第449話 後藤真由美4、歓迎会
今日の歓迎会は11人であの焼き肉屋の個室を予約している。後藤さんはあの系列の店に入ったことがあるかもしれないが、エレギルは初めてだからきっと喜ぶだろう。
歓迎会は午後6時からなので、3時過ぎには俺は風呂に入った。俺から順に子どもたち、そして後藤さんを含めた華ちゃんたち。
後藤さんもいるし、せっかくなので、ロイヤルアルバトロス号の風呂に入った。
風呂から俺のやったあの現場は視界には入るのだが、もちろん水蒸気雲も流れてしまっているし現場から50キロも離れているのでかすんでしまって全然見えない。
俺は風呂から出てロイヤルアルバトロス号のキャビンの居間のソファーで風呂から上がった子どもたちと一緒に、大画面モニターに映るアニメを見ながら寛いでいたのだが、そこに風呂に入るためやってきたはるかさんと後藤さんが現れた。
「あっ!」
いちど大画面モニターの前で立ち尽くした後藤さんの言葉はそれだけだった。そして、笑顔のはるかさんに引っ張られるように連れられて下のデッキに下りていった。
はるかさんたちがいったん立ち止まった後ろの大画面モニターではアニメのキャラクターたちが戦闘を繰り返しておりその対比が実にシュールだった。
見た目は全然違うが雰囲気的にアキナちゃんそっくりな少女がそのアニメの主人公で、彼女は魔法を使う部隊の指揮官として部下たちとともに空を飛び回り、圧倒的な機動で敵兵を斃したりしていた。彼女たちの使う小銃も魔法で強化された感じで大砲ほどの威力があり弾が当たればたいていのものがふっとんでしまう。その主人公がたまに少女らしからぬニッ笑いをする。アキナちゃんのニマニマとは違うが実に意味深でなぜか好感が持てる。
その後華ちゃんとリサがやってきてモニター前を横切って下に下りていった。その後ろのモニターでは町が盛大に吹っ飛んでいた。
2話ほどそのアニメを見たところで、華ちゃんたちが帰ってきた。視聴会はそこでお開きになり、子どもたちは着替えのために屋敷の方に帰っていった。
「すごかったー」「主人公のター〇ャ。カッコよかったねー」「おもしろかったー」
「わらわが選んだだけのことはある迫力の映像とストーリーじゃったのじゃ。あと2話でお終いなのじゃ。次は映画版を見るのじゃがそれでお終いになってしまうのじゃ。第2期は製作中とかネットに出ておった。待ち遠しいのじゃ。
それはそうと、わらわも空が飛びたくなったのじゃ!」
「アキナちゃん、華ちゃんだって空は飛べないみたいだからそれは相当難しいんじゃないか?」
「メタルゴーレムドラゴンの背中に乗ったらどうじゃろ?」
「アキナちゃん。俺もそれは考えたことがあるんだが、あの飛び方を見ていると、乗っているとかなり上下に揺れると思うぞ。翼を下げると胴体は上に動くし、翼を上げると胴体は下に動くからな。それでもいいなら、ドラゴンに乗れるよう鞍と手綱とシートベルトを用意してやるが」
「ならばドラゴンの騎乗は遠慮するのじゃ」
思い止まってくれたようで何より。
「ドラゴンは諦めたのじゃが、最近はやりのドローンを大きくしてそれに乗り込むのはどうじゃろ?」
まだ諦めていなかったようだ。
「空を飛ぶものは船と違って落っこちればそれでお終いだからな。ドローンも乗ってる人も。俺なら転移で逃げ出せるかもしれないが、俺以外だとかなり危険だぞ」
「うーむ。仕方ないのじゃ」
やっと思いとどまってくれたようだ。人は乗らないにしても、ドローンは空中偵察なんかに役立ちそうだものな。ドラゴンにカメラを取り付けても似たようなことはできるかも知れないが、ドラゴンではまず見た目が派手で目立つし、あの跳び方では視界がぶれてカメラに何か意味のあるものが写るとはとても思えないからな。
ドローン程度ゴーレムコマを組み込んでしまえば簡単にできそうだ。アスカ2号に機械部分を、3号に制御部分を作らせてみるか。
6時10分前に全員が余所行きを着て玄関ホールに集合した。
「それじゃあみんな俺の手を取ってくれ」
人数が多いのでみんな俺の回りに集まって半身になって手を伸ばし俺の両腕を適当に摘まむわけだ。団子になったこの状態で転移しても不思議と人目を引かないのだろう。
「転移!」
いつも通り商業ビルの近くに転移したが、周囲を見渡したところ予想通り人目を引いていないようだ。まさに謎だ。俺自身既に謎の存在なので今さらではある。
さっそくビルの中に入って入り口近くのエレベーターに乗りレストラン街のある階に。ここのエレベーターは扉の反対側がガラス張りで外の景色が見えるので、エレベーターが上昇するところを実感できる。エレギルは何も言わず外の景色を眺めていた。
