第454話 ドローン2、ドローン発進
無事発電機の発注が終わった。発電機は据えつけ前の状態まで今週中に完成するそうで、来週の定例会議のあと、俺が据え付け作業技術者ともども発電所予定地に連れていくことになっている。回転軸の微調整など据え付け時に行なう必要があるので、メタルゴーレムコマは組み立て時に引き渡せばいいということだった。
アスカ2号が発電機の完成図面を発電機会社から取り寄せており、図面通り発電機設置場所に固定用ボルトを床に埋め込んでいる。もちろんこのボルトはコアに依頼して創ったものだ。従って、据え付け技術者は、土台をナットで固定して、その上に機械を組み立てていくだけでいいそうだ。また、機材の荷下ろしと据え付けには特別なクレーンを用意する必要はなく、車載クレーンで作業できるとのことだった。その代り車載クレーンが自由に動ける空間が必要とのことだった。もちろん発電所の空間は広さも高さも十分なので問題はない。
翌日。
ドローンが完成したとアスカ2号から報告を受けた。アスカ2号の倉庫兼作業場ででき上ったドローンは小型ではあるが形だけはアメリカ軍の無人攻撃機に似ていた。積んでいるのは飛行に必要な速度計や電波高度計などの計器の他、ビデオカメラと無線機と超高性能メタルゴーレムエンジン、そして頭脳となるゴーレムヘッドだけだ。ゴーレムヘッドはまさに頭脳そのものでロイヤルアルバトロス号の一見AIとスペック的には同じものなのだそうだ。
俺は作業台の上に乗ったドローンを収納してから、
「アスカ2号、これからロイヤルアルバトロス号をいったん収納するから、だれか中に入っていたら船外に出てもらうよう船内放送しておいてくれ。そのあと、一通り船内にだれもいないことを確認して俺に報告してくれ」
「はい」
アスカ2号が足場に取り付けた斜面を上って、ロイヤルアルバトロス号に入っていった。
間を置かずアスカ2号が船内放送する声が響いてきた。
『マスターがロイヤルアルバトロス号を収納します。船内にいる方は速やかに退船願います』
これがもう一度流れて、2分ほどしてアスカ2号が戻ってきた。
「船内に誰もいないことを確認しました」
「ご苦労。
収納」
以前コピーしたロイヤルアルバトロス号を素材ボックスに移し、今収納したロイヤルアルバトロス号を複製ボックスに入れて、新たにコピーを作っておいた。ドローンもコピーを作っておいた。
「アスカ2号、転移するから俺の手を取ってくれ」
俺はアスカ2号を連れてロイヤルアルバトロス号を海に浮かべるため果物島の海岸に跳び、岸から500メートルほど離れた位置にロイヤルアルバトロス号を排出した。
ドックの中で浮かんでいても、それはそれでいいが、やはり船は海の上だな。
ロイヤルアルバトロス号のブリッジにアスカ2号を連れて転移して、ブリッジ後方のテラスに出た。
直ぐにメタルゴーレムオルカとメタルゴーレムドラゴンを展開してロイヤルアルバトロス号の護衛に当たらせた。
ロイヤルアルバトロス号の右舷船側に全長15メートルのレールが沿うように要所を金具で固定されて取り付けられている。レールの基部の設置場所はテラスの最後端になっていて、使用時にはレールの留め具を外して、基部を軸にレールを90度水平に回転させ、そこで仰角を10度ほどとる。
レールの後端、基部の先に別途用意したU字型の架台を取り付けて、U字の上にドローン胴体を挟むようにして左右の主翼を乗せて固定する形だ。架台に乗って力のかかる主翼の部分は強化されているということだった。また、架台の後端にはフックの取り付け用の穴が空いており、そこにレール基部から出ているワイヤーのフックをかけておく。
ドローン発進時にプロペラが全速で回転し、そのあと架台がリリースされ架台ごとドローンはレール上を移動していく。架台がレールの先端に達すると、ドローンを固定していた固定金具が外れる仕組みになっている。架台はドローンが飛び出したスピードのままレールから外れて海に落ちるが、後端にワイヤーロープを取り付けているのでワイヤーロープを巻き取ることでレールがクレーンの役目をして吊り上げ回収するようになっている。
ドローンには着陸関係の仕組みは一切搭載されていないので、俺が空中のドローンをアイテムボックスに収納することでその代りにする。
アイテムボックスに収納したドローンはそのままの速度を保っているので、次回の発進は、上空に排出することで行なう。
「コントロールなしで発進した場合、ドローンはロイヤルアルバトロス号上空500メートルを旋回するようプログラムされています」
ということで、ドローンはロイヤルアルバトロス号の上空を旋回し待機することになる。
