第468話 その日の午後
今日は朝から結構忙しかった。
ロイヤルアルバトロス号のブリッジに戻った俺は、アスカ2号にむかって、
「ドローンは撤収させてくれ」
「了解」
アスカ2号はすぐにドローン操縦用の席に座ってドローンを操作し始めた。
「マスター、ドローン1号機は1時間ほどで帰還します」
「了解」
ドローンのカメラが写す映像はモニターに映っているのだが、俺の転送やアイテムボックスの収納ではドローン自体をどうすることもできなかった。これは盲点だった。ドローンの自撮りができれば転送したり収納できるかもしれないが、そこまですることもないだろう。
そろそろ昼食の時間なので俺は屋敷の居間に戻っておとなしくしていることにした。
「アスカ2号、あとは頼んだ」
「はい」
ドローンのことはアスカ2号に任せて俺は屋敷の居間に戻った。
子どもたちは昼食の手伝いをしているようで居間には誰もいなかった。
このところコタツに電気を入れることもないしそろそろ居間のコタツからコタツ布団をとって座卓にしてしまった方が良さそうだ。
昼食の準備ができたとエヴァが迎えにきてくれたので、俺はYKZスーツの上着とネクタイだけをとって食堂に向かった。
「「いただきます」」
「岩永さん、派手なチョッキを着てどうしたんですか?」と、華ちゃんに聞かれた。
俺はゼンジロウ1号が銀座でYKZ仕様の衣装を一揃い買ってきたことを話し、ハリトを含めた向こうの世界ではYKZスーツも違和感がないかもしれないと思って、それを着ていたと話した。その話のあと今朝からの一連の出来ごとというか、俺のやったことを話しておいた。
「それで、土地を貰ったんですか?」
「4日後の午後に場所を教えてもらうため、また城に行くことになった」
「その土地を何に使うんですか?」
「ここも狭くなったから、ハリトの都に屋敷を構えてもいいかと思ったんだけど、屋敷を建てるのは当分先だな」
「一等地なのに遊ばせておくとマズくないですか?」
「確かに。妙な空き地があると周辺の家が地価が下がるとか言って騒ぎ出すかもしれないし。じゃあ断ってくるか?」
「さすがにそれは」
「今さらだしな。なにか土地の有効利用を考えよう。
みんな何かあるかな? その土地に新しく建てる建物はZダンジョン経由でつなげることは簡単だから、こことほとんど変わらなくなる」
「100メートル四方もあるなら大型の映画館はどうじゃろ? 文ちゃんを映画館で見たら迫力があると思うんじゃが?」
「アキナちゃん、映画館用のソフトは素人だと簡単に手に入らないだろうし、ロイヤルアルバトロス号の大画面で我慢してくれよ」
「そういえば、そうであったな」
「エレギルは今回貰うマハリトの土地について要望とかあるか? 他の要望でもいいけど」
「戦も岩永さんのおかげで起こらなくなったし、今のところ何もありません」
「そうか。何かあれば遠慮せずいつでもいいから言ってくれよ」
「はい」
「あそこはダンジョンの中だから、ゴーレムは使い放題だし、ゴーレムコマ発電機もその場に置いて使えるから、ある意味この屋敷より使い勝手がいいかもしれない。本当はZダンジョンならもっと自由に何でもできたがな。それを言ったら、土地も使い放題だったか。
そういう意味でもあのダンジョンのコアを見つけてダンジョンマスターになりたいところだよな。ダンジョン・コアのガーディアンを斃せる前提だけど。
そろそろコア探索を再開して、これから空いた時間はコア探索かな」
「そうですね」「はい。頑張ります」「いくのじゃ!」
そうは言ったものの、ロイヤルアルバトロス号は人が乗っていなくてもリモコンで操縦できるし、今ではドローンで2000キロ先まで様子を探れるようになったから、すんなりコアの近くまでたどり着けるような気がしないでもない。
この日の昼食後のデザートは島フルーツをふんだんに使ったフルーツパフェでイチゴだけはスライスした楽園イチゴだった。とにかく異次元のおいしさだった。いろいろなフルーツが入っていた関係で相当量があったが、食後だったのにかかわらずいくらでも食べられそうだった。
午後になって、俺はYKZスーツから普段着に着替えておいた。まず帰還してロイヤルアルバトロス号の上空を舞っていたドローンをアイテムボックスに回収した。そのあとアスカ2号を連れて、造船所やアスカ2号の倉庫兼作業所の並ぶ通路に跳んでいった。俺だけはその先にあるはずコミック倉庫をのぞいてみた。
アスカ3号が俺の要望通り注文してくれたコミックの入った段ボールの箱がだいぶ貯まっていたので収納しておいた。週末宮殿の空き部屋を探して陳列してやろう。錬金工房内にレシピがあるので本棚を作ることは簡単だが、アキナちゃんの船内図書館用にそろえたキャビネットのレシピもあるのでそっちを使おうと思う。
アキナちゃんが言うように本棚に本を並べるのは楽しいんだよな。残念だがいまのところ日本語が分かる者しか利用できないけれど、そのうちニューワールド用に権利を買ってニューワールド語のコミックを作ってもいいかもしれない。夢が膨らむ。俺の国と思うからこそだよな。王さまになったことで、ふつふつと俺の心の中にオストランを発展させたいという気持ちがわき上がっているものな。
ということは、ダンジョンマスターになってダンジョンを発展させようという思いは、ダンジョンマスターという職業の性というかそういった、全てのダンジョンマスターに共通する感情かと思っていたのだが、単に俺の性格だったのかもしれない。
確かにうちの子たちがそれぞれ自分の道を進んでいくのを見ていて俺自身ウキウキしてしまうし、できることはなんでもやってやりたい気持ちだし、何か成果が上がるたびすごくうれしいものな。
それはいいとして、結局1ヘクタールの土地はどうしよう? 一国の首都の一等地を畑にして野菜を植えるわけにはいかないし。