目的の階にエレベーターが到着したところでエレギルに声をかけて全員エレベーターから降りた。途中のレストランを眺めながら、目的の焼き肉屋に入り名まえを告げて個室に案内された。
今日の部屋は10人定員だったが、一つ椅子を入れてもらっている。
いつものように成人=飲酒組はひと固まりだ。
エヴァ 華ちゃん エレギル リサ はるかさん
後藤さん
オリヴィア キリア イオナ アキナちゃん 俺
飲酒組は生ビール。未成年組はジュース類を注文し、飲み物が揃ったところで、
「後藤さんが新しくわれわれの仲間に加わったことを歓迎して、乾杯!」
「「かんぱーい」」
「それと、エレギルもうちにきたわけだから、エレギルにも乾杯!」
「「かんぱーい!」」
その日はダンジョン牛を中心に後藤さんも含めて、みんなお腹をさするほどまで焼肉を堪能した。
そして締めにヒールポーションをみんなに配っておいた。
「これは?」と、後藤さんが渡されたポーション瓶を手に持って、ポーションを渡した俺に聞いてきた。
「ヒールポーションといって、何にでも効く薬です。いまは胃腸薬の代わりと思ってください」
何というか、いかにも胡散臭いセールストークなのだが事実なので仕方がない。
俺と後藤さんとのやり取りを聞いて、はるかさんと華ちゃんが笑っていた。
エレギルと後藤さんは初めてのことだったので何となく飲むのをためらっていたが、周りがポーションを飲むのを見て意を決してポーションを飲んだ。
「あっ!」
二人は、ポーションを飲んで間を置かず、お腹の調子が落ち着いたことでかなり驚いていた。今回は普通のヒールポーションだったが、エレギルと後藤さんには明日それなりに高級なヒールポーションを飲ませておこう。
翌朝の朝食時。
みんな揃ったところで、
「それじゃあ、いただきます」
「「いただきます」」
さすが、後藤さん。遅れることなく唱和できた。
今日の朝食は洋食でテーブルの上には、目玉焼きにベーコンとフライドポテト。トマトとベビーコーンの乗ったレタスのサラダ。コーンスープにクロワッサンと丸パン。飲み物はいつもと同じ。
テーブルの席順は、
リサ エヴァ はるかさん エレギル 華ちゃん
アキナちゃん
オリヴィア キリア 後藤さん イオナ 俺
朝食後、俺は忘れずにエレギルと後藤さんに高級なヒールポーションを渡した。
「これを飲めば体に悪いところがあったとしてもほぼ完全に治るはずです。
体の部位の欠損、例えば歯の治療で歯を削って詰め物をしてたりしたら、歯が元に戻って詰め物がとれてしまいます。視力が衰えていた場合も元通りになります」
今の説明ではエレギルには意味が分からない部分があったと思うが、昨日のこともあり、二人はすぐに受け取った高級ヒールポーションを飲み干した。二人とも体が一瞬発光するといった、高級ポーション特有のイフェクトがなかったところを見ると体に特別悪いところはなかったようだ。
「二人とも、特に体に異常はなかったようです」
「でも何だか、視力が上がったような。わたし視力が0.8くらいなので矯正していなかったんですが、今だと1.5はありそう」と、後藤さん。
「それは良かった」
「わたしは、胸とか肩の辺り、それと首筋が少しスッキリしたような」と、エレギル。
エレギルの場合は、ため込んでいた緊張がほぐれたんだろう。
「それも良かった」
「都市伝説で、公立病院にはどんな病気にも効くという水薬があるという話が出回っているんですが、いくら分析しても成分が水なのでまねができないし、水だと薬として認可などできないから闇で処方されるんだとか。
まさか、この水薬?」
「そういった都市伝説があることは知りませんでしたが、おおむねあってるかも」
「マユミちゃん、ゼンちゃんは大錬金術師なのじゃ」
「錬金術師って、鋼の?」
「鋼? そっちではのうて、ゼンちゃんは薬を主に作っておる。おそらくこのニューワールドでゼンちゃんの右に出るものはおるまい。ゼンちゃんにかかれば先ほどのヒールポーションを作ることなど、チョチョイのチョイなのじゃ」
「岩永さん、何もないところから物を出したり、テレポーテーション?も使えるし、そして今度は錬金術師。アスカさんを創ったダンジョンマスター。もうないですよね?」
「ひゃっひゃっひゃ。まだあるかもしれぬのじゃ」
「真由美、善次郎さんにはまだあるのよ」
後藤さんがイオナ越しに俺の顔を見るのだが、うちに来た以上隠し事をしていても仕方ないので、
「ここは日本にも名まえが知られているニューワールドのオストランって国なんですけど、実はわたし、ここの国王やってるんです」
「えっ?」
朝食の後片付けが終わったと、エヴァが後藤さんを手続きのためイワナガ・コーポレーションに連れていった。そのとき後藤さんは何か小声でブツブツ言っていたそうだ。
幼〇戦記、第2期が待ち遠しいんですけどー。




