第453話 週末と週明け会議、発電機発注
ロイヤルアルバトロス号がドック入りした翌朝にはドローンの発進用レールの取り付けが完了したとアスカ2号に伝えられた。試験飛行したいところだがドローンが完成していない以上何もできない。
いったんエレギルの住んでいたディオスの港辺りに跳んで、そこから沖に向かってロイヤルアルバトロス号を転送してやろうかと思ったが、止めておいた。現在、本当の意味での池の上に浮いているロイヤルアルバトロス号だが、船内機能は問題なく使えているので、このままでよしとしておこう。
何もすることがないので、屋敷の中、マンションの中、ロイヤルアルバトロス号の中を用事もなく歩いてしまった。それも飽きてきたのでフィットネスジムに行ってひと汗流すことにした。ロイヤルアルバトロス号の俺の部屋で前回総合スーパーで見繕ったスポーツTシャツとトレーニングパンツに着替えジム用のトレーニングシューズを履いて準備完了だ。
前回同様ベルトの上で走る機械の勾配を5度、速度は時速20キロにセットして、今度は30分走ることにした。
タッタッタッタッタッ。軽い足音が響く。
今回は気合の入った格好をしていたせいか、前回よりも格段に走りやすい。そのせいか、あまり負荷を感じなかった。
それでも20分辺りから額に汗をかき始めたので、スポーツタオルを取り出して額を拭きながら30分間走りとおした。当たり前だが走行距離は10キロだった。計算が楽でいいな。
時間になるとランニングマシンのベルトはゆっくり停止して、勾配も元に戻った。
走り終わったらすぐに汗も引いたので、またまたベンチプレスに挑戦することにした。確か前回は130キロ40回だったので、今回は150キロ20回に挑戦だ。
シャフトにプレートをはめていき、150キロのバーベルを用意してベンチに寝転がって持ち上げる。
おっと、これはかなり重たいぞ。
とはいえ、普通に持ち上がったので、回数を数えながら上げ下げしていった。
……、18、19、20。
よし。さすがは150キロ。20回の上げ下げだけで、筋肉がパンパンになった。バーベルを金具の上に戻して終了だ。
俺が思うに、こういったトレーニングをするよりダンジョンでそれなりのモンスターを斃して自分自身の強化を目指す方が効率がいいのではなかろうか? モンスターを斃せば実益にもつながるわけだし。ダンジョンブートキャンプとか銘打っていって、スポーツ選手を集めてツアーを組んだら喜ばれそうだ。
ジムでひと汗だけ流した俺は、タオルで汗を軽く拭いただけで普段着に着替えて待機場所の屋敷の居間に歩いていった。
翌日。
後藤さんのPCが組み上がったとアスカ3号から報告を受けた。はるかさんの部屋に置いている後藤さんの机の上に置いてセットアップすれば完了だそうだ。
ニューワールド語の学習用日本語テキストブックの製作も順調のようでもうすぐ校正が終わるとはるかさんが言っていた。テキストブックの分量はそれほど厚いものではない。外務省用にコピーしたものを200部も渡しておけばいいだろう。
翌日。宮殿への出勤日。
オストラン神殿でローゼットさんを拾い、宮殿の執務室に跳んだ。護衛はアスカ1号だ。
書類仕事が終わり、休憩中のローゼットさんとの雑談で、双眼鏡1000個全て軍務大臣経由で軍に引き渡したところ、陸海軍で双眼鏡の取り合いになっているという話と、島バナナがことのほか好評だったと聞かされた。ニーズがあるということはそれなりに嬉しいものなので、双眼鏡はもう1000個、島バナナは房の連なりを4つ用意してやった。あと、インスタントの飲み物類も好評ということだったので、そちらも数箱追加しておいた。
そして週が開けて防衛省との定例会議。
その日俺は、華ちゃんの他、エヴァとアスカ2号を連れて会議室に跳んでいった。この会議のあと、イワナガ・コーポレーションの社長として発電機メーカーと打ち合わせをするためで、アスカ2号はその時メーカーと詳細打ち合わせをするためだ。
本来エヴァは当事者ではないので防衛省との会議に参加させることは、はばかられるのだろうが、この日の会議に外務省から世良事務官がやってくるという話だったので、引き続きオストラン側の外交窓口をエヴァが担当することを伝えておこうと思い、防衛省側の了解を得た上会議に参加させた。アスカ2号はおまけで了承を得ている。