アスカ2号がレールの準備を終えたところで、アイテムボックスからテラスの上に超高性能ゴーレムコマエンジン搭載型ドローンを排出して、アスカ2号と二人がかりで主翼を持って架台の上にセットした。ドローンは軽いのだが、船側から体を乗り出さないとセットできないので結構面倒だった。
この作業は一人だとまず無理だな。
架台への据え付けが終わったところで、
「マスター、試験飛行開始します」
「うん」
「ドローン1号機、エンジン起動!」
アスカ2号の声と同時にドローン1号機の後部の推進式プロペラが回り始めた。
「ドローン1号機、エンジン最高回転」
プロペラが猛烈な勢いで回転し。後方に立っている俺たちに向かって相当強い風が吹き始めた。
「発進!」
アスカ2号がその強風に逆らってプロペラに近づいて、レール基部に付いていたレバーを捻った。
その瞬間ドローンを乗せた架台を固定していた金具が外れて、ドローンがU字型の架台ごとレールの上を走っていき、そのまま空の上に駆け上がっていった。架台はレールの先端から外れて放り出され、後ろに付いたワイヤーを連れて海に落ちていった。
すぐにワイヤーは巻かれて、架台が吊り上げられた。レールを元の位置に戻しながらアスカ2号が架台を回収して、レール自身は元の位置に固定された。
ドローン自体はそのまま空に駆け上がっていきロイヤルアルバトロス号の上空で旋回している。ドラゴンたちの高度よりよほど高い位置だ。
「アスカ2号、ドローンの操作はどうするんだ?」
「ブリッジからモニターを見ながら操作することになります」
「そんなモニターあったっけ?」
「昨夜取り付けました」
なるほど、出来立てだったか。
ブリッジの後方に壁に向かってモニターが3つ並んでその前に机と椅子が置いてあった。真ん中のモニターが偵察用カメラがとらえた映像。左のモニターにはドローン前方が映し出されている。表示を切り替えることで、ドローンの左右上下も映し出すことができる。そして右のモニターは速度、高度などの数字が表示されている。
机の上にはマイクが1つ置いてあり、その他には前後左右に倒せる棒状のコントローラーが1本とパイロットランプが何個か付いているだけだった。コントローラーは偵察カメラを操作する
ためのものだそうだ。
「マスター、速度試験を行ないます」
「やってくれ」
アスカ2号がドローン1号機に向かって指示を出していく。
「ドローン1号機、高度5000まで上昇し水平飛行せよ」
右下のモニターに表示されている高度の数字がどんどん大きくなっていく。5分弱でその数字が止まった。戦闘機じゃないから、上昇力の試験は意味ないか。
「ドローン1号機、最高速度で水平飛行」
今度は速度計の数字が変わり始めた。と言っても上昇中の速度が450キロ近くあったのでそれほど数字は変わらなかった。それでも結局時速510キロあたりで数字が落ち着いた。
「次は、上昇限度試験を行ないます。
ドローン1号機、旋回しつつ限界まで上昇せよ」
再度、高度を示す数字が上がり始め、6分ほどで高度1万を超え、それから4分ほどで12000を記録した。その後数字がふらつき始め、結局12000メートルが上昇限度のようだった。そんな高空に上がる必要はないので、これで十分だ。
まずは果物島の偵察だ。
「所定の性能を実現したようだから、高度3000くらいまで下りてその高度で果物島の周囲を一周してくれ」
「はい」
「ドローン1号機、高度3000まで降下して、水平飛行。島の岸に沿って上空を一周せよ」
「アスカ2号、偵察用カメラを操作して島の全景が見えないか?」
「やってみます」
モニターに果物島の全景が映った。形は縦長のほぼ楕円形だった。
真ん中のモニターに偵察用カメラがとらえた果物島の海岸線が映し出された。結構きれいな映像だ。
速度は今のところ時速300キロ。
島の形が分かったいま、ドローンのカメラで捉えた目標に対して、俺が転移を発動できるかが一番知りたかったことだ。
もし転移できれば転送ももちろんできる。ドローンは偵察機ではあるが、爆弾をピンポイントで転送すれば攻撃機に早変わりだ。
ということで、ドローンの偵察用カメラが捉えた海岸線をもうすこし大写しにしてもらい、その位置をしっかり頭に描いて俺は転移を試みた。
再掲:
超高性能ゴーレムコマエンジン搭載型
全長:1.5メートル
翼幅:2.4メートル
重量:45キログラム
ペイロード:35キログラム
機体の性能
最高速度:時速500キロメートル(高度5000メートル)
制限速度:時速800キロメートル(高度3000メートル以下)
巡航速度:失速速度+アルファ~時速500キロメートル
失速速度:時速60キロメートル(過荷重時)
航続距離:-
上昇限度:12000メートル
推進式4翅プロペラ(直径60センチ)
14センチ超高性能ゴーレムコマエンジン=100馬力
ハードポイント5カ所(主翼4カ所、胴体1カ所)




