第502話 ハリト国王7
ちびメタルゴーレムドラゴンの実演をしようということになり、俺と、銀色に輝くフィギュアゴーレムドラゴンを1個ずつ手にしたわが政府の重鎮3名は玉座の間に移動した。
玉座の間には誰もいなかったので、気兼ねなく遊べる。
「スカラム宰相から試してください。人からは少し離して床に投げてください」
「それでは」
スカラム宰相が手にしたフィギュアを5メートルほど離れた床に投げた。青い光のイフェクトの中、フィギュアは本来の大きさのメタルゴーレムドラゴンに戻った。
ちびドラゴンはその場で2本足で立っている。ちびとはいえ床から頭のてっぺんまでだいたい2メートル。鳩とは言えないがこれくらいの大きさはあった方が安全だろうし、これより小さいと飛行速度が相当低下するような気がする。いずれにせよ、伝書ドラゴンはこのくらいだと慣れてしまえば、ハリトの国民にとってはそれが標準形になってしまうのだ。間違いない。
「スカラム宰相、試しにちびドラゴンを呼んでみてください」
「どう呼べば?」
「ちびドラゴン1号とかでいいでしょう。
メタルゴーレムはフィギュアからこの形に戻した者の命令しか基本的には聞きませんから」
「それじゃあ、ちびドラゴン1号。わたしの方に近づいてこい」
スカラム宰相の命令を聞いたちびドラゴン1号がやや高めの声で『ワギャン』と一声鳴いてそれから宰相に向かって歩き始め、宰相のすぐ手前で立ち止まった。そして頭を宰相の手の高さまで下げた。頭をなでてもらいたいようだ。俺の時はそんなことするドラゴンはいなかったような気がするが、きっとちびドラゴンは人懐こいのだろう。
「おお、スゴイ」
スカラム宰相がちびドラゴンの頭をなでようと手を出したのだがドラゴンの頭はトゲだらけなので結局手を引っ込めた。頭をなでるためには、丈夫な革手袋が必須アイテムになるだろう。
スカラム宰相の次はカフラン軍務卿がフィギュアを床に投げた。こちらはメタルゴーレムオルカで慣れているたせいか、落ち着いたものだった。
ドラゴンが飛びたてたら面白かったのだが、天井まで5メートルほどある玉座の間でも、どう見ても飛び上がった瞬間にドラゴンが頭を打って、悪くすれば頭が天井を突き破ってしまう。今日はこれくらいで諦めてもらうしかない。
最後にディズレー財務卿がフィギュアを床に投げた。
「これはすごいです」
フィギュアは3体目のちびメタルゴーレムドラゴンに戻った。玉座の間はかなり広い部屋なのだが、ちびドラゴンと言えど3体もいると結構狭く感じる。
「気に入ってもらったようだから、それぞれ自分のドラゴンと思って使ってください」
「「ありがとうございます」」
「それじゃあ、今日はこの辺で」
俺が帰ろうとしたら、スカラム宰相が慌てて俺に、
「陛下、このドラゴンは、いつまでもこの大きさなんでしょうか? 自宅に連れて帰るにも大きすぎて大変そうですし、城の廊下を歩くのも通行の邪魔になりそうなんですが」
「教えるのを忘れていました。
フィギュアを投げてこの形に戻した人が、『エレメア』と声をかけてやれば元のフィギュアに戻ります。
試しにやってみてください」
スカラム宰相がちびドラゴンに向かって『エレメア!』と声をかけたら、そのとたんちびドラゴンは青白く光って元のフィギュアに戻った。
「すごい」
宰相に続いて残りの二人もちびドラゴンを元のフィギュアに戻して床から拾い上げた。
「そういえば、メタルゴーレムオルカも今の言葉でフィギュアに戻るんです。メタルゴーレムオルカは海の中にいるので、元のフィギュアに戻ってしまうと海の底に沈んでしまうからそこは注意してください」
「はい」
「それじゃあ」
「陛下、今日はありがとうございました」「「ありがとうございました」」
