第511話 ゴーレム騎馬隊2。お掃除ゴーレム
昼食後、華ちゃんを伴ってフィギュアルームに跳び、フィギュアゴーレム馬を作った。
「これをハリト軍に使わせるんですか?」
「そう」
「全員に?」
「いや。1000個ほど作って渡すつもりだから、1000人だな。半分は伝令とか斥候で、残りの半分が本当の意味での騎兵隊として活動すると思う」
「500人も揃ってゴーレム馬に乗るんですか? あの頭から突き出た棒を持って」
「あれがないと危ないし」
「文化的にもアアいった物がないのなら抵抗なく受け入れてくれるとは思いますが、将来的にアアいった物が導入されたら大騒動になるような予感が」
「ないない。もしそんなことがあったとしても、将来の不安より今の不安を何とかする方が先だろ? 気にしない気にしない」
「わたしが乗るわけじゃないからいいんですけど」
「500人の騎兵隊の突撃は見ものだと思うぞ」
「はいはい。じゃあ帰りましょう」
屋敷に帰った俺は時間調整をしてそれからアスカ2号を迎え、その足で城の出入り口前に跳んだ。カフラン軍務卿と部下2名と兵隊が10名ほど、それに荷馬車が2台停まっていた。
まずはフィギュアゴーレム馬を500個ずつ入れた段ボール箱を並べ、それから鞍周り一式を200個小山にして5山出してやった。到底荷馬車2台では運べない量だった。
「陛下ありがとうございます。
鞍周り1000個の量を甘く見ていました」
「早めに倉庫に運んでおいてください。フィギュアの使い方は今までと一緒です」
「了解しました」
これで陸軍へのテコ入れもできた。俺が一々何かしなくてもハリトは当分安泰だろう。
俺は後のことを頼んでアスカ2号を連れて屋敷に戻った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
屋敷の方では、楽園の別荘の方への引っ越しが始まっていた。そういう意味では楽園の別荘は新屋敷で、今までの屋敷は旧屋敷になる。旧屋敷も人がいなくなってしまえば傷んでしまうのだろうが、少なくとも玄関ホールは出入りに使うし、イオナの絵画部屋はイオナが使うので全く人がいなくなるわけではない。しかし、使っていない部屋でもどうしてもホコリは溜まっていくので掃除は定期的に必要だ。ダンジョン内ならお掃除ゴーレムを使えば簡単だが、残念ながら旧屋敷はダンジョンの中にあるわけではない。子どもたちを使うのもかわいそうだし何かいい手はないか?
おっ! いい手があった。
俺のアイテムボックスの中で無為に過ごしているゼンジロウ1号がいたじゃないか。
ゼンジロウ1号は24時間365日戦えるできる男なので朝から朝まで屋敷の掃除をさせておけばいい。俺が罰掃除をしてるように見えるので、ゼンジロウ1号には俺と区別できるような服を着せておこう。具体的には掃除に適した灰色の作業服に黒のゴム長、そして水色のゴム手袋だ。
わざわざゼンジロウ1号のためにそういった物を買いに行くのが面倒だったので、ゼンジロウ1号に10万ほどお金を渡して、ワーク〇ンに行って揃えてこいと言って送り出してやった。
2時間ほどでゼンジロウ1号は買い物を済まして帰ってきたので荷物を受け取った俺は念のためコピーして、オリジナルはゼンジロウ1号に返し、それに着替えて屋敷の掃除をするように言った。
その日の夕食時。場所は新屋敷の居間兼食堂。
「岩永さん、ゼンジロウ1号のことですが、アレは止めませんか?」
「あれって?」
「作業着にゴム長をはいて旧屋敷の中を掃除させること」
華ちゃんの言葉にアキナちゃん以外みんな頷いていた。
気持ちはわからないではないが、有効利用しようと思っただけなんだよな。
「わかった。止めさせる」
「そうしてください。あの姿を見ると何だか身につまされるというか。かわいそうに思えて」
俺の分身のことを気遣ってくれるのはありがたいことなんだろうが、俺から言わせればゼンジロウ1号は顔形が似ているだけのタダのゴーレムなんだよな。
そういったことを言っても始まらないし、現に華ちゃんたちが嫌だと思っているなら止めるしかない。しかし掃除は必要だ。アスカたちもゼンジロウ1号同様タダのゴーレムと言えばそうかもしれないがあの3人は特別だし掃除に使うには忍びない。
「かわりに超高性能お掃除ゴーレムを作ってしまおう」
アスカ型だとややこしいから見た目ゴーレムゴーレムか。
みんな心底ほっとしたような顔をしたのだが、屋敷にはポーションを受け取りに錬金術ギルドと冒険者ギルドから人が毎日やってくるし、他にも人がやってくる。ゴーレムゴーレムが家の内外にいると少しややこしいのも確かだ。だからと言って助さん格さんは嫌なので、折衷案として文ちゃんでいくことにした。文ちゃんならYKZスーツも似合うはずだしアキナちゃんも喜ぶ。
俺はアスカ3号に文ちゃんの若いころの画像を数枚用意させ、コアのもとに跳んでいった。
「コア、ダンジョン外で活動できるこんな感じのゴーレムを創ってくれ。戦闘力はゼンジロウ1号なみでいい」
「了解しました。7分ほどで完成します」
たしか、ゼンジロウ1号の時は10分だったハズ。文ちゃんは俺に比べお値打ちなのか?
誰かが傷つくような詮索はしない方がいいと思い、理由は聞かないでおいた。
7分間黙って立っていたら、目の前に文ちゃんがいきなり立っていた。心臓に悪いぞ。
文ちゃんは思っていたより大柄で俺の背丈と変わらなかった。
着ている服は灰色で夏物のシングルの背広に開襟シャツ。履いているのは茶色の革靴だった。目に迫力がある。
夏物ではあるが背広ではお掃除に向かないので、
「コア、このゴーレム用に作務衣が用意できるか?」
「はい。大丈夫です。色は紺色でいいですか?」
「それでいい」
床から作務衣を乗せた台座がせり上がってきた。俺は何も言わなかったが草履も付いてきた。
「文ちゃん、作務衣に着替えてくれ」
黙って文ちゃんが着ていた背広と開襟シャツを脱いで下着だけになり、作務衣を身につけ始めた。
下着からのぞいた二の腕と胸元に青紫の何かがある。青紫とところどころに赤い色が下着から透けた体にも見えた。本物の文ちゃんは彫り物はしていないと思うが、目の前の文ちゃんは彫り物でデコレートされていた。人前で裸になるわけでもないし作務衣を脱ぐわけでもないので、見なかったことにした。
コアルームにきたついでだったのでエレギル用に英語のスキルブックができないかコアに聞いてみたらできるというので一つ作ってもらった。これでエレギルの英語対策はバッチリだ。俺も英語ペラペラになろうかと一瞬考えたのだが、今でさえ日本語、ニューワールド語、ハリト語?、出雲弁の4か国語をマスターしているのでこれ以上言語を頭に詰め込んでしまうと、何かが零れ落ちてしまいそうなのでやめておいた。
俺は文ちゃんが脱いだ衣服はアイテムボックスの中に収納してコアに礼を言ってから文ちゃんを屋敷に連れ帰った。




