第498話 訪日前夜
ソーラー電卓をオストランまで届けて屋敷に戻ったら、アスカ3号が俺を待っていた。そのアスカ3号から別荘建築用の資料が揃い、コアに見せたと報告を受けた。
「俺も失念していたが、アスカ3号ではコアルームに入れなかったんじゃなかったか?」
「ゆらぎから連絡室やその先の通路はコアルームとの間に仕切りはありますがコアルーム扱いですので、高速で情報のやり取り可能です」
「そういえばあそこから声を出せば、コアからすぐに返事があるものな」
「はい。
それで、建物の形状や間取りはどうされますか?」
「そうだなー。
上から見た形は正方形。横から見たら総2階。
家の真ん中に2階まで吹き抜けの居間兼食堂。その周りを玄関、台所、風呂、トイレと言った設備を並べる。
2階は1階からの吹き向けを囲うように回り廊下があって、回り廊下の壁側に、みんなの個室が並ぶ感じかな。もちろん、廊下の居間側は危ないから柵を作ってくれよ」
「だいたいの見当は付きましたので、とりあえずコアに創ってもらいます。問題があるようなら修正します」
「了解。いつごろまでに出来上がりそうだ?」
「物品の注文がまだですのではっきりしたことは言えませんが、長くても10日で完成すると思います」
「10日で屋敷並みの別荘ができるというのはすごいな」
「わたしは資材を調達するだけで、実作業はコアとアスカ2号で行ないますからすごいというわけではありません」
「設計から何からアスカ3号でも分かるんだろ?」
「ある程度は勉強していますので」
「それがスゴイということなんだよ。問題解決のための手段を自分で見つけて、コアとアスカ2号を使って問題を解決するわけだから」
「マスター。ありがとうございます」
アスカ3号を褒めてやった俺は屋敷に帰った。
その日寝る前ベッドに横になって考えた。
超高性能美少女ゴーレムアスカを3体に増やしたことは大正解だった。
表面的にはあまり活躍していないアスカ1号も、リサのバレンでの買い物や、エヴァの移動などでしっかりと警護をしてくれている。そもそも元は一緒なんだからアスカ1号から3号まで俺にとっては差を付けることもないし、みんな同じアスカだ。
そのアスカをもう一人くらい増やして4体にしてもいいが、俺には理解できない大人の事情のような物が絡んで3体で打ち止めになっている。3体なら三羽烏、4体なら四天王。カラスなんかより天王の方が強そうだが、テレビなどでは放送回数の制約でどっちになるのか決まるのだろう。制限がなければ十勇士になるが、そこまで来ると十勇士の構成要員で俺が知っているのは猿飛佐助と霧隠才蔵だけだから意味はないというか増やし過ぎは逆効果だ。
俺は文化人類学的創作論はその辺にして、久しぶりに金のサイコロの錬成をしてぐっすり眠った。
翌日。
俺の国賓関係の知識と日本関係の知識をゼンジロウ1号に植え込むためコアルームに跳んだ。
ゼンジロウ1号をアイテムボックスから出してやり、
「コア、
ゼンジロウ1号に俺が持っている国賓関係の知識と日本関係の知識を移植してくれ」
「はい。
完了しました」
あれ? もう少し時間がかかるものと思っていたが、3秒もかからなかったぞ。それだけ俺の持っている知識が浅薄だったのか?
「いえ、増加分を追加しただけですから」
「なるほど」
コアは気を利かせて俺を慰めてくれたのかもしれないが、素直に事実として受け止めておこう。
なにはともあれ、これで準備は整った。残った仕事は出立前日にゼンジロウ1号を宮殿に届けるだけだ。宮殿とはゆらぎで繋がっているから勝手に行って来いと言ってもいいが、まあいちおうそれくらいの面倒は見てやろう。ゼンジロウ1号を宮殿に置いてくれば、後は宮殿で良しなに取り計らってくれるだろう。
俺がゼンジロウ1号を連れて屋敷に帰ろうとしたところで、コアが珍しく自分から俺に話しかけてきた。
「マスター、ご報告があります」
「なんだ?」
「昨日、ダンジョン内に爆薬を持ち込もうとした者を発見しました」
「それでどうした? 捕まえたか?」
「いえ。爆薬を無害なものに変えただけで、そういったことはしていません」
「爆薬は持っていれば犯罪だがそうでなければどうしようもないものな。ちなみに爆薬を何に変えたんだ?」
「見た目が似ていましたので、名古屋の白ういろうに変えておきました」
爆薬無害化作戦は功を奏したようだ。
「そいつが持ち込んだ爆薬は白ういろうに似てたのか。
その人物の素性は分かるか?」
「はい。XXXの工作員でした」
「ふーん。爆薬を食料に交換したわけだから、連中にとっては儲けだったかもな」
他人の足を引っ張る暇があるなら、地道にダンジョンで稼いだ方がよほど儲けになると思うが、一体全体何がしたいのか謎ではある。
「マスター、爆薬を持ち込んだ人物の目的は発電所の破壊だったようです」
これはいかん奴だな。ダンジョンの壁を壊すくらいならまだしも、そういった物を壊せば大勢に影響が出る。まさにテロじゃないか。
「コア、もしその人物がまたダンジョンに入ってきたら、見つけることはできるか?」
「可能です」
「見つけたら、かわいそうだが第19層辺りで上りも下りも階段から十分離れたところに飛ばしてやってくれ。いや、そいつに限らずそういった連中を見つけたら残らず飛ばしてくれ」
これでダンジョン内でテロを働こうとする連中は行方不明者に名を連ねることになる。世の中には決してやってはいけないことがあるわけだが、それが分からない者の矯正は無理だ。むごいのかもしれないが排除するしかない。
そうこうしているうちに、ゼンジロウ1号の出立日の前日になってしまった。夕方までには、宮殿入りするとローゼットさんに告げている。俺は護衛の一人として今回の訪問に同行するアスカ1号を連れて宮殿のプライベートルームに跳んだ。アイテムボックスからゼンジロウ1号と、ゼンジロウ1号が自分で詰めたスーツケースを取り出して、
「ゼンジロウ1号。
おまえの恥は俺の恥になるわけだから、くれぐれも、それなりに振舞ってくれよ。
アスカ1号。後は頼んだ」
「「はい。マスター」」
アスカ1号とゼンジロウ1号を宮殿に残して俺はコアルームに跳び、明日の午前9時ちょうどにオストラン-日本間の二つのゆらぎを活性化するようにコアに指示して屋敷に戻った。




