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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第508話 試乗会のあと。


 鉄甲艦を下船した後、海軍の司令部が入っているという建物に海軍司令官の案内で向かった。



 建物の中の会議室のような部屋で、試乗会に参加した兵隊たちも交えてテーブルを囲みお茶を飲んで雑談タイムとなった。アスカ2号は飲食はできないので俺の後ろに控えている。そしたら、海軍の士官6人が恐縮したようだ。


「アスカ2号のことは気にしないでいいから」


 女の子一人が部屋の中に立っているわけなので、気にしないでいいといってもそうはいかないのが人情だろう。


「アスカ2号は人間じゃないから気にしなくていいんだ」


 言ってしまって言い方が相当マズいと思ったが言ってしまった以上仕方がない。アスカ2号が超高性能美少女ゴーレムであることを言いふらすつもりはないが、秘密にするつもりもないのでちゃんと説明しておくことにした。新しい王さまは女性を人として扱っていないのではないかとうわさがハリト全土に広まっては大変だからな。



 なんだか、よその世界にまで来て言動に注意を払わなくてはならないのかと思うとちょっと考えたくなるぞ。それはそれとしてちゃんと説明しておこう。


「実は、アスカ2号は超高性能美少女ゴーレムなんだ。それで飲食は必要ないし、そもそもできない。そして、立っていようが座っていようが疲れることはない。寝る必要どころか休む必要さえない。

 アスカ2号、そうだよな?」


「はい。マスター」


 俺の説明に納得したのかどうかは分からないが、6人はお茶を飲み始めた。


 せっかくなので、思いついたことを言っておくことにした。


「今回の試乗で気づいたんだが、誰しも一度見ただけで操船、操艦は無理だろうから、まずは機材の取り扱い説明書をアスカ2号に作らせる。そのあと、説明書を見ながらの実地訓練をきみたちにほどこしていこうと思う」


 今の俺の説明でスカラム宰相以下全員が安堵したような顔をした。


「アスカ2号、取り扱い説明書はどれくらいでできる?」


「午後から取り掛かって明日の朝までには仕上がります。それを製本して数を増やしてもらいますから明日からでも教育訓練を始めることができます」


 アスカ2号はコアと口に出さない配慮までできた。


「じゃあ、明日の9時、この部屋で教育訓練を始めよう。

 みんな、良いかな?」


「「はい」」


「せっかくだから生徒の人数はもう少しいた方がいいな」


「それでは、もう12名ほど増やします」


「じゃあそういうことで。

 教育訓練のほか、器材を追加しようと思う。1つは双眼鏡と言って遠くのものが近くに見える器械だ」


 そう言って、俺はオストラン軍用に用意した双眼鏡をアイテムボックスから一つ取り出して6人の兵隊たちの一人に手渡した。


「その2つの筒の細い方を目に当てて見たい物の方向に筒の太い方を向けるとさっき言ったように大きく見える。窓を開けて外を見てみればいい」


 双眼鏡を渡された兵隊は窓を空けて、そこから見える港から海を見渡した。


「どうだい?」


「すごいです。すぐそこにあるように見えます」


「ほかの窓を開けば全員外を見ることができるから、みんなも見てみればいい」


 そう言って俺はあと9個双眼鏡を作って、テーブルの上に並べてやった。


 みんなが双眼鏡を手にして窓から外の景色を眺めている後ろから、


「その双眼鏡はみんなに上げるので大事に使ってください」


 俺の後ろからの声にみんな驚いたように振り向いて、


「「ありがとうございます」」と、返事をした。よほど双眼鏡が気に入ったようだ


「うん。

 あと、夜間水面を照らす探照灯があればいいな。

 アスカ2号、探照灯は簡単に取り付けられるか?」


「取り付けは簡単ですが、器材は外注になります。おそらく十分な明るさを得る探照灯は市販ではないでしょうから自作ないしメーカーに仕様書を出して製造依頼になります」


「いずれにせよ直ぐってわけにはいかないんだな?」


「はい」


「少なくとも訓練が終わるまでは必要ないだろうから自分がいいと思う方法で進めてくれ」


「はい」


「それでは、そういうことで」


「陛下、お知らせしたいことがあります」と、スカラム宰相。


「何ですか?」


「海軍司令官以下は席を外してくれるかな」


「「はい」」


 海軍司令官以下7名が退室したところで、


「陛下、前国王を捕縛し現在マハリトに護送中です。正妃以下の婦女子も捕縛しております」


「了解」


「前国王と正妃は斬首。他の者はいったん奴隷に落とし競売にかけます。

 前国王と正妃との子どもたちはおそらく落札されませんので王国預かりとなります」


「どうして王子、王女は落札されないんですか?」


「陛下にあだなす可能性が高い者を引き受ける者は出てこないと思います。それに元の身分が身分ですので他の子女と比べ最低競売価格が高くなっています。

 前王の子どもたちとはいえ、中には気立ての良い王女もいましたので助けてやりたいとは思いますが、陛下とハリトの将来を考えるならば、鉱山にやるのが無難であると思います」


 哀れではあるな。未成年者では鉱山では何の役にも立たないだろうから真っ先に使い潰されるのだろう。


「使い潰すくらいなら、一思いに処刑した方がかえって慈悲深いんじゃないですか?」


「本人たちにとってはその通りなのでしょうが、陛下の慈悲により処刑から免れたという態をとるためです。少しでも国のために役立つことができるわけですから」


 国の役に立つからと言って辛い死に方はしたくないだろう。


「競売で売れ残ってしまった前王の子どもたちのうち未成年者の処分は、わたしに預からせてもらえますか?」


 俺のところで引き取るわけにはいかないが、オストランで引き受けてやるか。オストラン神殿で巫女とか神官を目指している分には悪さもしないだろう。あとで事情をブラウさんに話して対応してもらおう。ブラウさんに断られたら可哀そうだがそれまでだ。


「いかがなさるおつもりですか? 弟子にお取りになるとか?」


「弟子?」


「はい。未成年の子どもたちは全員女子でしたので」


 あれ? なんでそうなるの?


 まあいいけど。


「弟子じゃなくて、神殿に引き取らせたらどうかと」


「なるほど。マハリト(・・・・)大神殿は巫女の修行の厳しさで有名ですから良いかもしれません。

 私の方でそのように取り計らいましょう」


 そうだったの。知らなかった。二礼二拍手一礼教とか訳の分からない宗教の神殿だったが、ちゃんとした神殿だったようだ。


 俺に対して恨みを持って何かしでかそうとしてもたかが知れているし、オストランで預かるとなると言葉のことを考えるとスキルブックを渡すことにもなるから、それならそこでもいいか。


「それならそのように」


「かしこまりました」




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