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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第431話 陸影


 翌日早朝。


 いつもより1時間ほど早く目覚め、ロイヤルアルバトロス号のブリッジに跳んだ。その時は何も考えずにロイヤルアルバトロス号のブリッジに跳んだのだが、もし沈没していたら大変なことになるところだった。深海の中に転移できるのかどうか分からないけれど、もし転移できたら水圧により一瞬で気絶してしまい、そのまま帰らぬ人になっただったろう。


 アキナちゃんの加護のおかげと思っておこう。


 それはそうと、なぜかブリッジの中にアスカ2号が立っていた。


「マスター、おはようございます」


「ああ、おはよう。

 ところで、どうしてお前はここにいるんだ?」


「マスターが気にしていらしたので、わたしが代わりにロイヤルアルバトロス号を見ていました」


「バカ!

 おまえにケーブルを外させた後ゆらぎを閉じたんだぞ。俺に報告した後すぐにロイヤルアルバトロス号に戻ったんだろ?」


「はい。申し訳ありません」


「ロイヤルアルバトロス号は、ただの機械だ。しかもコピーをとっているから簡単に作り直せる」


「マスター、わたしもただのゴーレムです」


「何言ってるんだ!? お前は俺たちの家族の一員なんだぞ。少しは自覚を持て!」


「はい。アスカ1号にも3号にも伝えておきます」


「そうしてくれ」


 自分のことは棚に上げて、柄にもなくアスカ2号を叱ってしまった。


「だけど、ありがとう。無事でよかった」


 アスカ2号がロイヤルアルバトロス号ごと海に沈んだとしてそれでアスカ2号が死んでしまうことはないだろうが、もう探しようがないし、方向が分からない以上うちに帰ってくる手段もアスカ2号にはないはずだ。ほんとに無事でよかった。


「はい」


「それはそうと、時化はおさまっているようだな」


「時化は3時間ほど前からおさまって、今は晴れています。船内に異常はありません」


「了解」


 窓から見える海上はまだ暗いが、大雨が降っていた時のような真っ暗ではない。


「時化は収まって波が落ち着いてきたところで勝手ですが30ノットまで増速しています」


「了解。問題ない。

 俺はコアルームに跳んで、ロイヤルアルバトロス号のゆらぎを開かせてくる」


 そう言って、コアにその通り指示して、またロイヤルアルバトロス号のキャビンに帰った。


「ゆらぎは空いているはずだから、アスカ2号は用事があるなら帰っていいぞ」


「とくにありませんので、ブリッジにいます」


「それなら、好きにしてくれ」


「はい」



 朝食までにはまだ1時間くらいある。


 しばらく俺もアスカ2号と並んで海を眺めていた。レーダーは積んでいるのだが、晴れた日の昼間は目視の方が遠方まで見通すことができるみたいだ。


 なので、嵐の後の海面に漂流物が見つかるかもしれないと、薄明りの中双眼鏡を使って海面を見回したが、もちろん何も見つけることはできなかった。


 海面がだいぶ明るくなってきた。そろそろ朝食の準備が終わりそうだ。


「俺は食事に戻るから。アスカ2号は適当にしていてくれ」


「はい」


 俺はアスカ2号をブリッジに残し屋敷の居間に跳んだ。



「「いただきます」」


 朝食を食べながら、


「今朝がた心配なのでロイヤルアルバトロス号に行ってみたんだが、時化はおさまって、空も晴れていた」


「ゼンちゃん、アッチに行ったのじゃな?」


「誰かが確かめないと分からないだろ?」


「確かにそうじゃが、居ながらにして分かる仕組みがあった方が良いと思わぬか?」


「それはそうだな。

 後でアスカ2号に何とかならないか聞いてみよう。おそらく簡単なんじゃないか?」


「それなら安心なのじゃ。

 というか、ブリッジにある機械をそっくりそのままダンジョンの中にも置いて、ダンジョンの中からでも操縦できるようにすればよいのではないか?」


「それは気付かなかったけれど、それもできそうだな」


「じゃろ?」


「それができれば無人機、ドローンそのものだな」


「ゼンちゃん、わらわは飛行機も欲しくなったのじゃ。ヘリコプターでも可なのじゃ」


「飛行機は、まかり間違えれば墜落して死んじゃうから、俺は欲しくないぞ」


「墜落しなければいいだけじゃろ?」


「それはそうだが、ただ乗ってみたいだけなら普通に空港に行って飛行機に乗った方が安心だぞ」


「それもそうじゃな」


 アキナちゃんがその気になってしまうと本当になってしまいそうだから危ないところだった。


「今日も陸地が現れそうにないから、みんな自分の用事をやっていてくれ。もし陸地が見つかったら3人にはメールで知らせるから」


「了解なのじゃ」「「はい」」



 朝食を食べ終えた俺は、再度ロイヤルアルバトロス号のブリッジに跳んだ。


 まだアスカ2号はブリッジにいた。


「マスター、右手前方に陸地が見えて来ました。50キロは距離があると思います」


 双眼鏡をかざすと、確かに黒い陸地が水平線に見えた。ここからだと、島なのかちゃんとした陸地なのか、はたまた対岸なのかは不明だ。あと、コアの位置を通り過ぎている可能性も十分あるのでピョンちゃんに確認させなければならない。


「やっと陸地だな。

 アスカ2号。華ちゃんに、夜の間に目的地を通り過ぎている可能性があるからピョンちゃんを連れてくるように伝えてくれ」


「了解しました」


 メールでもよかったが、時間がかかるのでアスカ2号を便利に使ってしまった。立っている者は親でも使えって言うしな。


 5分ほどで華ちゃんがピョンちゃんを連れてブリッジにやってきた。アスカ2号も一緒だ。


 ピョンちゃんの顔の向きとロイヤルアルバトロス号の向きはちゃんと一致していたので、通過してしまったわけではなかったようだ。


「華ちゃん、サンキュウ」


「どういたしまして。島が見えてきたんですね」


「島か大陸か対岸かは今のところ分からないけどな。

 取りあえず放っておいてもロイヤルアルバトロス号は陸地に近づいて適当なところで停船するよう指示しているから」


「本当に優秀ですね」


「本当によくできてる。

 そうだ思い出した。アスカ2号、このロイヤルアルバトロス号をリモートコントロールできないかな。造船所の片隅辺りに小部屋を作って、そこから操縦する感じにしたいんだが。そうすれば昨日の時化のような時なんか安心だろ?」


「可能ですがゆらぎが閉じてしまうとコントロールできません」


「確かに。そこは仕方ないからできるならやってくれ」


「はい。今あるもので取り掛かりますが、発注の必要な機材もあるので、1週間はかかると思います」


「1週間でできるなら大したものだよ」


「頑張ります」


 そう言ってアスカ2号はブリッジから出ていった。


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