第451話 日本視察団帰国
アスカたちに飛行機型の偵察用ドローンの製作を頼み、派生して超高性能ゴーレムコマを作ってしまった。できたものはできたもの。オストラン王国の発展に寄与するよう使っていこう。要所に超高性能ゴーレムコマ発電機を置けば送電網が不要になるから一気に王国の発展が見込める。
日本町用に発電機メーカーをイワナガ・コーポレーションに呼んで、発電機を発注してみるか。ダンジョン協会がゴーレム発電機の製造を発注した会社の担当者を紹介してもらおう。
善は急げ! ということで、D関連局の野辺次長にメールしてみたところ、防衛省から次週の会議終了後先方を紹介するとの返信があった。俺では難しいことは分からないので、次週の会議にはうちの担当者を連れていくとメールしておいた。うちの担当者はもちろんアスカ2号だ。
翌日。
この日は日本からの視察団を日本に送り返す日だ。視察団の帰国予定時刻は午後3時。送り返す場所は連れて来た時と同じ防衛省の会議室。
2時50分に玉座の間に跳んでいって玉座に座り、そこでありがたいお言葉を視察団にかけたあと、玉座から立ち上がって視察団の近くまでいき荷物を収納してから視察団を送り返す。という段取りなのだが、何も俺が付いていく必要はないことに気づいてしまった。荷物も視察団も転送してしまえばいいだけだ。
ということで、そのことを専用スマホでD関連局の野辺次長にメールしておいた。すぐに了解した旨、折り返しでメールが返ってきた。
さて、肝心の俺の今回の衣装だが、マントは止めて余所行きの服装に例のダイヤモンドを盛大にちりばめたプラチナネックレスを首から下げるだけにした。姿見で確認したところ結構いい線いってるような気がした。
俺の余所行きは当たり前だがカジュアルなので、フォーマルっぽい高級スーツを仕立てた方がいいかもしれない。日本に招かれたらゼンジロウ1号に着せるのだ。それで幾分様になるだろう。
宮中の晩餐会などの正式な席にはもちろんプラチナダイヤモンドのネックレスだ。そんな感じでネックレスを露出させておくと、ネックレスに由緒が付いてついでにプレミアム価値が付くかもしれない。どこかに秘宝館を作ってオストラン王国の国宝として飾っておけば観光資源になるだろう。ついでにあのマントも秘宝館に飾ってやろ。もっとチープにしたものをお土産にしてもいいからな。
午後に入り、俺は余所行きを着て、ピカピカに磨いた黒の革靴を履き、プラチナダイヤモンドのネックレスを首にかけ準備万端整ったところで玉座の間に転移した。
今回は護衛のためアスカ1号を連れている。世の中は広いわけで、オリジナルにそっくりな実写版がいてもいいだろうと開き直ったからだ。そのアスカ1号だが、着ているものはワ〇クマンで揃えた真っ黒なダンジョンスーツZだ。革鎧はちょっとチープだったので着けさせていない。ラシイと言えばラシイのだが、ラシクないと言えばラシクない。
素手だと何のために控えているのか分からないので今回はアイテムボックスの中に入っていた鞘の立派なそれラシイ長剣を持たせてやった。剣帯はなかったのでコアに創らせた。キリアと素手で互角以上のアスカ1号なので、剣を使ってもそこそこ動けると思うが、素手の方が強そうだ。
「陛下。ありがとうございます」
玉座の間に現れた俺に向かってすでに控えていたブラウさんはじめ各大臣や高級官僚たちが頭を下げた。
「みなさん、ご苦労さまでした」
そうひとこと言って俺は玉座に座った。玉座の後ろにはローゼットさんとアスカ1号が控えている。
儀典官が、
「まもなく日本国視察団の方が参られます」
と、告げた。しばらくして、
「日本国視察団、ご入室!」
玉座の正面の扉が開かれた。俺はちゃんと背筋を伸ばして視察団の面々が玉座の間に入ってくるのを待った。
視察団の4人と、係の者に運ばれて彼らの荷物が玉座の間に入ってきた。
「日本国視察団団長閣下、前にお進みになり、陛下にごあいさつをどうぞ」
視察団団長が一歩前に進み出て、
「オストラン国王陛下、並びにご担当の方々のおかげをもちまして、無事オストランでの務めを果たすことができました。
まことにありがとうございます」
そう言ったところで、頭を下げた。残りの3名も団長と同じく頭を下げた。
俺はそれで、あいさつは終わったと思い、視察団に一言かけようとしたら、
