第450話 ドローン1、超高性能ゴーレムコマ
その日、注文していたオストラン軍用の双眼鏡がやってきた。
アスカ3号に手渡された箱から中身を取り出したら、飾り気が全くなくいたってシンプル。そして頑丈そうだった。
こういうのでいいんだよ。こういうので。
これならオストラン陸海軍で使用しても問題なさそうだ。
俺が何も言わずに双眼鏡を手にしていた関係で、アスカ3号がそのまま控えていた。
そうだ。
「アスカ3号、アスカ2号を見つけてここに連れてきてくれるか?」
「はい。マスター」
5分ほどで、アスカ3号が2号を連れて帰ってきた。
「アスカ2号と3号で協力して、偵察用にドローンを作ってくれないか?
ダンジョン内限定だから、メタルゴーレムコマを動力とすればいいと思う。
要件は今のところビデオカメラを積んで、画像をモニターで確認できればいいだけだ。いわば偵察用ドローンだな」
「ダンジョン内限定ですがメタルゴーレムコマを動力源にするなら航続距離は無限ですから、電波を送受信できる距離が活動限界となります。前もってプログラムすることで半自律的に行動させることは可能と思います。
形状的にはどういった物にしますか?」
「普通のドローンで」
アスカ2号は俺の言葉を聞き流して、
「飛行機型にもできますしマルチローターのヘリコプター型にもできます」
「飛行機型もできるんだ」
「はい。飛行機型は高速移動できますが空中で静止できません。ヘリコプター型は低速ですが空中で静止できます。
さらに飛行機型の場合発進にはそれほど距離は必要ではありませんがそれでもある程度の距離を必要とします。着陸にはそれ相応の距離を必要とします。ヘリコプター型の場合発着に距離は必要ありません」
「なるほど。着陸時には俺が空中のドローンを収容してやればいいだけだから距離は必要ないな。飛行機型を作ってもらうとするか。一種の軍用だし」
「はい。
コントロールはモニターを見ながらの口頭指示でよろしいですか?」
「ロイヤルアルバトロス号と同じだな。それで頼む。使用するのは大空洞の中だから、コントロール用の機器はブリッジに据え付けてくれ」
「はい。ドローン発進用にレールをしようと思いますが、レールはブリッジ後方のテラスに設置してよろしいですか?」
「メタルゴーレムドラゴンの離着船に邪魔にならないようにな」
「はい」
「そういえばアスカ2号、ロイヤルアルバトロス号のリモートコントロールの方はどんな感じだ?」
「明後日完成予定です。コントロールルームは造船所の脇に設置済みです。コントロールルームの隣りには給湯室も準備しています」
アスカたちは実に気が利く。
「それも楽しみだな」
「はい」
「それでは、アスカ2号、アスカ3号。頼んだ」
「はい」「はい、マスター」
「そういえば、マスター」と、アスカ2号。
「なんだ?」
「エンジンとするメタルゴーレムコマですが、
コアに超高性能ゴーレムコマを作らせればどうでしょう?」
「うん?」
「わたしたち同様、ダンジョンの外でも稼働できると思います」
「おっ! 確かに」
「ダンジョンポイント的には高コストかもしれませんが、1つ作ればマスターがそれをコピーするだけですから」
「お前たちとちがって、フィギュア化して銀色になってもいいしな」
「おそらくフィギュア化した場合強力にはなるでしょうが、ダンジョンの外では動かないと思います」
「そういうのがあるのか?」
「Zダンジョンのコアにはフィギュア化のノウハウがないので、その辺りの整合性を持った超高性能ゴーレムは作れないはずです」
「なるほど。よく分かった。とりあえず、超高性能ゴーレムコマをコアに創らせておくよ」
「はい」
アスカたちに仕事を頼んだ俺は、さっそくコアルームに跳んで、超高性能ゴーレムコマを創ってもらった。
アスカ1号を創った時と同じく2時間かかると言われたので、いったん屋敷に帰った。昼食を食べ終えたらもう一度コアルームに跳んででき上がった超高性能ゴーレムコマを受け取ってこよう。
昼食を食べて、今日の昼のデザートの島パパイヤを食べた。
全部の種類の島フルーツの毒見は終わっている。俺が台所の隅で毒見していたら、知らぬ間にアキナちゃんが隣に立っていた。包丁を使っていた時なので、横に立つ前は危ないから声をかけてくれよな。
