第461話 召喚術師2、マハリト城
何となくコスプレ大会となったが、それなりにみんな楽しんでくれたようだ。これで明日マハリトにあったお城に乗り込んでいける。
今までの俺だったら、お城に乗り込むとなったら確実に尻込みしたのだろうが、あまりそういったことが怖いとか思わなくなっている。相手はしょせんただの王さま。コアを守るドラゴンに比べればどうってことはない。
翌朝。
朝食を終えて、俺たち一心同体の4人とエレギルは支度を整えて屋敷の玄関ホールに集合した。
「作戦は、お城の前でゴーレムを使ってのデモンストレーションで俺たちがゴーレム使いの召喚術師だと信じ込ませる。
そして、戦争のうわさを聞き、配下のゴーレムを使って戦を止めにやってきたと教えてやり、城の偉い人物に会わせろと門衛に告げる。
城の偉い人に会えたら再度デモンストレーションだ。これでいけると思うがどうだ?」
「相手がどう出るかは分からぬが、ゼンちゃんのことじゃからそれくらいの作戦で十分じゃろ」
「華ちゃんは、何かあるかな?」
「うーん。もしお城の偉い人に会えなかったらどうします?」
「その時はその時だが、戦争したくないなら俺たちの提案を受けるんじゃないか?」
「そうならいいけど」
「なーにハナちゃん、わらわもついておるのじゃ。心配は無用なのじゃ。
それに今回は筋を通しに行くだけじゃ。戦が未然に防がれた時、誰が戦を止めたのか明白になる。断られようがどうされようが戦を止めることには変わりはない。ゼンちゃん、そうじゃろ?」
「そうだな。
それじゃあ、直接あの城の入り口にあった木の橋の前に転移するからな」
「「はい」」「うん」
みんなが鉢巻を締め直してから、俺の右手のラシイ杖に手をかけたり左手を取ったところで、『転移』
城の門に続く橋の前に俺たち5人が現れた。さすがに門衛たちは俺たちの出現に気づいたようで、槍を構えて橋を渡って俺たちの方に向かってきた。
そこで俺は、右手の杖を大げさに振り上げて、
ハリト語で「出でよ、わがしもべたち!」
今度は振り上げた杖を振り下ろしつつ、日本語で「シキソクゼクウ!」と大声を上げて、身長3メートルのゴーレム1型の1号から3号を橋の前に立たせて門衛たちが橋を渡ってこられなくしてやった。
「門衛たちよ、わたしに向かって槍を構えるとは何事だ!
わたしは大召喚術師ゼンジーロ。そしてわたしの後ろにいるのはわたしの弟子たちである。わたしの名まえくらい聞いたことがあるであろう?」
しまったー。なんとなく偽名を使った方がいいと思ってとっさに偽名を使ってしまったが、そもそも和テイストでエキゾチック感を出そうとしてたんだった。本名だろうが何だろうがこの国が日本やオストランに関係してくることはまずない。ゼンジロウで良かった。それに、俺自身が偽名ゼンジーロを忘れてしまう可能性が多々ある。
そんな後悔とはうらはらに、俺の名乗りを聞いた門衛たちは槍をいったん下ろしてくれた。
「われらは戦のうわさを聞き、配下のゴーレムを使って戦を止めにやってきたのだ。この城のしかるべき人物に会わせていただきたい」
門衛たちは顔を見合わせている。通行人たちは立ち止まってこの寸劇を眺めている。観客は少しずつ増えてきている。
俺の言葉だけでは門衛たちも行動に移れないだろうから、メタルゴーレム1型を錬金工房で5体作って、意味深に杖を振り回し、日本語で、
「クウソクゼシキ!」と、大声を出した後、
最初のゴーレムの後ろにその5体を並べてやった。最初のゴーレムの素材は石に見えるが、メタルゴーレムは銀色の金属に見える。これはなかなか迫力がある。
「何をしている。早くこの城のお偉方を呼んで来い。おまえたちをどうこうするつもりはないが早くしないとゴーレムがまた増えるぞ!」
若干横柄だが、大召喚術師の大先生ならこんなものだろう。
門衛の一人が城の方に駆けだした。
ゴーレムたちは橋の手前でタダ立っているだけで戦うそぶりを見せていないので門衛たちも一歩引いた。
さらに俺は、アスカをも凌ぐ戦闘力を持つであろうメタル警備ゴーレムを1体作り、杖を振り回して、呪文を唱えた。
「ギャーテーギャーテーハラギャーテーハラソウギャーテーボジソワカ。カーツ!」
メタル警備ゴーレムはゴーレム1型の前、一番正面に立たせた。
「今一番前に出てきた小型のゴーレムは1体だけでも残りのゴーレムたちを圧倒する。
わたしは、こういったゴーレムをいくらでも呼び出せるのじゃ。なにせ大召喚術師だからな」
最後におまけで呵々大笑してやった。
「カーッ、カッカッカ」
杖を振り回している時一瞬華ちゃんの顔が見えたが、真っ赤だった。
われながらいい演技ができたと思ったのだが、ちょっと違ったか?
