第423話 王さま業務の後で
今週の王さま業務を終えて昼食を食べた俺は、アスカ1号を引き連れて屋敷に戻った。居間では華ちゃんがオリヴィアのピアノを見ていた。
華ちゃんを連れてフィギュアルームに跳び警備用ゴーレムをフィギュア化したかったが、二人の邪魔をしては悪いので俺は軽く会釈しただけで、コタツに入っておとなしくしていた。
そうしたら、エヴァがやってきて電卓を業者に発注したと報告を受けた。俺はすっかり失念していたのだが、キーだけでなく液晶表示もニューワールドの数字にする必要があった。その関係で納品は4月に入ってからになるそうで、当初1万個で単価千円程度のものかと思っていたが、5万個で単価1500円となったそうだ。それでも意外と安く上がったようだ。文字盤とキーのニューワールドの数字ははるかさんが学校の教科書用に作ったものを元にデザインするそうだ。
30分ほど待っていたら華ちゃんたちが休憩に入ったので、事情を話して華ちゃんと一緒にフィギュアルームに跳び、警備用ゴーレムをフィギュア化した。
「華ちゃんありがとう」
「どういたしまして。面倒でもこのダンジョンに入る時はわたしを連れていってくださいね」
「うん」
華ちゃんを連れて屋敷に戻った俺は、今度はフィギュア警備用ゴーレムを4体に増やしてから連絡通路に行き、メタル警備用ゴーレムに戻して警備用ゴーレムを取り換えておいた。試すわけにはいかないがメタル警備用ゴーレムの戦闘能力だけは、アスカたちのそれを凌駕するはずだ。
一仕事終えた俺は屋敷の居間に戻り、またコタツに入っておとなしくした。華ちゃんはオリヴィアのピアノの相手を再開していた。
コタツに入ってシステム手帳を広げたところ『コミック大人買い』と書いてあった。これについてはすぐ思い出せたので、アスカ3号がいるはずのマンションの居間にそのまま跳んでいった。
ちょうどアスカ3号が台所で洗いものをしていたので、
「アスカ3号、コミックをネットで注文しておいてくれ。いちおう完結したシリーズものだな。ジャンルは万遍なく。少女漫画も忘れず含めてくれよ」
「はい。マスター」
アスカたちは3人とも、俺の非常に漠然とした指示にちゃんと答えてくれる。さすがだ。
「コミックは段ボールで送られて来るだろうから、送られてきたらコアに言って、連絡室の先の通路に面して倉庫を作ってそこに積み上げておいてくれ。ある程度貯まったらアイテムボックスに収納するから」
「はい。マスター」
これでよーし。
アスカ3号は洗い物の後片付けをして、居間のパソコンに向かってパチパチ始めた。
アキナちゃんたちは、ロイヤルアルバトロス号の居間で広島での死闘を観戦しているのだろうが、俺はパスしておいた。
さて、今日はどっちの風呂に入ろうか?
やっぱりロイヤルアルバトロス号だよな。屋敷の風呂に入った場合、子どもたちが翌日風呂掃除をしてくれているのだが、ロイヤルアルバトロス号の風呂だとお掃除ゴーレムだしな。そう考えると生活の中心をロイヤルアルバトロス号に移した方がいいかもしれない。そうなってしまうと船上生活者だな。
まだ時間が早かったので、ロイヤルアルバトロス号のブリッジの後ろのテラスに跳んでいき、潮風を嗅いでのんびりすることにした。
楽園のプールで使ったビーチチェアがアイテムボックスの中にあったのでアイテムボックスから1つ出してその上に寝っ転がって、空を眺めていた。青空に白い雲がゆっくりと流れていく。上空で警戒中のメタルゴーレムドラゴンがときおり視界を横切る。2匹は休憩もせずもう何日も飛び回っているのだが大丈夫なのだろうか? 元気そうだから大丈夫と思うしかないな。俺がもし生まれ変わるとしたらメタルゴーレムドラゴンじゃなくてメタルゴーレムオルカだよな。
しばらくそうやって空を眺めていたら、アキナちゃんがやってきた。
「ゼンちゃんのオーラを感じたけぇきてみたら、気持ちよさそうじゃのう」
おいおい、もう広島弁に染まってるよ。
「アキナちゃん、映画は相当面白かったようだな」
「明日は、広島〇闘篇じゃけん」
広島にも神さまがいて広島弁で話すのかもしれないが、2時間もない映画を一本見ただけでここまで染まるとは。
「ハハハ。広島弁は冗談じゃったが、文ちゃんは素晴らしい男だったのじゃ。ゼンちゃんも文ちゃんを見習って角刈りにしてはどうじゃ?
おっ! これはすまぬ。今のわらわの無神経な言葉は忘れてほしいのじゃ」
「???」
なんだかわからないが、アキナちゃんが謝ってきた。どういうこと?
「まあいいや、そろそろ俺はこっちの風呂に入るけど、みんなもこっちの風呂に入るだろ?」
「そうじゃな。みんなにも伝えておくのじゃ」
「じゃあ」
昨日同様、温塩水を湯舟に入れて肩まで浸かりながら、先ほどのアキナちゃんの角刈りの話を思い出していた。何でアキナちゃんは謝ってきたんだ? 謎だ。
何かよからぬ予想もないではないので、気にしないでおこう。
風呂に入っていると血の巡りが良くなるせいか、今日考えていたことを思い出せる。明日の防衛省との会議で、ダンジョンマスターの話を切り出してみるか。いずれにせよオストランと日本とはダンジョン経由になるがちゃんとした形で結びつけないと。俺一人が行き来する程度ではオストランの発展はないからな。
夕食時に、連絡室の先の通路に警備用のゴーレムがいることをみんなに伝えておいた。忘れずに伝えたことはわれながらグッドジョブだ。と思ったのだが、みんな華ちゃんから聞いて知っていたようだ。そういうこともある。
夕食後、風呂から上がった華ちゃんに、ダンジョンマスターのことについて相談してみた。
「そうですね。
積極的に公にしていい話ではないのでしょうが、これから先、機械を使った大掛かりな工事なども必要になるわけでしょうから、ダンジョンマスターとして、好きなところに、好きな大きさのダンジョンへの出入り口を作ることができることを先方に話しておいた方がいいでしょうね」
「だよな。明日の会議で頃合いを見て話してみるよ」




