第422話 警備強化。足立と下村と火野9
オストラン宮殿に備品類を届け、連絡通路に警備ゴーレムを配置した翌日。
今日は出勤日なのでこの日もアスカ1号を連れて神殿に跳び、ローゼットさんを連れて宮殿の執務室に跳んだ。俺が神殿に立ち寄りローゼットさんを宮殿まで運ぶことをローゼットさんはいつも恐縮しているのだが、特に手間ではないので宮殿に連れていくだけはいつもしている。
「陛下、宮殿内にデスクライトと電気ケトルは行き渡りました。ボールペンとシャープペン、ノートと消しゴムは希望者に支給しています」
「それは結構」
「陛下」
「なに?」
「こちら側の入り口前には衛兵を常時立ててはいますが、陛下のお屋敷につながる通路が無防備では、やはり物騒ではないでしょうか?」
「確かに。
ダンジョン側の通路は広いから警備用のゴーレムを何体か置いておくか」
「そうされた方が安心できると思います」
「今日の書類仕事が終わったらさっそく取り掛かろう」
その後、侍女が運んできたお茶を飲んでいたら、書類の束が届けられた。
今日も頑張っていこう!
書類を読みながらハンコをついていく。
書類を読んでいるときふと思いついたのだが、電線を這わせるついでに宮殿内にLANケーブルを這わせておけばよかった。素人の俺では分からないが、ああいった物があれば内線電話も繋げられたかもしれない。電話は偉大だよな。そこらへんは、アスカ2号でも無理だろうから、国交が開かれたら専門業者を呼んで電話の導入だな。そのためには、本当の意味でオストランと日本を繋げる必要がある。
そろそろ俺がダンジョンマスターだってことをあの会議でカミングアウトする頃合いかもしれない。俺が王さまだって告げた時もそれほど驚いてはいなかったし、今度もきっと大丈夫だろう。防衛省の一職員が王さまでも何ともなかったわけだから、ダンジョンマスターなんか王さまに比べれば認知度は低い上、自由業だものどうってことない。何といっても収入はゼロだし。
書類仕事を終えて、しばらくぼーとしていたら、再度侍女がお茶を持ってきてくれた。
「ありがとう」
侍女が一礼して帰っていった。
お茶を飲み終えたところで、
「それじゃ、ちょっと通路に護衛を用意してくる」
そうローゼットさんに告げて席を立ち、コアルームに跳んだ。
「コア、連絡室につながる連絡通路を守る警備用のゴーレムを4体ほど作ってくれるか?」
「警備用となると、戦闘力があったほうがいいと思いますが、どの程度の戦闘力を持たせましょうか?」
「そうだなー。アスカ並では過剰だろうしコストがかかるだろうから、アスカの半分程度でいいかな」
「了解しました。完成までに4分かかります」
意外と簡単なんだ。見た目は当然ゴーレムゴーレムだろうからお値打ちなのかもしれない。アスカの半分の力が4体ならアスカ2人分だ。そんなに簡単な計算が成り立つわけではないだろうが、それでも相当なものだろう。フィギュア化してメタルゴーレムにしてしまえば格段に戦闘能力が上がるだろうし。
外から入ってくるのが不審者かどうかの見分けが必要だな。うちの連中のことはさすがに見分けられると思うが、宮殿からくる人物の見分けが難しい。IDカードが必要なのか?
「コア、中に入ってきた者が不審者かどうかはどうやって判断すればいいと思う?」
「マスターが不審者ではないと思う人物を思い描いて、わたしの上に手を置いてください」
俺はうちの全員と親父とブラウさんとローゼットさんを思い描いた。
「全11名を登録しました」
全部で12名と思っていたのだが、俺はデフォルトだものな。
「不審者が侵入しても可能なら拘束するだけにしておいてくれ」
「了解しました。不審者がゴーレムの手に余るようなら、追加のゴーレムを創ります」
まさかメタル化してアスカの戦闘力を凌駕するだろうゴーレム4体を圧倒するような不審者が現れるとは思えないが、これでよし。
……。
「完了しました」
コアがそう言ったが、どこにも新たなゴーレムは出現しなかったのでゴーレムは通路の方にいるのだろう。ちょっと見に行ってみるか。
「コア、サンキュウ」
「どういたしまして」
コアに礼を言って通路に跳んでいったら、宮殿へ続く小部屋の中に2体、外の通路に2体のゴーレムがいた。顔はのっぺらぼうで目に相当する部分が2カ所赤く輝いているゴーレムゴーレムなのだが、身長は180センチくらいで、体型が普通のゴーレムよりだいぶ細い。そういえば造船所の作業員も少し細身だったが、今度のゴーレムの方が細い、そして精悍だ。フィギュア化するため、一体をアイテムボックスに収納してコピーし、オリジナルを元に戻しておいた。
これで一安心。
俺はまた宮殿の執務室に戻り、ローゼットさんに、
「通路の先に警備用のゴーレムを4体置いてきました。
あの通路を抜けられるのはローゼットさんとブラウさんだけにしたから、そのつもりで」
「了解しました」
大したことはやっていないが、やっと今日の仕事は終了だ。あとは、ここの食堂で昼食を食べて帰るだけ。どこぞのオーナー社長以上だろうな。まあ、そこらのオーナー社長なんかより偉い筈の王さまだし。
以前俺も執務室のコミックを拡充しようと思っていたのだが、図書館がロイヤルアルバトロス号の中にできたので、アキナちゃん文庫から何冊かコミックを借りてきておけばよかった。
ローゼットさんやそのほか日本語を話せる宮殿の連中の日本語ブラッシュアップ用にこの宮殿にもコミック図書館を作ってもいいかもな。俺もコミックをネットで大人買いしてやるか。俺の趣味を押し付けてはいけないから、万遍なく買わないといけないので、これはアスカ3号案件だな。
メモメモ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
いつものように足立たち勇猛果敢の3人はダンジョン帰り、ドト〇ルに立ち寄って飲み物とケーキなどを頼み、店の奥の席に陣取った。3人は学校ではプライベートな話は極力しないようにしているので、足立はビッグニュースをそれまで二人に黙っていた。
席に着くと同時に、足立が下村と火野に、
「イワナガ・コーポレーションだった」
「え?」「なにが?」
「いや、俺の親父の勤めていた会社のこと」
「うわ!」「うわー。ホントにそうだったんだ」
「やっぱり社長はあの女の子だったって。
それで、会長というのは面接の時一度見ただけだけど、まるっきりの日本人だったそうなんだ」
「それが?」
「いや、イワナガ・コーポレーションはオストラン王国の会社で社長が見た目外国人の美少女。名まえはイワナガ・エヴァ、会長はイワナガ・ゼンジロウ。社長は会長の養女だって言ってた。
面白いだろ?」
「どうして?」
「だって、日本人顔をしていてイワナガ・ゼンジロウって、どう見たって日本人だろ?
その日本人がオストラン王国の会社の会長だぜ」
「つまり日本人がオストラン王国で偉くなってるってことか」
「そういうこと。親父は社長の歳を教えてくれなかったけど結構若いって言ってた。
それで、名まえがゼンジロウ。
これで、何か気付かないか?」
「うーん」
「あっ! ゼンジロウの頭文字はZ!」
「一心同体のZさん!」
「な? あり得るだろ?」
「あり得る」「わたしもそう思う」




