第500話 ゼンジロウⅠ世、国賓訪日2
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「濃いグレイの現代風のスーツ姿の人物がゼンジロウⅠ世陛下と思われます」
馬車から降りた人物たちと御者によって、馬車の後方にまとめて乗せられていた荷物が、外務省によって用意されたリムジンとその他の黒塗りのセダンに運び込まれた。
後方の馬車に乗っていた5人はリムジンに、前方の馬車に乗っていた4人は黒塗りのセダンに乗り込んだ。
「前方の馬車から降りてきた4人は革鎧のような者を着ていましたし、腰に武器を下げていましたから護衛でしょうね。
中に1名女性がいましたが、国王陛下の護衛ですから彼女も相当の女性なのでしょう。
今の彼女の顔、どこかで見たような? 山口さんどうです?」
「とあるアニメキャラを実写化するとこうなるだろうという理想の容姿」
「はっ?」
「N〇Kで、名まえを出してはいけないと思っての発言でしたが、もういいでしょう。
ヱヴァンゲリ〇ンに出てくるアスカ・ラン〇レーを実物にしたようなという意味です」
「そうでした。そうでした。思い出しました」
「とってつけなくても」
「申し訳ございません。実は知りませんでした」
「お忙しいN〇Kのアナウンサーの方が別に知らなくてもいいんですよ。
それよりもゼンジロウ王ですが、どう見ても日本人に見えませんでしたか?」
「国王陛下のお名まえは確かにゼンジロウと日本人っぽいお名まえですし、お顔つきも日本人といえばそうでしょうが、日本人ということはさすがに」
「いずれ、真相は明らかになるでしょう」
「山口さんは何かご存じなんですか?」
「予想はありますが、ここでは控えさせていただきます。
深夜番組ならバンバン言っちゃうんですけどね。わたしも場所柄をわきまえるようになったもので」
アナウンサーと解説の山口遊子がスタジオで話しているうちにオストラン国王一行を乗せたリムジンを含む車列は出雲空港に向けて走り去っていった。
「正午より0時30分まで、特別番組『オストラン国王来日。第2部』として教育放送で特別機が到着する羽田空港での首相、外相ほかによるオストラン国王ゼンジロウⅠ世陛下の歓迎の様子をお伝えします。
それでは皆さま、ここでいったん番組を終わらせていただきます」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
白バイの先導のもと前後をパトカーに挟まれたゼンジロウ1号を乗せたリムジンを含む車列は一路出雲空港に向かった。
出雲空港では用意された特別機までリムジンが乗りつけている。
アスカ1号とゼンジロウ1号、それに視察団として日本に赴いた経験のある3名は飛行機に乗り込むことにリラックスしていたが、逆に言えばローゼットと護衛の3名は相当緊張していた。
正味1時間30分弱の空の旅を終えた特別機は無事空の旅を終えて、羽田空港に着陸した。
タラップが取り付けられ飛行機の扉が開き、ゼンジロウ1号が最初に扉から現れた。
それと同時に自衛隊の音楽隊による演奏が始まった。音楽隊の前をゼンジロウ1号が赤い毛氈の上を随員と護衛を連れてその先で待つ総理大臣以下の日本の出迎えの面々に向けてゆっくりと歩いていった。
「ようこそ、日本に」
総理大臣の差し出す右手にゼンジロウ1号が右手を差し出してしっかり握手して、日本語で、
「歓迎ありがとうございます。
よろしくお願いします」
総理もオストランの国王が日本人ということは知らなかったため、流ちょうな日本語に驚いた。日本人顔をして日本語を話せば普通日本人なのだが、総理は異世界人≠日本人と刷り込まれているので、単純に今のあいさつだけを特訓したのだろうなと考えていた。
ゼンジロウ1号は引き続き外務大臣など政府関係者と握手を交わした後、設けられたマイクに向かって簡単なあいさつを行なった。
「この度、日本国に国賓としてお招きいただき、日本政府の方々、日本国民のみなさん、ありがとうございます。
わが国と地球は世界が違いますが、ダンジョンを介することで今や陸続きとなりました。
両国の発展はこのダンジョンをどう利用していくのかにかかっていると思います。……」
この日本語の演説には政府関係者はみなびっくりしてしまった。しかし、オストランから訪れた視察団の一行も全員日本語が堪能だったことを皆が思い出し、一部のエリートだけかもしれないがオストラン人は語学の才能がずば抜けているものだと感心してしまった。
防衛省、外務省ともどもこういった情報については、官邸を含め極力外部に漏らさないよう徹底していたが、効果はあったようだ。ただ各国の工作員たちは単純な語学学習でオストラン人が日本語を習得したわけではないと気付いていた。
空港でのセレモニーが終わり、再度リムジンなどに乗り込んだオストラン王国一行は、白バイの先導のもと前後をパトカーに挟まれて、宿泊先の赤坂迎賓館に向かった。
この日は総理とのやや遅い昼食会。明日は総理との会談の後、宮中での晩さん会が控えている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
当日の深夜情報トーク番組。