で、結局二人で毒見をしてしまった。毒見の最中リサは買い物に出かけて台所にはいなかったせいで、二人でかなりの量毒見してしまった。このままだと、その後の食事が食べられなくなってはマズいので最後にヒールポーションを飲んでおいた。もちろん毒見した後の後片付けもちゃんとしている。ただ台所の中にはフルーツの甘酸っぱい香りが充満してしまった。おそらく台所から食堂、そして玄関ホールまでにおいがたちこめたかもしれない。俺とアキナちゃんは揃ってマンションの方に退避しておいた。10分くらいで匂いは消えただろ。
島パパイヤは種を取って皮をむき一口大に切りそろえているのでフルーツフォークで簡単に食べられる。赤に近いようなオレンジ色の実をフルーツフォークに突き刺して口に運ぶ。リサによると匂いにやや癖があったので、レモン汁を霧吹きでかけたそうだ。その関係でレモンの酸味のある香りがわずかにしたが、癖がある匂いなるものは実感できなかった。
口に入れて咀嚼すると、これもわずかな酸味がアクセントとなり強烈な甘みをさらに引き立てる。まさに絶妙のハーモニーを奏でている。これはクラシック音楽で言うとさながら、ビバルデの四季の春だか夏だな。知らんけど。
「なにこれ! こんな甘いフルーツ初めて!」
後藤さんが感動の声を上げた。テレビショッピングの視聴者の喜びの声を思い出してしまった。そういえば後藤さんは島フルーツを初めて食べたんだった。俺たちはキウイやパパイア、マンゴーではないが、パパイヤとくれば、夕食の後のデザートはマンゴーだろうな。
デザートを食べて少し休んでからコアルームに跳んだら、台座の上にコマが乗っていた。
「コア、サンキュウ」
「はい」
コマの見た目は直径20センチのこれまでのゴーレムコアと同じなのだが、見た目が全く違っていた。超高性能ゴーレムコマは水色で半透明なのだ。
いったん手に持ったままコアルームの上に立て、「超高性能ゴーレムコマ、回れ!」と、命じたら、すごい勢いで回り始めた。20センチのメタルゴーレムコマをアイテムボックスから取り出して超高性能ゴーレムコマのそばで回したところ、超高性能ゴーレムコマの方がメタルゴーレムコマより明らかに高速回転している。こいつは凄いぞ。
「コア、この二つのコマだけど、超高性能ゴーレムコマはメタルゴーレムコマと比べてどんな感じだ?」
「超高性能ゴーレムコマはメタルゴーレムコマと比べ機械馬力として5倍になるようにしています」
ウホー! メチャクチャじゃん。
確か20センチのメタルゴーレムコマの機械出力は40kWだったから、超高性能ゴーレムコマは200kWということか。馬力にするには1.36倍だったはずだから約270馬力か。こんなのドローンに積んだらエグイのができそうだ。
さっそく俺はアイテムボックスに収納してコピーしてみた。アスカを増やした時と同じで、全く精神的負荷はなかった。ダンジョンのこれからの発展を考えると、これ自家消費だけに限定してアスカ同様量産は封印した方が良さそうだ。
俺はあとでこの超高性能ゴーレムコマで直径14センチのものをアスカ2号に渡しておいた。馬力が強すぎるとドローンを大型化した上、周辺の部材を強化する必要があるそうで、せいぜい100馬力程度に抑えるようアスカ2号に頼まれたからである。
翌日、アスカ2号が2種類のドローンの簡単な図面を俺のところに持ってきて、それぞれのスペック等を説明してくれた。それで、まずは超高性能ゴーレムコマエンジン搭載型を作るよう指示しておいた。
超高性能ゴーレムコマエンジン搭載型
全長:1.5メートル
翼幅:2.4メートル
重量:45キログラム
ペイロード:35キログラム
機体の性能
最高速度:時速500キロメートル(高度5000メートル)
制限速度:時速800キロメートル(高度3000メートル以下)
巡航速度:失速速度+アルファ~時速500キロメートル
失速速度:時速60キロメートル(過荷重時)
航続距離:-
上昇限度:12000メートル
推進式4翅プロペラ(直径60センチ)
14センチ超高性能ゴーレムコマエンジン=100馬力
ハードポイント5カ所(主翼4カ所、胴体1カ所)
君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。(1984年)/中原めいこ
https://www.youtube.com/watch?v=1Qzpr5ZTVJw




