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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第490話 ハリト国王3


 その日の午後。


 食糧不足と住居不足が懸念されるので、スーパーに跳んで、ジャガイモ、玉ねぎ、ニンジン、そして小麦粉を買い、ホームセンターに跳んで、寝袋を購入した。


 そこまで買いそろえたところで、ダンジョンマスターとして自由になんでもコアに創らせることができるZダンジョンを利用することにした。石組型のダンジョンなら夜露はしのげるし寝袋でじゅうぶんだ。


 この前オストランと日本を繋げるために作った100メートル四方の部屋でいいだろう。足りないなら必要な数だけ増やせばいいだけだし。


 俺はだいたいの見当をつけてコアルームに跳び、発電所と同じ感じで100メートル四方の部屋を創ってもらい、マハリトにもらった土地の入り口に、例のコンクリートに見える目印を置き、不活性化したゆらぎを作って新しくできた部屋に繋げた。俺が指示したタイミングでゆらぎは活性化させる。


 こんなところで、明日マハリトの城に行ったら状況を聞いて対処しよう。




 翌朝。


 朝食を食べ終えて、すぐに俺はマハリトの城に跳んだ。


 玉座の間に現れたら、ちゃんとスカラム宰相とカフラン軍務卿に出迎えられた。何だか二人とも昨日より疲れている感じがする。


「陛下。おはようございます」「おはようございます」


「ふたりとも、おはよう。

 二人ともかなり疲れてるみたいだけど、大丈夫かな?」


「いえ、これしき」「大丈夫です」


「大事な時だから。

 これ。元気が出るよ」


 俺はそう言って、ちょっといいスタミナポーションを二人に手渡した。


「ぐーっとやっちゃって」


 俺に言われるまま、二人はスタミナポーションの蓋を開けて飲み干した。


「こ、これは!?」「体中のコリや疲れが吹き飛んでしまいました」


「効いたでしょう。

 ここ一番でできることを精一杯することは大事なことなので、無茶をするなとは言いませんが、体を壊さないでください。

 これから、忙しい日が続くでしょうから、今のポーションで元気を取り戻してください」


 そう言って、俺は玉座のある床から一段下がった下々の者の床の上にスタミナポーション50本入りの箱を20箱を積み上げておいた。


「あ、ありがとうございます」


 宰相の合図で玉座の間にいた兵隊たちが手分けしてその箱を運び出していった。有効利用してくれればいい。


「陛下。ご報告することがありますので、会議室に参りましょう」


 宰相たちの後について玉座の間の後ろにあった扉の先にあった会議室に入った。


 会議室では一番奥の一段高くなったところに大きな椅子が置いてあり、そこに座るよう言われたので、俺はエラそうにその椅子に座った。


 オストランでもここマハリトの城でも玉座の座り心地は悪かったが、この椅子は座り心地が良かった。


「さっそくですが、都の状況です。

 ミルワ軍が撤退したことを知った住人たちが少しずつ都に戻ってきました。

 ミルワ軍はこの城を囲むため必要最小限の破壊を行なっただけで、マハリト内で略奪などは行われていませんでした」


「逃げ際も潔かったし、軍規はしっかりした軍だったんだ」


「わが国がかの国に攻め込まなければ」


「それは今さらだから、これからのことを考えましょう」


「はい。申し訳ありません。

 次は食料と住む場所についてです」

 倉庫の半分は無事でした。

 家をなくした者たちのために当面空の倉庫を開放することにしました。

 従いまして、ある程度の不便はあるでしょうが、飢え死にする者は出ないと思います。いえ、飢え死にする者は出しません」


 なかなかいい返事だな。昨日俺のやった準備は無駄になったようだが、それはそれでよかった。


「もし、食料とか住む場所が不足するようなら言ってください。何とかします。

 そうだ。負けて逃げ戻ってくる兵隊たちがこれから出てくるでしょうから、ヒールポーションを渡しておきます。

 この会議室だと狭いから、玉座の間に積んでおきます。

 いくらくらい必要か分からないから、取りあえず2000本ほど出しておくか。

 足りなくなったら言ってください」


「はい」


「あと何かありますか?」


「はい。陛下の土地のことですが、昨日午後、いきなり巨大な石があの土地の入り口に出現しました。

 わたしも見てきましたが、とても移動できそうな代物ではありませんでした」


「あっ!

