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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第432話 漂流者1


 水平線上に陸影を見つけたので、ロイヤルアルバトロス号はしばらく直進した後、陸影に向けて船首を向けた。


 それから30分ほど進み、陸地まであと30キロ。陸影は島影に変わっていた。島とは思うがそれでもかなり大きな島だ。四国だって太平洋側から近づいていけばきっとどこまでも広がる大陸に見えそうだものな。


 華ちゃんは特に用事がないらしく、ピョンちゃんの止まる舵輪の前に立って、ピョンちゃんの頭をなでながら前の方を見ている。


「華ちゃん、双眼鏡を貸そうか?」


「はい。そういった物は船長さん専用と思っていました」


「いやいや、それはないから。

 子どもたち用にもコピーはとってるけど、誰も欲しいと言ってこないから渡していないんだけど、まさか遠慮してるのかな?」


「分かりませんが、岩永さんが双眼鏡を持っていることを知らない子もいるかも知れません」


「もうちょっと子どもたちの前で見せびらかした方がよかったな。アキナちゃんが見つけていたら確実に欲しいと言い出すだろうし、アキナちゃんに渡せば他の子も欲しがるだろうからな」


「フフ」


 双眼鏡を手にした華ちゃんが、前方を眺めながら、


「水平線を見ると何だかぼやけてしまって見づらいですね」


「この大空洞は地表と違って丸くなくて平べったいからどこまでも見えて焦点がずれてしまうからじゃないかな。それにいくら空気が澄んでいると言っても、かすむものはかすむだろうし」


「そうかもしれませんね。

 あれ? 何か前方に浮いてます」


 俺のコピーレシピは新品の箱ごとだったので、電池を入れてストラップを付けた華ちゃんに渡した双眼鏡はすぐ使えるので、華ちゃんに双眼鏡を一度返してもらって、それをコピーしてから返し、自分でも華ちゃんが先ほど見ていた方向に双眼鏡を向けてみた。


「確かに何かが浮いてる。

 RA号。前方、10キロほどの海上に何かが浮いている。近づけてくれ」


「前方の浮遊物を確認しました。接近します」


 華ちゃんと並んで、双眼鏡を覗いていたら、だんだんと漂流物が大きく見えてきた。


「板のように見えるな」


「そうですね」


 ……。


 さらにロイヤルアルバトロス号は漂流物に接近し、漂流物が何だか見分けがつくようになった。


「やはり板だな。船のどこかの部材っぽい」


「板の上に何か乗ってませんか?」


「確かに何かいるな。なんだか人が板の上で寝てるように見えるけど。

 華ちゃんはどう?」


「そう言われれば、乗っているのは人ですね」


「助けなけりゃいけないよな。

 RA号。前方の漂流物の近くで停船だ」


「了解」



「俺はアッパーデッキに下りて、船首から板の上の漂流者を生きていようが死んでいようがブリッジの後ろのテラスに転送するから」


「はい」



 俺はブリッジから直接アッパーデッキに下りて船首に向かって急いだ。


 肉眼でもはっきり漂流物が見えるが、肉眼では漂流者の姿ははっきりと見えなかったので、ロイヤルアルバトロス号がもう少し接近するのを待った。


 漂流物から200メートルほどまでロイヤルアルバトロス号が接近したところで、漂流物の上に乗った漂流者をはっきり認識できた。認識した漂流者はかなり小柄なだった。


 まずアイテムボックスに収納できるか試したが収納できなかった。生きているようだ。それからブリッジの後ろのテラスに転送し、漂流物はアイテムボックスにしまっておいた。俺自身もテラスに跳んだ。


 テラスには、華ちゃんが待っていてくれた。俺が転送した人は、板の上に乗っていた時と同じ姿勢でテラスの上にうつ伏せに寝ている。生きているはずだが身動きはしていない。


 海水で濡れた衣服は、白いシャツの上に長袖の上着。ひざ丈のパンツ。かなり整った衣服を着ている。衣服のデザインや生地の見た目はニューワールドのものとそんなに差はないように見える。化学繊維が使われている感じはしないが、俺も素人なので確実ではない。靴は履いていない。ズボンから出たくるぶしから下は人間の足に見えたが色は真っ白だ。これは血の気が戻ればピンク色になると思う。髪の毛は銀色に近い金髪でアキナちゃんの髪の色に近いが短く刈り上げている。いつぞや勇者を助けた時は手足が折れていたが、外傷は見当たらない。


