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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第48話 華ちゃん、恐いほど強い


 10匹ほどのゴブリンたちが奇声を張り上げこん棒を振り回して俺たちに向かってきた。


「任せてください。みんな伏せて。

 ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール」


 その場で一回りしつつ華ちゃんの手から、迫りくるゴブリンに向けてファイヤーボールが3発撃ちだされた。


 ファイヤーボールはそれぞれゴブリンに命中し、直撃を受けたゴブリンは四肢をバラバラにして吹き飛び、近くにいたゴブリンも爆風と最初のゴブリンのバラバラになった肢体の直撃を受けて絶命してしまった。思ったほどスピードのないファイヤーボールだったが威力はそれなりにあったようだ。


 それでも、被害を免れた3匹ほどが、回れ右して逃げていった。


 逃げていく3匹のゴブリンに対して華ちゃんは、


「ファイヤーアロー、ファイヤーアロー、ファイヤーアロー」


 3発のファイヤーアローは信じられないような高速で、それぞれ逃げ出したゴブリンの頭を撃ち抜いた。


 リサも子どもたちも半分口を開けて華ちゃんを見つめている。ちょっと怖い目に遭った上、優しそうなお姉さんに見えていた華ちゃんがとんでもなく強いお姉さんだったわけだ。子どもたちが華ちゃんを怖がってはマズいと思った俺は、


「華ちゃん、でかしたぞ。

 俺だと囲まれたら子どもたちを守り切れなかった。ありがとな」


 俺が華ちゃんを持ち上げることで、子どもたちも少しは安心したんじゃないか?


 とはいうものの、ファイヤーボールの爆発した周辺は半分砕けてバラバラになった四肢や妙な具合に四肢が折れ曲がったゴブリンの死体が転がっているし、ファイヤーアローに撃ち抜かれた3匹のゴブリンの頭部はどれも半分以上なくなっていた。ひとことで言って、見られたものではない。しかも、どこからともなくスエた臭いが漂ってきた。


「なんか臭くなったから撤収しよう。みんなシートから出て靴を履いてくれ。

 あとは俺が片付ける」



 俺はシートの上に置かれていたゴミも残った食べ物や飲み物と一緒に全部まとめてアイテムボックスに収納し、そのまま素材ボックスに移しておいた。これでゴミも無駄にはならない。まさにゼロエミッションだ。


 先ほどの騒ぎで、タートル号周辺にゴブリンがいなかったので、タートル号は健在だ。



「今度は腹ごなしにタートル号に乗ってドライブだ!」


 みんなが車に乗り込んだところでエンジンスタート。


 フロントガラスが何か得体のしれない液体で汚れていたのでウインドウォッシャーをかけてワイパーで拭った。よく見るとボンネットの上も謎の液体で汚れていた。


 そもそも最初はゴブリンをひき殺してやろうと思っていたんだからこれくらいどうってことないと思うより仕方がない。


「華ちゃん、ここから南にいけば神殿が持ってるダンジョンがあるんだろ?」


「聞いた話ではそうですが、わたし自身はいったことがないので、どこにあるのかは分かりません」


「見つかればラッキーってつもりで探してみるか」


「何人いるかは知りませんが、神殿兵が出入り口で見張っているって聞いてます」


「そんな連中、蹴散らしてしまえばいいだろ」


「殺してしまうんですか?」


「そういうこともあるかもしれないが、このタートル号でクラクションを鳴らしながら突っ込んでいけば逃げるんじゃないか?」


「そう言われればそうですね。

 馬車馬や街道を行き来する人がこの車を見ただけで怯えたくらいですから、クラクションを鳴らせば神殿兵も逃げると思います」


「みんなシートベルトを忘れるなよ」


 俺もシートベルトをしっかり締めて車を出した。目指すはダンジョンだ!


 現状南にダンジョンの出入り口があるということしか分かっていない。闇雲に南に向かったところで、木や草が繁っている荒れ地の中で探すのは簡単ではないことは承知だ。


 凸凹で車が大きく揺れるたびに子どもたちがはしゃぐので、ダンジョン探しもオフロードでのドライブだと思えばそれなりに楽しい。帰り道が分からなくなっても、車を収納して転移で屋敷に戻るだけなのでいたって気楽なものである。


 タートル号が藪を突っ切ったりすると、たまにゴブリンに出くわすことがあるが、そのゴブリンは驚いてすぐに逃げていく。


「ゴブリンによく出くわすが、どこかに巣でもあるのかな?」


「わたしではなんとも」と、華ちゃん。ラノベやアニメは見たことないという華ちゃんだし、こういった話題はNGだったようだ。


 そしたら、後ろの方から、


「ご主人さま、ゴブリンの巣を見つけたら、そこにいるゴブリンをみんなやっつけるんですか?」と、聞かれてしまった。


「ゴブリンと言えども皆殺しはかわいそうじゃないか?」などと、俺は思ってもいないことを口にしたところ、


「ゴブリンは人をさらって、殺して食べるし、放っておけばいくらでも増えるから、見つけたら必ず殺さなければいけないと奴隷商会で教わりました」と、リサ。


「そうなのか。ただ、俺も持ってる武器は棒だけだし、華ちゃんの魔術頼みになるからあまり無茶はできないぞ」


「ご主人さま、無茶をする必要ありません。ゴブリンの巣を見つけたらその場は放っておいて後で冒険者ギルドに報告しておけば、冒険者たちがゴブリンを退治してくれます」


「そうはいっても、ここら一帯は神殿の土地なんだろ?」


「そういった事情なら神殿もこの土地の中に入ることを許可すると思います」


「それもそうか。自分のところの兵隊を使うより安く済むものな」


 そんな話をしていたら、タートル号は少しひらけた場所に出た。


「岩永さん、向こうの方に神殿兵が立ってます」


 華ちゃんの言うように、正面100メートルほど先に神殿兵が6人ほど立っていた。ダンジョンの出入り口がどんなものか見たことがないので判断のしようはないが、兵隊たちの立っている辺りにダンジョンの出入り口があるに違いない。


「みんな耳を塞いでろよ。ちょっとばかしうるさくなるからな」


 俺は予定通りクラクションを鳴らしながら立ちならぶ神殿兵に向かってタートル号を走らせた。







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