「これから、オストラン王国と日本国の友好関係を築き上げていき正式な国交樹立に向けて、邁進していく所存です。……」
そのあと5分ほど団長の演説が続いてしまった。止めろと言えるわけはないので真面目な顔をするのも王さまの仕事と思って俺はいたって神妙な顔をして玉座に座っていた。
「みなさん、ご苦労でした。日本に帰られたら、わが国と日本の友好のため尽力されることを期待します」
とだけ、言っておいた。
「それじゃあ、みなさんを送り返します。
今回は、転送でみなさんを送り返しますから、みんなで手を繋いでください」
男同士で手をつなぎたくはないだろうが、ガマンしてくれ。
みんなが手をつないだところで、サービスで秒読みしてやった。
「3、2、1、転送!」
4人が玉座の間から消えた。
次に俺は、扉の横に置いてあった4つの大型スーツケースを一つずつ転送した。見た目は一瞬だったと思う。
目の前から視察団4人が一瞬で消えてしまったことに、玉座の間にいたブラウさん以下の大臣高官たちが驚いていた。
「陛下、今のようなこともおできになるんですね。もしかして成王の試合でもその気になれば対戦相手をどこかに飛ばすことも可能だったのでは?」
「もちろん可能でしたが、それだと試合で勝ったと分かりにくいかと思ったもので。
視認するのが手っ取り早いんですが、目で見なくても知覚さえできればどんな物でも、わたしの知っているところに飛ばすことができます」
「なんと」
俺とブラウさんの会話にさらに部屋にいた連中が動揺してしまったようだ。
そうだろうな。俺がその気になれば物理的になんでも、誰でも消せるってことだからな。恐怖政治を敷くつもりはないし、ほとんど宮殿にはいないんだから怖がらなくっていいんだよ。
そのうち島バナナの差し入れでもしてやればいいかもな。というか今日差し入れしてやろう。
「玉座の間で報告するようなことではないかもしれませんが、
2日前、日本町予定区画の隅に、巨大な建造物が忽然と現れたとの報告がありました。わたしも現地に出向き確認したところ、灰色の石でできた横幅20メートル、高さ8メートル、奥行き5メートルの建造物でした。何者が何の目的でそんなものを作ったのかは今のところ判明していません」
「あっ! ブラウさんに知らせておくの忘れてた。アレはダンジョンの入り口の目印で、日本へ直通するゲートにするつもりのものなんです」
「そうだったんですか。安心しました。
調査は中止します」
「申し訳ない」
今日の仕事は終わったので、俺は重くて邪魔なネックレスを収納して、ローゼットさんとアスカ1号を連れて執務室に戻った。
そこで、
「さっき玉座の間でみんなを驚かしてしまったようだから、ちょっと機嫌を取るため島バナナをお土産に置いておきます。
まだ青いから、何日か置いて黄色くなったところから宮殿の連中に配ってやってください」
そう言って、島バナナの房が重なり合った塊を二つ俺の机の上に置いておいた。俺の机は結構大きいのだが、バナナの塊二つで机の上はいっぱいになってしまった。少し黄色いところもあって、甘い匂いが漂い始めた。
「一本いっとく?」とか、言って、すこし黄色くなったバナナを房から一本ちぎってローゼットさんに渡し、俺も一本房からちぎって、こんな感じで皮をむくんだ。とか言いながらあっという間に食べてしまった。
ローゼットさんも俺のマネをして皮をむいて一齧りした。
「甘くて、おいしい。こんな果物は初めてです」
「それは良かった。役得でいくら食べてもらってもいいけど、すぐお腹いっぱいになるからね。
それじゃあ、わたしはそろそろ失礼します。
おっと、もう一つ用事があったのを思い出した」
「何でしょうか?」
「オストラン陸海軍用に双眼鏡を注文していたのが届いたので、置いておこうと思うんだ。
この前の電気製品の部屋に置いておけばいいかな?」
「はい。それではご一緒します」
ローゼットさんと連れだって、倉庫にしている部屋に向かった。アスカ1号が後から護衛としてついてくる。
「じゃあ、1000個ほど置いておくから、両軍に適当に配ってくれるかい?
これも足りなければ、いくらでも補給できるから」
「はい。
陛下ありがとうございました」
「それじゃあ」
俺はそこから直接アスカ1号を連れて屋敷に帰った。
屋敷に帰ったら俺のスマホにD関連局の野辺次長から、無事視察団が帰国したむねメールが届いていた。