3人が頭を下げる中、俺は屋敷に転移した。
午後3時ごろまでには日本訪問を終えたゼンジロウ1号とアスカ1号を迎えに行かなければいけない。ゼンジロウ1号には宮殿に戻ったら、プライベートルームの寝室にいるように言っている。アスカ1号には執務室にいるように言っている。妙な勘違いされては困るからな。君子は怪しい行動をとってはならないのだ。
昼食とデザートを食べ終えた俺は、しばらく居間の座卓に座って腹を落ち着かせてそれからロイヤルアルバトロス号の風呂に向かった。
俺は湯舟の中で、最近の目の回るような忙しさのことを考えていた。
意外と俺って働いてるよな。働いているといっても王さま業では給料は出ない。基本タダ働きだ。そう考えると、俺の防衛省特別研究員という肩書は貴重だ。なにせ給料が出るし、社会保険料も払ってくれる。収入があると年金支給額は減額されるそうだが、俺の場合課税収入はおそらくゼロなので、まるまる年金を受け取れる。憧れの年金生活が始まるのだ。
あああー、あこがれーの、ねんきーん、せいかつー。
つい鼻歌が出てしまった。そういえば、俺なんて結婚もしていないのに子どもが7人もいる。何か控除されないのかな?
でもよく考えたら、所得税払ってないから控除も何もないことに気づいてしまった。さらに言えば、市民税も払っていないので、ふるさと納税もできない。
俺は防衛省の特別研究員なんだから所得税も住民税も払ってるはずだぞ。すっかり忘れてた。でも源泉徴収票なんかもらった覚えは全然ないんだけど、俺ってまだ防衛省の職員なのだろうか?
アキナちゃんの株とかは源泉徴収だからいいだろうが、通貨とかの利益には課税されて来年はがっぽり市民税を支払うことになる。そうなると、ふるさと納税でかなりの返礼品がもらえるはずだ。その場になって慌てるくらいなら、今からアスカ3号に言って、返礼品欲しいものリストを作らせていた方がいいかもな。アキナちゃんの場合、最高税率の所得税率45パーセント、住民税率10パーセントは確実だろうし、源泉徴収以外で1000億円儲けたら、100億円住民税が来てしまう。全額ふるさと納税できるなら100億円だ。ウヒョー! 100億も寄付したら返礼品はどれくらいになるんだ? 還元率を2割と低めに見積もっても20億円相当の返礼品だ。どうすんだー!?
やっぱり今から欲しいものリストを作っておかないと間に合わなくなるような気がする。
風呂から上がって、熱めに次の風呂の準備を終えた俺は、もう少ししたら風呂に入るように子どもたちに言おうと思って上のキャビンの居間に上がったが、誰もいなかった。スマホから子どもたちにメールを入れておいた。
それから余所行きに着替えた俺は時間調整することなく宮殿にある俺のプライベートルームの寝室に跳んだ。
ゼンジロウ1号がちゃんとそこにいたので、そのままゼンジロウ1号をアイテムボックスに収納し、それから執務室に行ってスーツケースなどの荷物も収納した。
その後、そこで待っていたアスカ1号を連れてZダンジョンのコアルームに跳んだ。アスカ1号とゼンジロウ1号の扱いに差があるような気もしないではないが、どうせ相手はゼンジロウ1号だから問題なーし。
コアルームでゼンジロウ1号をアイテムボックスから出して、ゼンジロウ1号の日本訪問時の記憶をコア経由で俺にコピーしてもらった。
他人の記憶をコピーされたのは初めての経験だ。ほう。不思議な感覚だ。俺が経験したわけでもないのに、宮中の晩餐会のことや日本の総理との会談のことをちゃんと思い出せる。
話は聞いていたが1兆円の円借款を正式にせしめた。もちろんエヴァが事前交渉していたからこその借款だ。これでオストランのインフラ整備がいっきに捗る。
明日からは、いよいよ日本町の工事が始まる。楽しみだ。




