第420話 大型モニター2。足立と下村と火野8
アキナちゃんにモニターが電源に繋がったことをトレーディングルーム扉の外から教えてやったところ、すぐに部屋から飛び出してきて、
「さっそく視聴じゃ」
そう言って玄関に走っていき靴を履いてゆらぎの中に消えていった。
よほど見たいソフトがあったようだ。
俺も興味があったので覗いてみることにした。
歩いてロイヤルアルバトロス号のキャビンの居間に入ったら子どもたちがみんな揃っていた。アキナちゃんは図書館にソフトを取りに行っているようでいなかったがすぐに現れた。
「それで、アキナちゃん。何を見るんだ?」
「記念すべき最初の円盤はジャジャーン。
〇の錬金術師なのじゃー。等価交換なのじゃー!」
よくそんなの知ってたな。
下の図書館にコミックあったものな。
昼食が近いから1話だけだな。
アキナちゃんがリモコンでモニターのスイッチを入れたら、何だか設定画面が現れたが、あっという間に設定が終わったようだ。その後ケースから取り出した円盤をプレーヤーに入れたら、ロゴが現れた。それを飛ばしてオープニング。その間にキリアが部屋の照明の明るさを少し落としていた。
ミニ映画館くらいの迫力は十分ある。いくらしたのか知らないが、確かにこれは買ってよかった。気のせいかもしれないが音もいいような気がする。
……。
1話を見終わったところで、みんな昼食の手伝いだと言って駆けだしていった。俺も昼食前に行方不明になってはいけないので、屋敷の居間に戻っておくことにした。
居間に戻ってコタツに入ろうと靴を脱いだところでエヴァが昼食の用意ができたと呼びに来てくれた。今日はお手伝いがあまりできなかったようだ。
食事しながら、アキナちゃんが、ロイヤルアルバトロス号にモニターが付いたことを華ちゃんたちに教えてやっていた。
「わらわたちは〇の錬金術師の第1話を見たのじゃが、〇の錬金術師は毎日1話ずつ見ていくのじゃ。午後からは華ちゃんたちのために大人も楽しめるラブロマンス映画を見るのじゃ」
「アキナちゃん、なんてタイトル?」
「風と共に去り〇。なのじゃ」
また渋いタイトルだなー。
「4時間の超大作じゃから、昼食の片付けが終わったらみんなで急いでロイヤルアルバトロス号に行くのじゃ」
「それだと夕食の準備が大変になるから、今日の夕食は俺のレパートリーの中から選んで向こうの食堂で食べようか? お風呂もあっちで」
「それは良い考えなのじゃ。向こうに行くときお風呂の準備もしていくのじゃ」
そういうことになってしまった。
言葉通り後片付けの終わったアキナちゃんたちは急いで2階の自分の部屋に上がっていった。華ちゃんたちは映画が終わった後時間があるので風呂の用意を今しておく必要はない。そういう意味では子どもたちも一緒だが、まあいいだろう。俺はアイテムボックスの中になんでも入っているのでもちろん風呂の用意は必要ない
準備の終えた子どもたちと一緒にロイヤルアルバトロス号のキャビンの居間に歩いていき、ソファーに腰を掛けて上映を待つ。俺も今まで一度も『風と共に去り〇』は見たことないんだよな。子どものころテレビでやっていたが恋愛ものに興味はなかったので見てはいない。
みんな揃ったところで上映会が始まった。例のごとく最初のロゴをすっ飛ばしてオープニング。
古臭い映画だし、子どものころ主演女優がおばさんおばさんしていた記憶があったのだが、年を取ってみた主演女優の顔は輝いていた。それから引き込まれるように映画に没頭してしまった。
それでも途中、みんなにアイスを配ったり、コーラを配ったりしてやった。映画を見ている途中で、アスカ3号がやってきて小声で『荷物はわたしが運んでおきました』と教えてもらった。すっかり荷物が届けられることを忘れていた。
「アスカ3号済まない」
「いえ。アスカ2号は今機器を接続していますので、もう30分ほどで宮殿に電気が流れます」
「了解」
明日になったら宮殿にデスクライトを届けてやろう。あとボールペンとシャープペンと消しゴムとノートだな。正式な書類だとマズいかもしれないが、下書きやメモ書きには重宝するだろう。
途中バタバタしたが、1時少し前から映画を見始めて気付けば5時近くになっていた。
映画を見終わった居間の中は静かだった。みんな感動しているようだ。ちゃんと映画を最初から最後まで没頭して見たという記憶と、主人公が美人だったという記憶だけはあるのだが、映画の内容の記憶が怖いほど全くない。俺って本当に大丈夫なのか?
