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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第440話 エレギル8、一夜明けて


 俺が居間にいた関係で、起き出してきた子どもたちが出入り口から顔を出して、


「「お父さん、おはようございます」」


 そう言ってから台所の方に手伝いにいこうとしたところで、


「みんなおはよう。

 アキナちゃんと、エレギルがロイヤルアルバトロス号の居間にいるから」


「エレギル?」


「事情があって連れ帰ってきた。おいおい事情をみんなにも話すけど、おまえたちから本人に直接聞くようなことはするな」


「「はい」」


 4人の顔を見ると何となく察してくれたようだ。この子たちも孤児だったわけだしな。


 それから5分ほどで、朝食の準備ができたとキリアが知らせに来てくれた。


 俺が席について、5分ほどでエヴァとアキナちゃんがエレギルを連れて食堂にやってきた。食堂に入って来た時のエレギルはちゃんと前を向いていた。


「みんな待たせたようで、済まなかったのじゃ」


「大丈夫だ」


 今日は洋風の朝食だった。目玉焼きに焼いた厚切りのハム。ジャーマンポテトにコーンスープと野菜サラダ。それにバターロールだった。飲み物はセルフサービスでジュース、牛乳、コーヒー、紅茶。


 エレギルは昨日の夕食の時と同じ、俺の正面の席に座った。少し目元が赤くなっていたがこれは仕方ない。


「それじゃあ、いただきます」


「「いただきます」」「いただきます」


 エレギルはちょっとだけ遅れたがちゃんと『いただきます』が言えた。


「みんな、良く聞いてくれ。

 昨夜、いろいろあって、エレギルがここで暮らすことになった」


 それ以上の説明をしなかったことで、大人たちも何となく理由を察したようだ。


 俺は話題を変えて、


「それでアキナちゃんはよく寝られたようだな?」


「わらわは一睡もせずエレギルを見ておったのじゃ」


「そうか、それはご苦労だったな」


「任せられた以上当然のことをしたまでじゃ」


 アキナちゃんたちを迎えに行ったらしいエヴァが笑っていた。


「あのう、昨日もそうでしたが、ここではこんな立派な食事をいつも食べているんですか?」と、エレギルがおずおずと聞いたので、


「そうだな。だいたいいつもこんな感じだ。

 今日はエレギル用にこういった感じの食事になったんだと思うが、もっといろんな種類の料理を日替わりで食べている感じだ」


「ゼンジロウさんは豪商か貴族なのですか?」


「いや、そうではないが、お金持ちではあるな」


「エレギル。ゼンちゃんは豪商などよりよほど金持ちじゃ。

 エレギルの国にも王さまはおるのじゃろ?」


「はい」


「ゼンちゃんはな、この国の王さまなのじゃ」


「は?」


「じゃから、ゼンちゃんは王さまなのじゃ。ここはタダの屋敷じゃから実感が湧かぬじゃろうが、都にはちゃんとした宮殿があって、ゼンちゃんはその宮殿で玉座に座る王さまじゃ」


 エレギルが俺の方を向いて、


「本当なんですか?」


「まあな」


 それまで食事の手を動かしながら会話していたエレギルの手が止まった。


「俺は俺だし、気にするな」


「は、はい」



 食べながら、


「それで、エレギルの部屋をどうするか考えているんだが、屋敷はもう一杯だし、思い切って増築するか?」


「増築も良いかもしれぬが、今日明日の話ではあるまい。

 わらわたちと一緒の部屋でよいじゃろ」


「いまでも5人で狭いのにか?」


「あの部屋は寝る時以外ほとんど誰も使っておらんから、一人増えようが問題ないのじゃ、みんなそうじゃろ?」


 エヴァたち残りの4人もうなずいている。


「ベッドはどうする?」


「ベッドを繋げて雑魚寝が楽しいから今のままでいいのじゃ」


「じゃあ任せるから、エレギル用のタンスだけ後で届けておくよ」


「それで十分じゃろ」


 本人の了承は得ていないが、アキナちゃんがいいというならうまくいくということだろう。本人にとっても賑やかな方がいいしな。




 朝食が終わったところで、食事の片付けが始まった。エレギルも一緒になって手伝っている。いいことだ。


 俺はその間に、子ども部屋の前にいき、エレギル用に子どもたちと同じ小型のタンスを部屋の前に置いておいた。さすがに女子中・高生の部屋に入っていく勇気はなかった。


 部屋の前で子どもたちが帰ってくるのを待っていたら、すぐに子どもたちがエレギルを連れて戻ってきた。


「タンスはこれだ。

 エレギルの服も買わないといけないから、いつものスーパーに行こうと思うけど誰かついてきてくれないか?」


「「はい」」


 みんな手を上げたので、


「一人ついてきてくれればいいから」


「みんな忙しいし、今日は探索はないみたいだからわたしがいきます」


 キリアが手を上げてくれた。


「じゃあキリア頼む。あそこのスーパーの衣料品は9時からだったはずだから、9時にエレギルを連れて居間に集合だ」


「はい」




 9時まで時間があるので俺は居間のコタツに入って、昨夜の海から町への襲撃について考え始めた。


 海側はおそらく大規模な海賊なのだろう。そうでなければ、他国の海軍の海兵。国と国との戦いなら俺たちが介入すべきでないことは明らかだが、相手が海賊なら叩き潰してやりたい。


 そんな必要などどこにもないことは分かるが、やはりキッチリ、エレギルの借りは返してやりたい。


 華ちゃんやキリアが手を汚す必要はないのでヤルなら俺一人で何とかしてやる。


 そういった物騒なことを考えていたら、オリヴィアがグランドピアノを弾き始めた。華ちゃんはその横に立っている。オリヴィアは楽譜を見ていないようだ。今のオリヴィアは一度演奏を聞けばすぐに弾けるのだそうだ。楽譜を見るのは、自分の耳にした演奏と正式な楽譜との差を埋めるためだと華ちゃんに聞いた。そして、楽譜通りに弾けるようになったら、その楽譜通りの中で自分らしさをどうやって出していくかを何度も弾いていく中で掴んでいくそうだ。どこまでも才能は伸びていくのだとその時俺は驚いたことを覚えている。


 オリヴィアのピアノを聞いていたら気持ちが静まってきた。


 少し落ち着いたころ、キリアとエレギルがやってきたので、靴を履いた俺は、二人に俺の手を取ってもらいいつもの大型スーパーの脇に跳んだ。そこから正面に回って店の中に入った。


 まだそれほど客はいなかったが、


「こんなに大きな建物の中に、商品?がたくさん。人もたくさん」


「この階は食料品を主に売っている階だ。衣料品は2階だから2階に上がるからな」


 2階へはエスカレーターを使わず階段を上った。


 階段を上りながら、店の方を振り向いたエレギルが、


「うわっ! こんなに広かったんだ」と、驚いていた。


 俺から見てもここの売り場、無駄に広いと思うんだよな。半分以上プライベートブランドだし。



 2階に上がったところで、後はキリアにお任せだ。


「エレギルの服を上から下まで、中から外まで一揃い見繕って買ってくれ。俺はあそこに見えるレジの近くにいるから。

 靴も忘れるなよ」


「はい」


 キリアはスーパーのカゴを持ってまず靴売り場の方にエレギルを連れていった。



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