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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第447話 秘密2。宮殿。会議と秘密


 アキナちゃんは俺と話した後、自分も朝食の手伝いをすると言って居間から出ていった。


 今日は王宮への出勤日なので、朝食を食べて一休みしたら着替えて跳んでいかなくてはならない。


 10分ほどして朝食の準備ができたとエヴァが知らせに来てくれた。



 食堂に行くと俺のほか、華ちゃんとはるかさんがまだだったが、すぐにみんな揃った。


 今日の朝食は純日本風の定食だった。


 鮭の切り身、だし巻き卵、切り干し大根、白菜の漬物、油揚げの味噌汁、海苔、ほうれんそうのお浸し、それに納豆だ。


 今日はエレギルの前にも箸が置いてあった。今日から箸を特訓するんだな。


「「いただきます」」


 きれいにみんな揃って『いただきます』ができた。


 今日はきっといいことがある予感がする。さっき海賊団の本拠地を吹っ飛ばしたのがいいことかもしれないが、もっと何かいいことがあるような?


 そんなことを考えながらネギと大根おろしを入れて醤油をかけて納豆を混ぜていたら、アキナちゃんが俺の顔を見て笑っていた。読まれてしまったようだ。俺はその程度のことは全く気にならないが、気になる人間もいるだろうな。特にやましいことを考えている人間は人に心を読まれたくないはずだ。裏を返せば俺はアキナちゃんに心を読まれたところでノーダメージ。俺は春を愛する心清き人なのだ!


 さっきまで笑い顔だったアキナちゃんの顔を見ると、今度は目を細めて、朝食を食べる手を止めて俺を見ていた。


 さっき秘密を打ち明けられていなかったらアキナちゃんの表情に対して単純に機嫌がいいんだな、くらいにしか思わなかったろうが、こうなってしまうと、ちょっと恥ずかしいぞ。この『ちょっと恥ずかしい』ということも99パーセントの網の中に取り込まれていると考えるとなにも考えられなくなった。とか、考えてしまった。


 そして、とうとうアキナちゃんが声を出して笑いだした。


「アハハハ。ゼンちゃん、気にしない、気にしない、気にしない」


 俺たちの会話を聞いていた他の連中が、アキナちゃんが何を言っているのか分からず気にし始めて食事の手を止めてしまった。


「みんなも、気にしない、気にしない」


 何だかわからないままみんな食事を再開した。


 エレギルの手先を見たら結構ちゃんと箸を持って、しかもちゃんと動かしている。昨日のうちに特訓したらしいな。いいことだ。


 ……。


 何といっても温かい真っ白のご飯が最高だよな。今日も朝から腹いっぱいになってしまった。



 朝食を終えて一息入れた俺は余所行よそいきに着替えて、オストラン神殿に跳びローゼットさんを拾ってから宮殿に跳んだ。ブラウさんはいつも俺より1時間早いようだ。俺がする方がいいような仕事もブラウさんがこなしている可能性が無きにしも非ず。それを確かめると罪悪感が生れてしまうので敢えて聞かないという戦略を採っている。


 この日はハンコ仕事しかなかったのだが、明後日の午後、日本からの視察団が帰国するので、お言葉をお願いしますとわざわざ執務室までやってきたブラウさんに念を押されてしまった。さすがの俺もそのことは覚えていたが、任せてください。とは言えなかった。



 宮殿での昼食時。ローゼットさんに、


「軍用に双眼鏡を注文したんですよ」


「双眼鏡ですか。なんとなくわかりますが、どういった物なのですか?」


「これは電池が要るので、オストランでは向かないと思い、今注文してる双眼鏡は電池を使わないものにしています」


 そう言って俺はローゼットさんに俺の双眼鏡を渡した。


「ここからだと近すぎて使えませんが、遠くの見たい物の方に太い方を向けて、細い方に付いている2つ丸を目に当ててそこからのぞくと、大きくはっきり見えるんですよ」


「なるほど。軍の指揮官は重宝しそうですね」


「そのつもりなんですけどね。

 来週までには手に入ると思うので、その時、1000個くらい持ってきます。倉庫代わりの部屋をまた用意しておいてください」


「はい」


「この前の文房具とか在庫は大丈夫ですか?」


「はい。大丈夫です」


「なくなる前に早めに言ってください。とはいえ、もう数年もすれば普通に街で購入できるようになるはずです」


「待ち遠しいです」


「一日も早くそういうふうになるよう頑張っていきましょう」


「そうですね」



 その日の宮殿へのご出勤はそういった感じで終わった。




 そして週の明けの防衛省での会議。


 防衛省側から、日本とニューワールドを結ぶゲートの位置の提示があった。見れば俺の親父の持っている山の中で、第28ピラミッド=ダンジョンに近く、ダンジョン用に整備された自動車道路に接続する計画のようだった。


「うちの田舎町のことを考慮していただいたようでありがとうございます」


「どこにゲートができるかは、神さましか分からないわけですから」


「そうでした」


 もっと都会に近い場所にゲートができればいいと思う政治家や官僚が大勢いるだろうが、勝手にできたものはしかたないものな。それがたまたま俺の親父の持つ山だっただけだ。


 さすがはD関連局だ。


 とはいえあまりいい気になって派手なことをしていると足をすくわれる可能性もある。まあD関連局のトップの二人が左遷されるようなことがあれば、俺と日本国との関係が微妙になる程度のことは関係者なら理解できるだろうから、おそらくそういったことは起こらないだろう。


 あの二人がもしそういった感じで左遷されて退職したりしたらイワナガ・コーポレーションで雇ってもいいし。


「ダンジョンのゆらぎの目印として、コンクリートぽいそれらしいものを用意しておきます。大きさはそうですねー、ピラミッド代わりに横幅で20メートル、高さで7、8メートル、奥行き5メートルくらいのコンクリート風の目印を山に半分埋まる形で作っておきます。ゆらぎはその目印の表側に作っておきます。作業が完了したら野辺さんにメールします」


「よろしくお願いします」


 俺の方はダレン南ダンジョン大空洞の話はしなかったし、ダンジョン内で『人間ひと』を見つけたことも話さなかった。海賊を質量兵器で殲滅したなどもってのほかだ。


 ああ、こうやって秘密が増えていくんだなー。と、思い、ハッとなってしまった。


 エレギルの日本国籍取得と俺の養子にすることは、まだ本人に了承を得ていなかったので今日は切り出さなかった。




四季の歌(芹洋子)

https://www.youtube.com/watch?v=ED7WncONk28

一休さん Theme Song

https://www.youtube.com/watch?v=dJh6ClXU8TI

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