第452話 ロイヤルアルバトロス号、リモコン
日本の視察団を送り帰した翌日。
ロイヤルアルバトロス号のリモコン操縦装置が完成したとアスカ2号から報告を受けた。
さっそく俺はアスカ2号を連れて、造船所脇に設えたというリモコンルームにやってきた。
部屋の正面には大型モニターが1つ。その左右にやや小ぶりのモニターが1つずつ。大型モニターの下にはロイヤルアルバトロス号のブリッジに並んでいるレーダーや音響測深機などの小型モニターが並びその前には操作卓と呼べる金属製の机が置いてあった。操作卓の上にはマイクが1つとたくさんのスイッチとパイロットランプが並んでいた。
そして、操作卓にはどう見てもゲーミングチェアが置かれていた。リクライニング機能も付いている。
「中央の大型モニターには前方、左右のモニターには側方の状況を映しています。大型モニターは切り替えることで後方を映すことも可能です。切り替えは口頭でも操作卓上のスイッチでも可能です。
その他の操縦方法はこれまで通りマイクに向かって口頭で行なってください」
「よし。それじゃあ、いってみるか」
俺は椅子に腰を下ろし、マイクに向かって、
「RA号、出発準備!」
『出発準備は完了しています』
錨を下ろしていたわけではなかったし、スクリューを使って位置を変えないよう指示していたので、いつでも出発できたんだった。
「アスカ2号、コアを目指していた時の航路に戻りたいんだけど、できるかな?」
「ロイヤルアルバトロス号は航路を記憶していますから大丈夫です。そのようにロイヤルアルバトロス号に命じてください」
ということは、陸地に到着するまでピョンちゃんに頼らなくていいってことだな。
「了解。
RA号、コアを目指していた時の航路に戻り、直進してくれ。速度は30ノットだ」
『了解』
モニターに映る景色が左にゆっくり流れていった。速度は徐々に上がっていき30ノットになった。陸地の近くには多くの船が航行しているのがレーダーのスクリーンに映っている。エレギルのいた町もモニターに映っている。エレギルのいた国の都に行ってみてもいいかもしれない。駐屯地の隊長さんには好感が持てた。あの人物のような者ばかりだとは考えられないが、悪い国ではないような気はする。
特にロイヤルアルバトロス号に指示を出すことなく1時間ほど操縦席に座っていたのだが、その間にアスカ2号がリモコンルームの隣りの給湯室でお茶を用意してくれて持ってきてくれた。ちょっと偉くなった感じがした。
陸地まで30キロ。左手前方にも港があるらしくレーダーで見ると今まで以上の多くの船がその辺りを航行していた。
その港がエレギルの国の都かどうかは分からないが、ちょっと立ち寄ってみてもいいかもしれない。ロイヤルアルバトロス号であまり近づくと警戒されるはずなのでこの辺りで停船しておこう。
「RA号、この辺りで停船して、流されないよう適当に調整してくれ」
『了解』
いずれドローン用のレールをロイヤルアルバトロス号に取り付けるためにドック入りの必要がある。陸地からロイヤルアルバトロス号をドックに転移させる必要があるが、陸地に近づくのが難しい。何かいい手はないか?
