第504話 貨物船、鉄甲艦2
日本町では工事が始まった。
そしてコアルームの隣りの造船所では新ドックの中で貨物船と鉄甲艦が完成したとアスカ2号に知らされた俺はさっそくアスカ2号を伴って視察に行った。
「ほう、なかなかいいな。アスカ2号、ご苦労だった」
「はい」
貨物船の形は俺から見ればオーソドックスな貨物船なのだが、ガレー船を見慣れたハリトの連中から見ればそうとう奇異な格好に見えるだろう。船首の喫水線下には、先端が丸みを帯びたバルバスバウが取りつけられてるのでかなり奇異というより衝角と勘違いするかもしれないが商船で軍船に突っ込む者はいないはずだ。
それでも鉄甲艦に比べれば許容範囲かもしれない。
貨物船の塗装はさび止めを塗った上にグレーの塗装なので目立たないのだが、対する鉄甲艦はさび止めを塗った上に真っ黒な塗装が施されている。上甲板も含め鋼鉄の装甲で覆われているうえ乾舷が極端に低く、常時艦の3分の2は水没しているそうなので潜水艦の海上航行時に似た感がある。
艦首部と艦尾は水線下になり、円錐型の艦首部の先端にはカジキのような衝角が取り付けられている。敵船の水線下に衝角による破孔を穿ち、更に破孔を拡大するためのこぎり状の鋼鉄の突起が衝角の根元から上下左右4方向に取り付けられている。
艦中央には潜水艦のセイルのような艦上構造物が乗っかって、その上部がブリッジになっている。その艦上構造物の後方には煙突型の通排気管が先端を下に向けて合計4本突き出ている。
貨物船も鉄甲艦も鋼鉄製なので俺がコピーするにはどう見ても鉄の量が不足する。特に鉄甲艦は排水量(重さ)=1200トンのほとんどが鋼鉄なので到底俺の鉄のストックでは間に合わない。ハリトの世界で鉄甲艦は無敵だろうから、数はそれほど必要はないだろう。
「コア。ひょっとして、コアは造船所の中ででき上った船をどちらもコピーできるんじゃないか?」
『はい、建造を手伝っていますのでDPポイントを消費することで実物がなくても同じものを作ることがきます』
「俺の錬金工房のレシピと同じでコピー元が必要ないわけだな。それじゃあそのうち頼む。
それでコピーはどうなんだ」
『ダンジョン内にあるものならコピー可能です』
「ということは、冒険者とかがダンジョンに持ち込んだものでもコピーできるってこと?」
『はい。スキルブックなど特殊なものを除いて可能です。
メタル化はできませんがメタルモンスターをコピーすることは可能です』
「ほう。さすがはダンジョン・コアだな。
そうだ! 俺はエリクシールを持ってるんだけどコピーできるかな?」
『申し訳ありません。アーティファクト級のアイテムはコピーできません。従ってマスターの防具や武器もコピーできません』
「俺の如意棒とか革鎧って、アーティファクトなの?」
『はい。唯一無二のアーティファクトです』
「ほう、ほう、ほー」
唯一無二のアーティファクトとな。何だか嬉しくなるな。
俺はいい気分で、ドックの中の貨物船と鉄甲艦をアイテムボックスに収納しておいた。次にマハリトに行ったとき試乗会をすることにしているので、そこでの不具合とか改良点があればそれに対応して量産型を完成させ、数を増やしていくわけだ。
艦船の数が増えてきたら、整備専用のドックを港の近くに作ることになる。Zダンジョンではないものの、ダンジョン内なので工事にゴーレムが使える。従ってドックの建造は大仕事にはならないだろうし、ドック内での整備作業は作業ゴーレムに任せることができる。遠い将来のことだろうが、ハリトの人間がドックで働けるよう一歩一歩前に進んでいこう。
貨物船と鉄甲艦をアイテムボックスに収納してドックが空になったので、コアに2隻のコピーを造ってもらった。コピーはオリジナルがそれまで乗っていた船架の上に乗っかった。本当に一瞬の出来事なので逆に今までそこにあったように思えてしまった。俺の転移もそんな塩梅なのかもしれない。
「アスカ2号、こんどマハリトで貨物船と鉄甲艦の試乗会をする。俺がマハリトに行くときには呼びに来るからついて来てくれ。待て待て、その前に水に浮かべて浸水試験が先だった」
「マスター、浸水試験はドック内で行なっています。異常はありませんでした」
「そうか。この新しく作ったドックも注排水できるんだな」
「はい」
ロイヤルアルバトロス号の時はわざわざ大空洞で浸水試験をしたが、あの時は最初の船だったからまだノウハウがなかったのだろう。超高性能美少女ゴーレムは日々進化しているということか。
アスカ2号をマハリトに連れていくときハリト語ができないと不便なので、ハリト語のスキルブックを渡したところ、壊したところでスキルを身につけることはできないと言われた。
コアにどうにかならないかと聞いたところ、直接インストールできると言われたので、その通りアスカ2号にハリト語をインストールしてもらった。そういえば俺とゼンジロウ1号は知識を共有できるわけだから、少なくとも言語に関してはスキルブックなしで覚えることができるのではないかとコアに聞いたところ、もちろんできると答えられてしまった。
「ですが、言語の直接インストールはダンジョン内でしかできません。その代りスキルブックはダンジョン外でも使えます」と、いうことだった。
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日本国内は大型連休に入ったが週休4日で働きづめの俺の辞書には大型連休などという言葉はない。日本町の工事も休みなしで続いていた。
日本町の建設が進む中、オストラン宮殿では都オストランを中心に日本町でのスタッフの募集を始めた。入国審査、ポーション診療所、宿泊施設などのスタッフだ。今回採用する栄えある第一期スタッフは日本町での中核を担ってもらうことになるので漏れなく日本語スキルブックを与える。彼らは必要なスキルを学ぶため、日本に3カ月ほど短期留学することになっている。もちろんエヴァが交渉してくれたことだ。
日本町のスタッフは一種のエリート職なのだが、日本との交流についてオストランでは広報活動を行なっているわけではないので、第一期スタッフは宮殿関係者、すなわち門地がしっかりした人物がその多くを占めることになるだろう。俺はそれでもいいというかその方がいいと思っている。