番組ではとあるタレントと山口遊子がオストラン国王の来日についてトークを繰り広げていた。山口遊子の名は広く知れ渡り、いまやダンジョン評論家やweb小説家の収入など及びもつかないほどこういったタレント活動で稼いでいた。
「山口さん、アレどう見たって日本人だよね!」
「一国の国王陛下のことをアレって言っちゃいけないでしょ!」
「ええ? 誰も国王陛下のことなんて言ってませんけどー」
「まあいいです。
もちろんあの人物は日本人です」
「あれ? 山口さん、そこまでいい切っちゃって大丈夫なんですか? もし間違っていたら責任取ってweb小説家の看板下すんですよね!」
「いいですよ。そのかわりわたしの言ったことが正しかったら、あなたはどうするんですか?」
「何も? わたしがなんで責任取らなきゃいけないんです?」
「じゃあ。いいですよ」
「山口さん、怒っちゃいました? 冗談ですよ。山口さんのweb小説家の看板なんて下ろそうが上げようが誰も気にしませんから」
「失礼ーだなー。これもギャラのためと割り切りましょう」
「山口さんのそのドライさが人気の秘訣だよね!」
その言葉には答えず、山口遊子は、
「ではなぜわたしがオストラン国王は日本人であると言い切ったのかご説明しましょう」
「あれってただの勘じゃなかったの?」
「勘ではありません。推理と言わせていただきましょう」
「ほう」
「あなた、以前、防衛省がバックアップする3つの冒険者チームの他に、第4の冒険者チームが話題になったことを覚えていませんか?」
「よーく覚えてるよ。防衛省のコメントでアルティメットウェポンと呼ばれた最強の冒険者チームだよね」
「そうです。その冒険者チームの黒一点、おそらくそのチームのリーダーの顔を覚えていますか?」
「美少女を3人も連れてうらやまけしからんと思っただけで、リーダーの顔までは覚えていないなー。覚えているのは黒い鎧を着てたことくらいだな」
「スタッフさんにその時の映像を探してもらいました」
第1ピラミッドに入っていく冒険者チーム4人の姿が画面に映し出された。映像は鮮明ではないため個人の特定は難しい。
「次に、今日来日したオストラン国王です」
羽田空港に着陸した特別機からタラップに立って手を振るオストラン国王の映像が流された。
「どうです? 似ているでしょう?」
「これを見て、似ているかどうかは判断できないんじゃない?
そうだと仮定して、山口さんはオストラン国王が冒険者チームのリーダーと同一人物だといいたいわけ?」
「その通りです。
話が少し飛びますが、今日来日したオストラン国王の一行の中に、ヱヴァンゲリ〇ンのア〇カにそっくりな女性がいたでしょう?」
「いたねー」
「あれは、ダンジョンで生まれた人造人間なんです」
「これはまた際物説!」
「少し考えれば簡単なことです。
オストラン王国をけなしたいわけじゃありませんが、わが国と比べ数百年は科学技術などが遅れていると考えられているオストランでダンジョンを長いこと利用していただけでゆらぎなるものを作れると思いますか? ああいった物を創れるのはダンジョン・コアとそのコアを自由に操ることのできるダンジョンマスターだけなんですよ」
「済みません。山口さんの今の話、全く理解できませんでした」
「この放送を見ている多くの方は今の話を理解できたと思いますけどね。
要はダンジョンマスター権限でゆらぎを創ることもできれば、人造人間を創ることもできる。今日の午前中のN〇Kの中継でもお分かりのように時間だって精確だ。そういうことです」
「ということは、オストラン王国にはダンジョン・コアなるものを攻略してダンジョンマスターになった人物が存在するということ?」
「なんだ。わたしの話をちゃんと理解してたじゃないですか。
答えは、イエス。
そこで、オストラン国王と最強冒険者チームのリーダーが同一人物だという
わたしの説を思い出してください」
「思い出した!」
「結構。その二つからで導き出されるのは何か?
ズバリ、最強冒険者チームのリーダー=オストラン国王=ダンジョンマスター。
これなんですよ。これで全ては説明つきます」
「それでいいのかな?」
「まず、最強冒険者チームがダンジョンを攻略してダンジョンマスターになった。
あり得るでしょう? 何せ最強なんだから」
「あり得る」
「それほどの冒険者なら、一国の王さまに祭り上げられても不思議じゃないでしょう? 何せダンジョンを握っている張本人なんだから」
「あー、確かに」
「ダンジョン・コアはダンジョン内にモンスターを創り出すことができるくらいなんだから、人造人間くらい創れそうじゃありませんか? どうせ作るなら美少女、それもダンジョンマスター好みの美少女人造人間ってことでしょう。特にあのチームのリーダーは美少女大好き人間のようですから」
「4人のチームで自分以外美少女って、美少女大好きそうだもんねー」
「この仮説について本人に聞いたところで、はいそうです。と、認めはしないでしょう。
所詮仮説は仮説。真実が明らかになる場合もあれば、そうでない場合もある。
この番組をご覧の方々にわたしのこの仮説を1年後まで覚えておいていただきたい。そのころにはすべてが明らかになっている。と、ダンジョン評論家兼web小説家、山口遊子がはっきり申しておきましょう」
「山口さん、今のは予言だよね?」
「そうかもしれません。いずれ分かります。フフ」
山口遊子の薄ら笑いの中、番組は終了した。




