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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第437話 エレギル5、襲撃


 エレギルと夕食を共にすることになった。見よう見まねでエレギルがトンカツとエビフライにとんかつソースをかけ、キャベツにフレンチドレッシングをかけた。みんなてんでバラバラにソースやドレッシングをキャベツにかけるものだから、エレギルはキャベツに何をかけるか迷ったようだ。



 そして最初はエビフライにフォークを突き刺して、口に運び大きな口を開けてガブリ。


 揚げたてのフライなのでかなりサクサクしている。


「熱い。おいしい。すごくおいしい」


「エビフライっていうんだが、エレギルのところでもエビは獲れるのか?」


「はい。よく食べますが、こんな料理は初めてです。これがエビなんだ」


「エビの種類が違うかもしれないがな。

 平べったい方がトンカツだ。豚肉をエビフライと同じようにして調理したものだ。それもおいしいぞ。ところで、豚って知ってるよな?」


「はい。1年に1回か2回しか食べられませんが売られています」


「島というからには、魚関係が多いのかもな」


「はい。魚はほとんど毎日食べています」


「それで、その白い粒々がご飯といって米という穀物を炊いたものだ。

 米ってエレギルのところでは食べているか?」


「はい。食べていますが、こんなにきれいな白でもないし、もっと長細くてこんなにくっつきません」


「なるほど。米にも種類が沢山あるからな。

 その薄茶色に見えるスープがみそ汁だ。中にネギと、大豆を搾った汁からできた豆腐というのが入っている。ああ、その白いサイコロみたいなのが豆腐だ」


 俺の説明通りにエレギルがフォークやスプーンを使うので世話してやりたくなる。俺はほとんど食べていなかったので、急いで食べ始めた。


 しかしこのトンカツもエビフライもおいしいな。サクサク感が浅草のアノとんかつや以上だぞ。プロの味を超えるとは大変なことだな。


 まだリサにはここにいてもらいたいが、将来的にはレストランのシェフをやらせてみたいものだ。そのためには先にこの味を受け継ぐ弟子を育てる必要があるのだが、華ちゃんはー、……。


「岩永さん、なにか?」


「いや何も」


「ならいいです」


 俺はそれ以降おとなしく食事に専念することにした。


 俺の後は華ちゃんがエレギルの面倒をみてくれた。


 ……。



「みんな食べ終えたようだから「ごちそうさま」」


「「ごちそうさま」」


 遅れてエレギルが「ごちそうさま」を言った。でも、だいぶ慣れてきたようだ。


「ご飯を食べて体は温かいし今日はエレギルがいるからデザートはアイスにするか?」


「待っておったのじゃ」


 みんな片付けを始めたのでエレギルは自分も手伝おうとしたが、


「気持ちはありがたいが、慣れないとケガすることもあるし、おとなしく座っていればいいから」


 みんなにご所望のコーン付きのアイスを配り、エレギルには無難にバニラアイスコーン付きを手渡した。アキナちゃんはもちろん両手に華状態だ。


「上の白いところを舐めたりそのまま齧って食べればいい。手に持つところは食べられるけど、先に食べてしまうと上のが落っこちちゃうから上のアイスを食べてから食べるようにな」


 エレギルが恐る恐るバニラアイスを小さな舌で舐めた。


「甘い。おいしー。こんなおいしいもの初めて」


 今夜なんとか島に届ければもうエレギルに会うことはないだろうが、喜んでくれて何よりだ。


「エレギルを送り届けるのは午後10時、いや、エレギルの時間だと11時ころのつもりだが、真夜中一人で町の中を歩いて大丈夫か?」


「大丈夫です」


「ならそのつもりでいてくれ」


「はい」



 食事が終わり、俺はエレギルのことは華ちゃんたちに任せて、ロイヤルアルバトロス号のブリッジに跳んだ。


 外はだいぶ暗くなっている。洞窟内ではあと30分もしないうちに、星明り程度まで空は暗くなって、いわゆる明け方までその状態が続くようだ。エレギルが1年が100日と言っていたところを見ると、この大洞窟にはおそらくはっきりした季節がないのだろう。


 ほとんど空と海の色に溶け込んで見分けがつきづらくなった陸地の方を見ると、ほんのわずかな光が見えた。灯台かもしれない。真夜中に船を海に出す者はいないだろうが、港に帰る船には必要だろう。


