第501話 ハリト国王6、ちびメタルゴーレムドラゴン
訪日2日目。
ゼンジロウⅠ世は官邸において総理大臣との会談に臨んだ。会談場所では両国の旗が掲げられている。オストラン王国の国旗はエンジ色の地に白で聖剣ジルベルネ・スローンを意匠したものだ。もともとオストラン王国の国旗はエンジ色の旗で、意匠など何もなかったのだが、それでは格好がつかないということで、エヴァに頼まれたイオナが急遽デザインし善次郎が了承したものだ。
30分ほどの会談の後、オストラン王国は日本より1兆円の円借款を取り付けた。
もちろん会談の内容は両国の担当者間で詰められているので、単なるパフォーマンスに過ぎない。
その日の夕方には宮中での晩さん会が行なわれた。プラチナダイヤモンドの首飾りには黒のフォーマルの方が似合うだろうということで、この日のゼンジロウ1号は黒のスーツに身を包み、首からずっしり重い首飾りを下げて、晩餐会に臨んだ。
訪日最終日。
沿道を埋め尽くすほどの見送りの中、ゼンジロウ1号たちを乗せた車列は迎賓館から羽田に向かい。来た時の逆の経路をたどって、オストラン王国に帰国した。
午後2時頃、馬車は宮殿に到着して訪日団は解散した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
訪日団が帰ってくる日。
俺は午前中マハリトの城に跳んだ。王国の中心となったスカラム宰相、カフラン軍務卿、ディズレー財務卿とで会議をした。
「ハリト王国軍が弱体化したわけで、護衛のメタルゴーレムオルカの手当てをしたけども、海軍の人手不足は陸軍以上に大変だろうと思い、貨物船と軍艦を造ることにしました」
「貨物船というのは荷物を運ぶガレーのことでしょうか?」
「ガレーではなく、かなりの量の荷物を運べる荷物専用の船になります。100人、200人と漕ぎ手を必要とするガレーと違い、船長以下12人ほどで運用できるものを考えています」
「まさかそんなことが」カフラン軍務卿から驚きの声が上がった。
「陛下は大召喚術師であるばかりか大錬金術師でもある」と、スカラム宰相。
「申し訳ありません」
「ゴーレムの技術を使っているから、オールで漕がなくていい分人が少なくて済むんですよ。
そのうえ速度がガレー船の2、3倍は出ますから、前方の見張りさえしっかりすれば、通常では海賊などにつかまることはありません。
「なるほど。
軍船もそうなんですか?」
「もちろんそうなんですが、乗組員が少なすぎるので切り込みなどはできません。そのかわり軍船は敵艦への体当たり専用にしました。敵艦を沈めることしかできないし、捕虜をとることも拿捕することもできません。海軍が回復していけば、また違う軍船を考えましょう」
「陛下、貨物船が数多く就航すると、いまの船主やガレーの漕ぎ手の多くが職を失うのではないでしょうか?」
「船主に貸し出していけばいいと思っています。料金はガレーを運用することに比べてそれほど安くないように設定した方がいいでしょう。ガレーの漕ぎ手は相当余るでしょうから、それは海軍なり陸軍なりで引き受けていけばいいと思っています」
「なるほど」
「貨物船が大量に就航すればおそらくハリトの海運に太刀打ちできる国はなくなるでしょう。
民間での貨物船の運用については国が注意して、他国からの恨みを必要以上に買わないようしてください」
「了解しました」
「操船は船に向かって口頭で指示を出すだけです。従って、素人でもある程度練習すれば操れるようになると思います。
貨物船も軍船も数日中にでき上がりますから、7日後、港に海軍から人を集めておいてください。貨物船も軍船もどちらも12人乗りだけど、船長、副長、航海士の3人2組で全部で6人かな」
「了解です」
「今日はこんなところです。何かありますか?」
「前王の潜伏先に兵200を送りました。陛下が次回おいでになる時には、良い知らせをお伝えできると思います」
「了解」
そのあと、ディズレー財務卿が、
「陛下、前王の妃たちの実家から娘の助命を願って嘆願書が何通か届いております。これについては、捕縛した場合、奴隷として売り出しオークションを開くことことを伝えています。
また、嘆願書が届いているいないに関わらず、妾妃たちの実家には資金の借り入れ依頼を行なっています。割り当てられた金額相当で買い取ることになると先方も理解するでしょう」
オークションだから、国側の代理人は借金の割り当て金額まで値段を吊り上げるだけだろう。
妃たち全員ではないかもしれないが、前王と一緒にそれなりにいい思いをしたのだろう。言葉の上ではかわいそうだが、俺にとっては見ず知らずの連中だし、国にとって必要ならそれだけのことだ。
後は捕虜の身代金か。
「ミルワに捕まっていると思われるわが方の兵士たちの身代金についてはまだミルワから連絡はきてませんか?」
「通常の戦なら、戦いが終わって10日前後で連絡が届くのでしょうが、今回のように大規模な戦いの後はかなり時間がかかります」
それはそうだろうな。電話もなければろくな交通機関もないんだから。おっ! いいことを思いついた。メタルゴーレムドラゴンを伝書鳩にしてはどうだろう。今の大きさでは大きすぎるが、もう少し縮めて書類鞄を首に括り付けてやればいいんじゃないか? 最初はこの城から各拠点まで伝書竜を連れていかないといけないが、それ以降は拠点と城の往復だ。
「今思い付いたんですが、小型のドラゴンを使って拠点とこの城の間で書類のやり取りをしてはどうでしょう。小型のドラゴンなのでそれほどスピードは出ませんが、それでもこの城から橋の手前の城塞まで半日もあれば到着できるはずです」
そのあと、俺は伝書ドラゴンの運用法を説明した。
「それは素晴らしいお考えです」
「何匹くらい必要かな? 予備ってわけじゃないけれど、ある程度数がいれば、その分いろんなところで使えるから多めに渡しておくか。
使い方はこの前のメタルゴーレムオルカと同じで、地面にフィギュアを投げだせば、メタルゴーレムドラゴンに戻るから。大きさは今のメタルゴーレムドラゴンの3分の1くらいにしておこう。
簡単だから、今作ってテーブルの上に出しましょう。じっくり見てください」
俺はその場で、3分の1スケールのフィギュアゴーレムドラゴンを錬金工房で101個作って段ボールに入れ会議テーブルの上に置いてやった。頭からしっぽの先まで30センチちょっとあるので、フィギュアでゴッコ遊びするにはちょうどいい大きさだ。間違って床や地面に落としてしまうと大きくなってしまうのでそこは気を付けなければいけない。
大きな段ボール箱がいきなりテーブルの上に現れたことに驚いた3人が今度は立ち上がって段ボールの中のオモチャを手にして上から見たり横から見たり観察していた。
「これがドラゴンに?」
ディズレー財務卿はフィギュアゴーレムオルカは見ていなかったようだ。
「この部屋の中だと狭いから、くれぐれも床に落とさないように。小さいといっても頭の先からしっぽまでで1尋半(注1)近くありますからね」
(注1)
再掲:
ハリトでの単位。
尋:ここでは約2メートル。
町:約100メートル=50尋
里:約4キロ=40町。人が1時間に歩く距離。




