第441話 エレギル9、支度
キリアがエレギルを連れてスーパーの衣料品売り場で買い物をしているあいだ、俺は何もすることがなかったので、約束のレジ近くにあった男物の靴下を物色していた。物色するだけで買うつもりは全くない。『見てるだけー』だ。この店の良いところは、店員の数が少ないので、客に近づいてきて物を勧めないところだな。これがデパートだと近づいてきて話しかけてくる。もちろん向こうも仕事だから俺も邪険には扱わないのだが、相手するのが面倒ではある。
30分ほどで、キリアがカゴに商品を入れエレギルを連れて帰ってきた。
「キリア、サンキュウ」
俺はキリアからカゴを受け取って精算し、二人を連れて階段の方に歩きながら商品を収納して2倍にしておいた。
「じゃあ、次はデパートに跳んでエレギルのお出かけ用の服を揃えよう」
「はい」「?」
階段の踊り場で、二人に俺の手を取らせて『転移』
転移で現れた先は隣街のデパートの脇の道で、道を挟んでデパートの反対側は駅のホームの先端だ。なので、電車が駅にやってくるし出ても行く。おまけに道路には自動車が走っている。
キリアは半分呆けてしまったエレギルの手をしっかり握って、左右に注意を払っている。
エレギルには分からないところが沢山あるだろうから帰ってから子どもたちに質問すればいいだろう。
デパートの表に回って入り口から中に入ろうとしたのだが、まだ開店まで15分ほどあった。
「しまったな」
文字通り閉まっていたことでの一言だったのだが、二人は無反応だった。
こういうこともある。
「ここで待っていても仕方ないから時間潰しにさっきの道の先にドーナツ屋があるからそこに行ってみるか?」
「はい」
エレギルはほとんど俺のかけた言葉には答えないが、そもそも何を言っているのかは分からないのだろう。これから慣れていってくれればいい。
来た道を引き返して、さらにその先を進んでいきデパートの裏手のドーナツ屋に3人で入った。
人は並んでいなかったので、まず3人分朝セットと告げ、俺はホットドッグにコーヒー、キリアは何だかふわふわっとしたケーキ?に紅茶。エレギルはキリアと一緒のものを頼んだ。
二人に席について先に食べていてくれと言って追加で俺は小ケースに並んでいたドーナッツ全部一つずつ注文しておいた。クレジットカードを使いたかったが使えないそうで、現金で支払った。
袋に入れられたお土産とセットメニューの乗ったトレイを持って二人の座った席の隣に座って俺も食べ始めた。
「これ、結構うまいな」
「それもおいしそうですね」と、キリア。
「全種類買っておいたから大丈夫だぞ」
「楽しみ」
俺とキリアの今の会話の意味も多分エレギルには分からないと思うが、じきにわかるだろう。
それでもエレギルはおいしそうにフワフワしたケーキを食べている。トゲトゲだらけのつらい思い出を忘れ去ることはできないだろうが、何度も何度も楽しい思い出で上書きして塗り固めていけば、やがてつらい思い出からトゲトゲが消えてなくなる。ハズだ。(あとがき)
その店で食べ終わったところで、ちょっと10時過ぎていた。
店を出てまたデパートの入り口に向かって歩きながらお土産をアイテムボックスにしまってコピーしておいた。これでいつでもいくらでもドーナツが食べられる。
「あのう、気になったんですが、空の上で明るく輝いているのが、太陽?」
「そう。あれが太陽だ」
日本語をインストールした関係で見たこともないはずの太陽という言葉の意味だけは理解していた結果本物をちょっと見ただけでアレが太陽だということが分かったようだ。キリアたち以上にエレギルには驚くところが沢山だろう。この近辺からではあまり星は見えないが、屋敷から夜空を見上がればまたビックリするはずだ。
「そして、俺たちが立っているこの地面は地球というものすごく大きな球だ。どれくらい大きいかというと、地面が平らに見えるくらい大きいんだ」
俺の説明で理解できたとは思えないが、これもやがてエレギルの常識になっていくだろう。
店の中に入り、今度はエレベータ―に乗った。
何となく3階あたりに婦人服売り場があったような気がしたので降りてみたら正解だった。クリスマスイブに3往復もしたおかげだ。
今となってはいい思い出だなー。今度の探索での昼食は北海道の弁当だな。いや、何だか自分で自分の傷口に塩を塗るような行為は止めておいた方がいいか。アキナちゃんに何を言われるか分からないしな。
ここはその場その場で支払いなので、俺も売り場についていった方がいいか。
いや待て。
キリアにもそれなりの金額を持たせて買い物の経験をさせた方がいいか。
ちょうどキリアはポーチを肩から掛けていたので、キリアに万札を30枚ほど渡して、
「キリア、そのお金で支払ってくれ。この階で買い物が終わるか、お金が足りなくなったら俺はこの辺りにいるから」
「はい、お父さん。
じゃあ、エレギル。一緒に行こう」
「はい」
二人して売り場の方に歩いていった。キリアなら人一人を守りながらでも、そこらの暴漢程度でどうなるわけもないから安心だ。キリアを連れてきたのは正解だった。これで、キリアが剣を持っていたら逆に心配だが今は当たり前だが素手だしな。
エレベーターの横で30分ほどぼーっとして立っていたら、キリアとエレギルが紙袋を一つずつ手に下げて戻ってきた。
「だいたい揃ったみたいかな?」
「スカート1枚と形の違うブラウスを2枚、それに上に着る少し薄手のものを買いました。あと、革靴も。これがお釣りです」
お釣りを受け取って
「紙袋は俺が」
二人から紙袋を受け取り、近くに人がいないことを幸いにすぐにアイテムボックスにしまってやった。
「一応こんなところでいいかな」
「いいんじゃないかな」
「昼までまだだいぶ時間があるけどどうしようか?
キリアはどこか行ってみたいところはあるか?」
「わたしは特にないけど。
エレギルはまだどこがどこだかわからないだろうし」
「それじゃあ、ここからマンションに歩いて帰るか? ゆっくり歩いても30分もかからないから」
「そうしましょう」
「エレギル。30分くらい歩くけど大丈夫か?」
「大丈夫です」
ちょうどそこに下りエレベーターがやってきたので、俺たちはすぐに乗り込んで1階に下りて、デパートを後にした。
チェンソ〇マン第7話のゲロチュウのあと第8話でマキマさんがデンジをなだめたセリフから。
このところ英会話の勉強してまして。
https://www.youtube.com/watch?v=Y-gpbZLF5sA&list=PLi3LKxFhe6nRFinOnU9XNfrmq1wUVyZCV&index=8