そうだ! 使い捨ての小舟を作ってそれに乗り込んでロイヤルアルバトロス号をドックに転送してやればなんとかなりそうだ。小舟は俺一人乗れればいいだけなので大したものは必要ない。発泡スチロールの厚板で十分だ。俺の造形力でも問題なくできる。
転送ならロイヤルアルバトロス号に人が乗っていても、人ごと転送できるから今からでも試してやるか。
「アスカ2号。これからロイヤルアルバトロス号をドックに転送するから、俺はロイヤルアルバトロス号に行ってくる。
アスカ2号はここで待っていてくれ」
「はい」
アスカ2号を残して俺はロイヤルアルバトロス号のブリッジに跳びそこでメタルゴーレムドラゴンとメタルゴーレムオルカに集合するようマイクで命令した。
ブリッジの後ろに着船したメタルゴーレムドラゴンをまずアイテムボックスに収納して、それから船首に回って海面に頭を出していた3頭のメタルゴーレムオルカを収納した。
「発泡スチロールの厚板だ」
俺はアイテムボックスの中で発泡スチロールの塊を探し出し錬金工房の中でコピーした上拡大してやった。でき上った発泡スチロール筏は3メートル四方で厚さは60センチ。
俺は筏をロイヤルアルバトロス号から10メートルほど離れた海面に排出して、その真ん中に転移した。あまり揺れることなく乗ることができたので、ロイヤルアルバトロス号をそこから造船所のドックに転送してやった。そのあと俺も造船所に転移した。
作業を終えた時、気付いたのだが、ドックからロイヤルアルバトロス号を海に戻すときどうするか全く考えていなかった。先ほどの発泡スチロール筏はどうなっているか分からないし、俺が岸辺から海を眺めて転送するしかない。となると、エレギルの住んでいたディオスとかいう港町か、ずーと戻って果物島になる。
果物島に戻ったところで、どうってことはないが、貧乏性の俺はちょっと損した気持ちになるんだよな。
「マスター、お疲れさまです。ドローン用のレールの取り付けが終わればお知らせします」
「頼むな。そういえばドローンの方はどうなっている?」
「超高性能ゴーレムコマエンジンは完成していますし、機体の製造も順調です。
あと5日で完成し試験飛行可能になる予定です」
偵察用ドローンのカメラで捉えた地点にロイヤルアルバトロス号を転送できればいいのだが、地点と言っても海の上だし、無理のような気がするな。できたら儲けものということにしておこう。
海の上はおそらく無理だろうが、陸地なら可能性は高そうだ。どこか無人の岸辺を見つけてそこに転移できれば、そこから見える範囲の沖合に簡単にロイヤルアルバトロス号を転送できる。
超高性能ゴーレムのアスカもコピーできたことだし、自分のスキルを信じてもいいかもしれない。
その日の昼食時、ロイヤルアルバトロス号はドック入りしているとみんなに伝えておいた。もちろん船内諸施設は利用可能だと伝えている。
その日の午後は久しぶりにゼンジロウ1号をアイテムボックスから取り出した。日本へ行く時の準備だ。いくら高級品でもカジュアルで宮中に招かれるわけにはいかないからな。
「ゼンジロウ1号。ここに100万あるからこの金を持って、銀座辺りの仕立て屋に行ってフォーマルスーツを仕立ててこい。でき上ったらマンションに送るように言ってな」
「はい、マスター」
われながら適当な命令ではあるが、俺の直近の知識以外ゼンジロウ1号は持っているはずなので俺の命令は理解できたはずだ。スーツの採寸なんぞ面倒なことは嫌だし、ゼンジロウ1号の性能試験としては十分だろう。
もし道に迷って帰ってこられなくなって警察に保護されたら大問題だが、そんなことになれば、これから先の重大な任務を任せられないので、ゼンジロウ1号は廃棄して新たに超高性能ゴーレム、ゼンジロウ2号をコアに創らせることになる。それはさすがに忍びないので、今回の任務の成功を祈るばかりだ。
俺と見分けがつかないはずのゼンジロウ1号を近くで見ると、俺自身がなんとなくわびしくなるのだが。
しかし、この感覚の方が普通ではないだろうか? 自分そっくりな姿を見て、ますます自信を持つようでは完全なナルシストだからな。
ゼンジロウ1号を送り出して5時間。俺は夕食を終えて居間のコタツで寛いでいたらゼンジロウ1号が無事生還した。
「任務は完遂しました」
「ご苦労」
そう言って俺はゼンジロウ1号をアイテムボックスに収納した。華ちゃんたちは入浴中だったしアキナちゃんたちは大型モニターで映画を見ると言ってロイヤルアルバトロス号に行ったところだったので、幸い居間の中には俺しかいなかった。