3分ほどそうやって城側の対応を待っていたら、さっき駆けていった門衛が少し立派な革鎧を着た兵隊を連れてきた。門衛の隊長なのだろうがせめて大臣クラスを呼んできてもらいたかった。
「わたしはこの城の警備隊長です。
召喚術師殿がわが国とミルワとの戦をゴーレムを用いて止めるとか」
「その通り。わたしが召喚するゴーレムにより戦を止めて御覧に入れよう。
わたしは誰に何を言われようが戦を止めるつもりであるが、いちおう筋を通すためこのような形でまかりこしたのだ」
「分かりました。
召喚術師殿、城にお入りください。
城内のしかるべき者が召喚術師殿のお話を詳しくお聞きします」
「あいわかった」
俺はメタル警備ゴーレム1体だけを残し、残りのゴーレムたちは全部アイテムボックスに収納した。
これにはゴーレムが現れた時以上に門衛たちを驚かせたようだ。もちろん隊長も驚いていた。
俺は隊長に案内されて橋を渡っていく。華ちゃんたちが俺の後に続いて、最後がメタル警備ゴーレムだ。今日はキリアのフレイムタンを俺が預かっているので、キリアは丸腰の状態だ。何かあればすぐにフレイムタンを渡すことはできるし、俺のラシイ杖も如意棒に持ち代えることは簡単だ。
俺たちは隊長に案内され橋を渡り門を潜り抜け城の中に入っていった。
城門の先は庭園のようになっていてさらにその先に石の階段があり階段を上った先が城だ。オストランの宮殿は館風の建物だが、ここは石で組まれたちゃんとした城だ。
隊長に玄関のようなところに通され、そこから先は文官?らしきおっさんに案内されて城の通路を歩いていき、会議室のようなところに通された。
部屋の中には貫禄のあるおっさんと、その子分ぽい男と女がいた。
「貴殿が召喚術師殿だな」
「召喚術師ゼンジーロです」
「わたしはハリト軍を預かる軍務卿のカフランだ。
ゼンジーロ殿、それにお供の方々も席についてくれたまえ」
おっさんの正面に俺が座り、俺の右に華ちゃんとキリア。左にアキナちゃんとエレギルが座った。メタル護衛ゴーレムは俺の斜め後ろに立っている。
一方、子分の男女は席に着かず扉の前に立っている。腰に細身の剣を下げているしおっさんの護衛なのかもしれない。その二人は俺たちを見つめて妙に緊張している。俺たちのイカすコスに見とれることはあっても、緊張することはないと思うが?
「わが国とミルワの戦いを止めて見せるという話であったが、具体的にはどうされるのかな?」
「わたしがゴーレムを召喚しミルワ軍を威嚇します。さすればミルワ軍は戦を諦めるはず」
「ミルワの陸兵は10万を超える。いかに召喚術師殿のゴーレムが強かろうがそのことはわが方を含め誰も知らない。ミルワ軍は多勢に無勢と侮り、戦を思いとどまることはないと思うが」
「ミルワ軍がわたしのゴーレムたちを恐れるかどうかはミルワ軍次第でしょうが、バカでなければ恐れるでしょう」
「そこまでおっしゃるのなら、その片鱗をわたしに見せていただきたいのだが、いかがかな?」
「それは望むところです」
「では、こちらにまいられよ」
そういってカフラン軍務卿が席を立ったので、俺たちも席を立ちその後についていった。護衛の二人はカフラン軍務卿のやや後ろを並んで歩いている。
軍務卿に連れていかれた先は、城の中庭のような場所で、芝生が張られているだけで、他には何もない広場だった。ところどころの芝生ははがれていた。




