、内容思い出せない不思議。善次郎並の記憶力ですた。
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