 申し訳ない。アレはわたしが作った物なんです」


「は、そうだったのですか。

 召喚術であのような巨大な岩までも」


「召喚術じゃないんですけどね」


 邪魔なら取ってしまってもいいが、将来的にハリトと日本を繋ぐことになるかもしれないから、残しておいてもいいだろう。


「邪魔かもしれませんが、ガマンしてください」


「いえ、ガマンとかではありません」


「ならよかった。

 忘れるところだった。この国の国庫はどんな様子ですか?」


「申し訳ありません。現在は有力商人からの借金でやりくりしています」


 おいおい。空を通り越してたのか。これは参ったな。俺は借金地獄の赤字垂れ流し会社の社長に抜擢されたわけか。


「それで、借金の総額は?」


「わたしの聞いたところでは、金貨300万枚。今はもう少し増えていると思います」


 この国の規模がどの程度なのか分からないが300万枚は多いような気がする。


「スカラム宰相。今持っていたら金貨を1枚貸してもらえますか」


「は、はい」


 宰相が懐から小袋を出して、中から1枚金貨を取り出して俺に渡した。


 見たところ、オストランの金貨よりも小さい。おそらく、18金で20グラムくらいだろう。


 いったんアイテムボックスの中に収納した俺はコピーを作って、オリジナルを宰相に帰しておいた。


 金貨300万枚となると20グラム×300万=6千万グラム=60トン。


 比重を20として3立法メートル。量としては大したことはなさそうだが、この城でも床が抜けるな。大型戦車の重さだもんな。


「わたしが金貨300万枚何とかします。

 かなり重くなるので底の抜けないところに置かないといけないんですが、どこかいいところがありますか?」


「金貨300万枚もの大金を陛下が?」


「そのつもりです」


「は、はい。済みません。城の宝物庫なら重さに十分耐えるものと思います」


「今からでも場所を教えてもらえますか?」


「はい」


 スカラム宰相とカフラン軍務卿に案内されて、城の中の廊下を歩いていき、階段を一度下りてさらに進んだ先に宝物庫があった。


「ここが宝物庫です」


 そう言ってスカラム宰相が扉を押し開けた。カギはかかっていなかったようだ。


 扉の先は10メートル四方ほどの部屋で、鎧とか剣とか武具防具は置いてあったが、そのほかのもの、例えば宝石とか、指輪やネックレスといった高価な装身具のようなものは何もなかった。


「前王が目ぼしいものはあらかた売り飛ばし、わずかに残っていた宝物も城から逃げ出す際に持ち出したようです」


 前王は清々しいほどの人物だったようだ。


「分かりました。金貨が沢山あると鍵をかけないわけにはいかないのでよろしくお願いします。

 今わたしは金貨の持ち合わせがないので、ちょっと作ってきます。

 10分ほどここで待っていてもらえますか?」


「は、はい」


 二人を残して俺はZダンジョンのコアルームに跳んだ。


 コアに、先ほどコピーしたハリトの金貨を見せて、


「これを新品にした感じの金貨を300万枚作って欲しいんだが、大丈夫だよな」


「はい。大丈夫です。まとめて床に置けばいいですか?」


「そうだなー。いつもの台だと小さすぎるから一度に置けないから、床の上でいい。

 25枚ずつ紙で包んで筒にしたものを縦横10個で金貨2500枚、それを上下2段で金貨金貨5000枚。それだけ入れた段ボール箱を600個作ってくれるか」


「了解しました。605箱でもいいですか?」


「もちろん構わないが」


「できました」


 俺の後ろに段ボール箱の小山ができていた。その段ボールの小山は下の段が10箱、1段上がるたびに一箱減って、10から1まで合計して全部で55箱。それを一組とした塊が11個くっ付いて並んでいるので箱は全部で605個。金貨にして302万5千枚。


「コア。サンキュウ」


 俺はコアに礼を言って宰相たちが待つ宝物庫に戻った。時間にして2分だからほとんど待たせてはいないだろう。


 カフラン軍務卿は宝物庫の鍵を取りに行ったそうで、宝物庫の中には宰相だけが残っていた。


「300万枚作ってきたので、なるべく早く借金は返してください」


 そう言って俺は広々とした宝物庫の床に金貨の詰まった段ボール箱605個をアイテムボックスに収納した時と同じ形で積んでおいた。






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