第475話 日本町1
その週の防衛省の会議では防衛省側から、ゲート周辺の工事は順調で、日本側はいつでも開通できるということだった。
俺はオストラン国王が国賓として日本に向かう4月の第3日曜日に開通させる方向で話をしておいた。
直接防衛省には関係なかったが、はるかさんと後藤さんで進めていたニューワールド語の日本語テキストが完成したことを伝えている。これについてはエヴァの方で外務省に話をしており、既にオリジナルの原稿データを外務省に渡しているとのことだった。
外務省側から委託研究費の名目でイワナガ・コーポレーションに2千万円が支払われるそうだ。この2千万円は二人への臨時ボーナスだと思っていたら二人から学校の備品代として使ってほしいとの申し出があった。2千万円は個人にとっては大金だと思うが、彼女たちらしいのかもしれない。彼女たちが退職するとき、退職金として各々2千万払ってもいい。これについては俺では忘れてしまうのでエヴァに託しておいた。
会議が終わって華ちゃんと屋敷に帰った俺は、エヴァを見つけて、日本とオストランが繋がった後の日本町の開発について話し合った。
結論として、インフラとして必要なものは浄水設備と下水設備、道路と電力、信号線など。ガソリンスタンドに都市ガス用ガスタンク。オストラン側として必須なのはポーション診療所と宿泊施設。あと、日本の大使館。そんなところか。
業者に発注すれば足りない施設や、あった方がいい施設なども見えてくるだろうということで、大手設計事務所に日本町区画内の建築計画作成を発注したほうが良いだろう。ということになり、エヴァがさっそく業者に連絡を入れてくれ、明日イワナガ・コーポレーションに担当者が来ることになった。技術的な話になると俺やエヴァだけでは荷が重いのでアスカ2号にも話を聞いてもらうことにした。
こういった案件も今回の留学生たちが留学を終えてオストランに戻ってくれば担当してくれるのだろう。あと4、5年の辛抱だ。ほとんど何もしていない俺が辛抱とか言うのも変だったか。
翌日の午前中、某大手設計コンサルタント会社の担当者3名がイワナガ・コーポレーションの事務所に現れた。
会議室でお互い名刺を出して、それから大まかな説明をしておいた。
「了解しました。更地でそれだけの土地があるのでしたら素晴らしいものをご提示できます。お任せください」
「よろしくお願いします」
仮契約書にサインしたら、お茶も出さないうちに担当者3名は帰っていった。てきぱきしたところは好感が持てる。
そして1週間後。建築計画書を持った担当者が現れた。本契約書の内容は事前に送られているのでイワナガ・コーポレーションの契約法律事務所に事前に確認してもらって、契約の文言に問題のないことは確認している。
俺とエヴァとアスカ2号が話を聞いているのだが、アスカ2号が先方の担当者に要所で質問し、先方もそれに的確に答えていってくれた。
工期は1年。工事費の概算見積もりが設計料10パーセントを含め2500億とのことだった。支払いは着工費用として10パーセント。その後工事の進捗に合わせて数回に分けて払い込み、竣工後残りの金額を支払うことになる。
消費税について国税庁に問い合わせたところ、イワナガ・コーポレーションによるオストラン国内の工事は全て海外工事として扱うとの回答を得て非課税となったようだ。どこかから強い意思が働いた可能性があるが、ありがたいことである。
俺は総額さえわかれば満足だったし、問題があればアスカ2号が指摘してくれるだろう。
「これで、いいんじゃないかな。
エヴァはどう?」
「悪くないと思います」
「ありがとうございます」
「アスカ2号は?」
「問題ありません」
ということで、先方が用意した本契約書にサインした。
設計事務所が責任を持って施工業者を見つけてくれ、工事監督もしてくれる契約になっている。今回は山陰地方の施工業者を主に使うことになるが何とでもなるようだ。電気関係については、先日発電所を施工してくれた業者を使うよう指示したところ、最初からその業者を使う予定だったそうだ。それでもイワナガ・コーポレーションから指示されて施工業者として選定したと先方の窓口に伝えてくれるそうだ。これで先方の顔も立つだろう。
支払い等はうちの経理担当が適当にするのだろうが、2500億もの金はイワナガ・コーポレーションにはないので、俺の金で2500億円増資することになる。会社の方の手続きは会社の経理担当が良しなに取り計らってくれることになっている。俺の方の手続きというか俺の口座からイワナガ・コーポレーションの口座への現金の振り込みだけだがアスカ3号が行なうことになっている。
エヴァから聞いたが、俺の国賓訪問の際、日本政府が1兆円の貸し付けをしてくれる話があるようだ。その金は日本にあるオストラン政府の口座に振り込まれるので、オストラン政府の口座をメガバンク数行に作ったそうだ。
次の宮殿への出勤日に今回日本町の工事を発注したと、完成予想図を見せてブラウさんに説明しておいた。
「陛下が聖剣に選ばれたことは、オストランにとって奇跡のような幸運だったのですね」と、しみじみとした声でブラウさんが俺に向かって言った。同席中のローゼットさんも深くうなずいていた。
いろいろな意味で奇跡が重なったってことなんだろうな。
金額等についてはもちろん適当です。