会議室に4人揃って現れたのだが、珍しく驚かれた。どうもアスカ2号が出席者の目を引いたようだ。それはそうだろう。おそらく川村局長以下日本側出席者は全員、あのアニメのことは知っているだろうからな。だからと言って、こちらは実写版だし、超高性能美少女ゴーレムと打ち明ける必要はない。超高性能ゴーレムも秘密だからな。
あいさつのとき、アスカ2号には岩永アニカと名乗らせておいた。ここで俺のネーミングセンスがきらりと光った。ハズだ。ちなみにアスカ1号はアイカ、3号はアミカにするつもりだ。つもりはつもりなのできっと忘れてしまうだろう。
防衛省側から、まず、俺の親父の土地を買収完了した話と、コンクリート風目印前まで道路の基礎工事を進めているとのことで道路工事は3月いっぱいで完了する見込みだそうだ。
次に外務省の世良事務官から、視察団のオストランで日程を無事終えたことの礼を言われた後、正式に国賓としてオストラン国王を日本に招きたいとの要請があった。それに対し、俺は了承したうえ、オストラン側の交渉窓口というか外交窓口をエヴァにすることを伝えておいた。これまでも互いに連絡を取り合っているようなので齟齬はないだろう。
俺の方は特に話すことはなかったので、ポーションとフィギュアゴーレムを卸して会議はそれで終了した。
その後、俺たちは野辺次長に案内されて発電機メーカーとの打ち合わせのため別室に移動した。
野辺次長の紹介で、名刺の交換をした。エヴァは最初から名刺を用意している。俺とアスカ2号と華ちゃんの名刺はアスカ3号に昨夜作らせた。俺の名刺は、
『オストラン王国公認
イワナガ・コーポレーション
会長 岩永善次郎』
電話番号も何も入っていない。連絡がきても困るからな。
アスカ2号の名刺は、
『オストラン王国公認
イワナガ・コーポレーション、技術担当部長』にしておいた。電話番号とメールアドレスは会社のものだ。
華ちゃんの肩書は『オストラン王国、王室顧問』としておいた。なんだか一番偉そうな名刺ができ上った。
名刺交換の後、俺が大まかに、
「ダンジョン内で出力12万5千kWで稼働できる発電機を発注したいんです。
原動機をなす直径3メートル級フィギュアゴーレムコマはこちらで提供します。
いちおう発注元はイワナガ・コーポレーションという会社ですが、オストラン王国が国として発注したものとお考えになって結構です」
「了解しました。
発電機の設計はできていますし、部品なども揃っていますから受注後5日で納入可能です。価格もダンジョン協会さまに納入させていただいたものと同じで結構です」
「契約にはそれなりの書類が必要なのでしょうから、その辺はこの岩永エヴァと詰めてください」
「よろしくお願いします」
「かしこまりました」
「もし、技術的なことで何かあるようでしたら、この岩永アニカから問い合わせなどを行ないます」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
こういった大型の発電機はダンジョン内で精密に組み立てる必要があるそうなので、でき上ったら俺が一式取りに行き、設置技術者ともども発電所予定場所に運ぶつもりだ。発電所は、ゲートの先に作った100メートル四方の広間の隣りに建設しようと思っている。仮称オストラン第1発電所だ。
打ち合わせを終えた俺たちは、打ち合わせが終わったことを野辺次長に告げて部屋を出た。発電機メーカーの人は防衛省の人に連れられてエレベーター方向に歩いていき俺たちはそこで屋敷に帰った。屋敷に帰った俺はその足でコアルームに跳んで、オストラン第1発電所を予定した場所に空洞をコアに作らせた。その際、床は確実に水平にしておくように念を押したところ、斜めにする方が面倒だと言われてしまった。そうかもしれない。
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D関連局の局長室で、野辺次長が川村局長に向かい、
「イワナガ・コーポレーションという会社を調べてみたんですが、会長が岩永さんで、社長が岩永エヴァさん、資本金は今のところ100億。今年の1月に設立された会社でした。
オストラン王国の発展のために本気に取り組んでいるということでしょう」
「岩永さんがその気になったということは、その会社、今後伸びていくんだろうな。もし上場するようなことがあれば、全財産はたいても買いだな」
「残念ですが、上場はしないんじゃないですか? なにせ岩永さん、資金調達不要ですから」
「確かに」