 ヒールの魔法で回復すれば簡単なので、まずは華ちゃんに、


「華ちゃん、ヒールを試してくれるか?」


「はい。

 ヒール」


 うつ伏せに寝ていた漂流者の体全体が一瞬強く光った。これは効いたな。不思議なことにこの光は肌や衣服関係なく体全体を覆っていた。


 勇者を助けた時、華ちゃんのヒールは効かなかったが、この漂流者に効いたということは、良くも悪くも無意識の場合勇者には魔法耐性が働くのではなかろうか。それか、華ちゃんのヒールがあの時より強力になったか。普通に考えたら後者だな。


 漂流者の体を覆った光が消えて5秒ほどで、漂流者が指を動かした。それから腕を動かし、そしてうつ伏せから仰向けに寝返りをうった。


 予想はしていたが、漂流者は若い女性だった。確認したわけではないので、正確には若い女性というか、うちの子どもたちくらいの女の子に見える顔をしていた。性別について最近はうるさいからな。胸もわずかに膨らんでいるような。これは、男でもこれくらいは。以下省略。


 漂流者あらため女の子(仮)(かっこかり)はそれからゆっくり目を開けた。女の子(仮)(かっこかり)の瞳は髪の毛の色から想像した通り緑だった。


 その緑の瞳が動いてた。俺たちを見つけたようだ。


 それから呟くように、


「#?=%%」


 と、口にした。


 予想通り何を言っているのか全く分からない。可能性があるのは「あなたたちは誰?」ないし「助けてくれてありがとう」の二つだが、これはあくまで地球とニューワールドに住む人間の思考なので、「得物を見つけた」「うまそうだ」の可能性がないわけではない。


 意識が戻ったからといって元気いっぱいなわけはないので、スタミナポーションを飲ませることにした。華ちゃんのスタミナの魔法よりポーションの方が形がある分もらってうれしいはずだものな。


 ちょっと高級なスタミナポーションを錬金工房で作り、それを手のひらの上に出して、下から見上げる彼女の目の前で蓋を開けてやり、口に流し込むしぐさをして何回かして見せてたところ、少し頭を上げてくれたので口に突っ込んでやったら、自分で手で持って全部飲み干した。


 すぐにスタミナポーションは効いたようで彼女は上半身を起き上がらせ、


「*/$!=△」


 と、意味不明の言葉を口にした。


 そして、空を見上げて大きな声で「D#V#KN!」と叫んだ。


 彼女の顔の向いた先では、メタルゴーレムドラゴンが空を舞っていた。驚かせたようだが、今のところなだめようがない。「D#V#KN!」はどう見てもドラゴン! って言ってるよな。


 彼女の言葉用の言語スキルのスキルブックは作れるのかもしれないが、コアに対して指示の仕方が分からないので作りようがない。ということなので、俺は日本語のスキルブックを1枚アイテムボックスから取り出し、メタルゴーレムドラゴンにおびえる彼女を何とかなだめて、スキルブックを壊すよう両手でへし折るしぐさをして、彼女に渡した。


 


 最初は理解できなかったようだが、何とか理解できたようで、両手でスキルブックをへし折ってくれた。これで日本語が話せる。


「俺たちは、海の上で漂流していたきみを助けた者だ。

 俺の名まえはゼンジロウ」


「わたしの名まえはハナ」


「君の名は?」


「わたしの名まえは、エレギル。

 助けていただきありがとうございます。

 あれ? この言葉、あれ?

 いまわたしが口にしている言葉はいったい? 両手で壊したら消えてなくなったさっきの黒い板は?」


「質問に答える前に、まずはその海水で濡れた服を着替えた方がいいだろう。

 この子は見たところ、エヴァくらいの大きさだからどこかに一揃いコピーしたはず。これだな」


 エヴァのものかどうか実際のところはっきりしないが、下着から一揃い入った紙袋のレシピがあったのでそれを使ってコピーを作り、華ちゃんに手渡した。


「華ちゃん、この子を船の風呂場に連れて行って、シャワーを浴びさせてからこの服を着せてくれるかい? 俺はキャビンの居間で待っているから」


「はい」


 エレギルはだいぶ元気が出てきたようで、一人で立ち上がり、手を引く華ちゃんについて、ブリッジを通って下に下りていった。



Dovahkiinドヴァキン:RPGゲームTES5:Skyrimに登場する主人公ドラゴンボーンのこと。32ビット版と64ビット版合わせて4000時間以上やってますが、メインストーリークリアは1回だけです。いつになったら続編TES6が出るんだ!?


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