 そろそろ陸地に近づくとするか。明かりに向かって直進すれば港から少し外れるのでちょうどいい。


「RA号、前方にわずかに見える明かりに向かって前進。速度は10ノットだ」


「了解。

 明かりを確認。速度10ノットまで増速し直進します」


 そのときレーダーに一列になった10艘ほどの比較的大きな船が映っていることに気づいた。港までの距離と速度からいって2時間もすれば港に到着するだろう。大勢人が乗っていそうだが作戦決行時間の1時間ほど前に港に着きそうなので、作戦に支障が出る感じではない。



 俺はこの時間人は来ないだろうと思ってブリッジの中でワークマ〇スーツに着替えておいた。防具は黒光りしているのでかえって目立つと思い身に着けないつもりだ。着替え終わった俺はブリッジの明かりを消し、船内を消灯して回った。キャビンの居間だけはカーテンを閉めて、照明の明るさをだいぶ落としておいた。これで海上から港に接近するロイヤルアルバトロス号を見つけることは難しくなるだろう。



 それからしばらくして辺りはだいぶ暗くなった。もうこれ以上は暗くならないだろう。今では灯台以外の陸地の明かりも見えている。


 作戦決行の午後10時まで時間はだいぶある。



 灯台らしき光まであと10キロほどに迫ったところで、速度を5ノットまで落とした。これで港まで近づいていけばちょうどいい時間になる。


 午後9時30分。居間にいたエレギルをキャビンに連れてきた。その際、ワークマンス〇ツを着た華ちゃんが付いてきた。俺一人でエレギルを連れていこうと思っていたのだが、華ちゃんがいれば心強いのは確かだ。


「華ちゃん、サンキュウ」


「岩永さん一人だと少し心配だったので」


 心配されちゃったよ。うれしいような情けないような。やっぱりうれしいな。


 ブリッジに上がり、作戦前の最後の指示をRA号に出す前に、例の10艘の船がどうなっているかレーダーを見たら予想通り港に入ってた。ここから島の海岸まで距離は5キロ弱。



「あれ? なんだ?」


 ブリッジから前方を見ると港の方でたくさんの光が動いている。おそらくタイマツだ。空を飛んでいるのは火矢なのか? 港の近くの建物やその先の建物が燃えている。


 夜間用の双眼鏡ではないが、双眼鏡を取り出してのぞいてみたら、明かりはやはりタイマツで、その明かりに照らされて剣や槍が振るわれているのが見て取れた。そして海側の勢力から港の先、町に向けて火矢がいかけられている。



 俺はその場でRA号に増速して手前300メートルまで接近するよう指示を出して、タラップを駆け下り、


「華ちゃん。港で戦いが起きている! 町が燃えている。

 エレギル、おまえの家は港の近くだって言ってなかったか?」


「すぐ近くです」


 まずい。どうすればいいんだ?


 取りあえず3人でタラップを駆け上がりブリッジに。


 戦闘の喚声がわずかに聞こてきた。火はますます燃え上がっている。


 ロイヤルアルバトロス号はまだ騒動の港まで2キロほど離れた位置だ。


 2分ほどでロイヤルアルバトロス号が港から500メートルの地点で停船した。


「華ちゃん、火を消し止めたいがいい魔法はないかな?」


「ウォーターボールやアイスボールを撃ち込めば火は消し止められますが、周囲を吹き飛ばしてしまいます」


 なんとかボールは消火用の魔法じゃなくて一種の爆弾だもんな。


「うちのある辺りが燃えています!」


 エレギルが悲痛な声を出した。ブリッジ内は消灯中なので彼女の顔ははっきり見えないが相当動揺していることがうかがえる。


「いいことを思いついた」


 俺は、ブリッジから近くの海水を1000トンほどアイテムボックスに収納し、1トン単位で燃えている町の上空500メートルにずらりと並べるように排出してやった。


 500メートル落下するうちに1トンの海水の塊は大きく広がっていき10数秒後、燃える街の上に降りかかった。


 街に燃え広がっていた火の勢いははかなりおさまり、もう一度同じように1000トンの水をばらまいたら火は消えた。港周辺で動いていたタイマツも一緒に消えてしまい港も町も真っ暗になった。同時に戦いの喚声も聞こえなくなっていた。


「すごい」




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[一言] 猫同士のけんかに水ぶっ掛けるみたいなww
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