「岩永さん。この映画わたしは初めて見たんですが、よかったですね」
俺の記憶力に疑問を感じていたら、隣りに座っていた華ちゃんにいきなりそう言われたので、
「は、はい。よかったです」と答えてしまった。
「岩永さん?」
ここで何か突っ込まれたらものすごいボロが出る。
「俺は早めに風呂に入ってくるから」
そう言って早々に退散した。
ロイヤルアルバトロス号の脱衣場に駆けこんだ俺は裸になって、温海水を湯舟に入れて、ザブンと湯舟に飛び込んだ。
塩水が口にかかってしょっぱかった。
温塩水に肩まで浸かり、先ほどの記憶喪失について考えてみた。
俺はラブロマンスを受け付けない特殊体質なのかもしれない。それか、俺の錬金術は、俺の記憶と等価交換しているのかもしれない。そう考えるといろいろ思い当たることがあるようなないような。思い当たることがあれば記憶力を失っていないということなのでセーフなのか、それともアウトなのか。実に哲学的な問題だ。
バカなことを考えながらも急いで体と頭を洗ってもう一度湯舟に入って肩まで浸かり、50数えてから湯舟から上がってシャワーで塩水を流してから後始末をして、風呂から上がった。
居間に帰ったら、〇の錬金術師の第2話をアキナちゃんたちは見ていた。一日1話ではなかったようだ。せっかくだから俺も最後の方だけ見てしまった。
第2話が終わったところで、
「風呂の用意はできてるぞー」と、言ったらアキナちゃんが映像を停止して、みんな風呂道具と着替えを持って下の風呂に駆けていった。
アキナちゃんたちは夕食後、第3話も見るつもりのようだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
足立たち勇猛果敢の3人は、今日も学校帰りドト〇ルに立ち寄って飲み物とケーキなどを頼み、店の奥の席に陣取った。
「うちのお母さんのことなんだけど、今月の初めから働き始めたのよ」
「ほう」「そうなのか」
「うん。昔資格を取っててわたしが小学校に上がるまで働いてたみたいなの。わたしはそれまでおばあちゃんにみてもらってたんだけどね。で、おばあちゃんが病気になってお母さんはおばあちゃんの看病のため勤めていた事務所を辞めたって言ってたわ」
「ふーん」
「それで、勤め始めた会社のことを昨日話してくれたの。そしたらビックリなの」
「うん?」「なんだよ?」
「その会社、オストラン王国の出先だったみたいなの」
「うそ!」「ほんとか?」
「この前オストラン王国から来ていた視察団に一人だけ15歳くらいに見える女の子がいたじゃない?」
「覚えてる」「美人だったから俺も覚えてる」
「あの子が社長だったの」
「うそ!」「ほんとか?」
「ほんと。ね? びっくりしたでしょ?」
「びっくりした」「ほんとにびっくりした」
「さらにビックリするのはその会社どこにあると思う?」
「そりゃあ、東京のどっかだろ?」「そうじゃないか?」
「それがね、なんと、そこの商店街の先のマンションの一室なのよ」
「何だそりゃ?」「うそだろ?」
「ほんとなの。だってうちのお母さん歩いて通ってるって言ってるし。
たまたまなのか? 何かそこに必然があるのか? そこが問題よね」
「たまたまだろうけど。必然ってどういう意味?」
「良くは分からないけど、なにか特別な理由があるかもしれないじゃない」
「それはそうだ。何か理由が無けりゃ、東京の方が便利だものな」
「でしょ」
「それで、火野はどういった理由だと思ってるんだ?」
「全然思いつかない」
「そりゃそうだ」




