第412話 会議とその後
ロイヤルアルバトロス号の話はうやむやにして、その後俺は、
「国交が正式に開かれた後の話なんですが」と前置きし、
「オストラン王国では、日本に限らず地球の人々でポーションの治療を要する人を受け入れていこうと思っているんです。
今現在日本ではヒールポーションは薬品扱いできないこともありグレーな扱いですが、オストラン王国ではそういったしがらみが一切ないため、『治療』と堂々と銘打って患者にポーションを与えることが可能になります」
「良いお考えと思いますが、そうなりますと当方へのポーションの売却はなさらないということでしょうか?」
「いえいえ。防衛省さん、特にD関連局のみなさんにはお世話になっていますので、今後ともこれまで通りポーションを卸させていただきます」
「ありがとうございます」
「患者の受け入れ施設なども必要ですから何年か先になるでしょうが、ポーションでの国興しということで取り組んでいくつもりです」
「なるほど。しかし、オストラン王国と日本との行き来が自由にできない現状、患者や付き添いの行き来は岩永さんが請け負われるということですか?」
「わたしの勘ですが、4月あたりには、日本とオストランがダンジョンを介してつながるんじゃないでしょうか。あくまでわたしの勘ですがね。ハハハハ」
「岩永さんの勘は当たりますから、われわれも期待していましょう。ハハハハ」
なんだか、川村局長に見透かされているような気がしないでもないが、見透かされていたからといって今さら何がどうなるわけでもあるまい。
会議はそんなところで終わり、俺はポーションとメタルモンスターを卸して華ちゃんを連れて屋敷に戻った。
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会議室に残った野辺次長が、同じく会議室に残っていた川村室長に、
「川村室長、さっきの岩永さんの発言どう思います?」
「日本とオストランがダンジョンを介してつながる話だな。
つながるんじゃないか。岩永さんがそう言った以上」
「ですよね。どう見ても岩永さんはダンジョンマスターですよね」
「今回のこれが実現したら、断定してもいいだろうな。
しかしそうなると、今後わが国のエネルギーがダンジョンに依存していくことは明白な以上、わが国は岩永さんに逆らえないんじゃないか?」
「その通りだと思います。
国家の強権でどうこうできる相手ではないことは明らかですし。
逆に、岩永さんのような人がわが国のトップならこの国は今まで以上に平和にそして繁栄するんじゃないでしょうか?」
「われわれは現在の日本国に仕える国家公務員だ。めったなことを言ってはならない。
メタルゴーレムコマによる発電が余剰発電量を超えた段階で岩永さんがその気になり、ダンジョンマスター権限でメタルゴーレムコマを止めてしまえば、この国は大停電だ。この国は岩永さんのものになる。彼を止められるものはいない」
「幸いなのは岩永さんがそういったことに興味がないところですね」
「しかし、どういった経緯で岩永さんがオストラン王国の国王になったのか分からないが、岩永さんとて興味がないわけでもないんじゃないか?」
「そうでしたね。
いずれにせよ、だれにも岩永さんを止められないし、ましてわたしたちはいわば岩永さんと運命共同体ですからいい方向に世の中が転がっていくことを願うしかないんじゃないでしょうか?」
「その通りだ」
「そういえば、川村局長、岩永さんが船を作った話、どう思います?」
「作ったんだろうな」
「自宅での造船所で? DIYで?」
「本人がそう言っていた以上そうなんだろう」
「あの時の三千院さんの顔を見ましたか?」
「笑いをこらえていたな」
「最近三千院さんはよくあの顔をしてますよね」
「そうだな」
「岩永さんが嘘を言う人ではないとわたしは思っているんですが、隠し事は多いですよね」
「人間だれしも隠し事の一つや二つはあるからな」
「でも、あの感じだとその隠し事を三千院さんは知っているってことですよね」
「だな。岩永さんがダンジョンマスターであるならそのことも知っているんだろう」
「おそらくですが、船を作ったというのもダンジョンマスターの力で作ったということじゃないでしょうか? ダンジョンマスターの力を使って何を作ろうがDIYはDIYですし」
「そうだな。DIYだな」
「DIYと言ってる割にかなり立派な船じゃないでしょうか?」
「そうだろうな」
「豪華ヨットなら、一度乗せていただきたいものですね」
「いずれ機会があるかもな。大空洞の中では太陽がないそうだから日焼けはしにくいそうだ。わたしは日に焼けるとやけどする質なので、大空洞の青空の下で海パンで寝そべってみたいものだ」
「いいですね。定年までに実現したいものです」
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屋敷に帰った俺は、宮殿の電化の進捗を確認しようと思って発電室に跳んだ。
アスカ2号はいなかったが、既に8基の発電機の据え付けは終わっていた。配線はまだのようだ。外部部品だか何かを発注するとか言っていたので、それ待ちなのだろう。
ということは、今アスカ2号は宮殿内での配線作業中だな。配線作業程度ならアスカ1号も可能なので2号の手伝いで宮殿に出払っていそうだ。
アスカは目立つ上に俺がいつも連れ歩いているし、ローゼットさんも警備兵や官僚たちに周知させているはずだから、まさか配線作業中に宮殿内で拘束されることはないだろう。
宮殿内の配線作業は順調だろう。と、いうことで、何か荷物がマンションに届けられていないか確かめにマンションに跳んだ。玄関から廊下に上がって居間に入るとアキナちゃんの一人言が扉の向こうから聞こえてくるだけでアスカ3号は部屋の中にはいなかった。
アスカ3号は届いた荷物を運んでいるのか、どこかに買い物にでも行っているのか。
大きな荷物といえば、発電所関係の機械とロイヤルアルバトロス号の図書館用キャビネットくらいだからアスカたちで運ぶこともできるのだろう。どうしようもなければ俺を呼ぶハズだしな。
なので俺は、誰でも俺に用がある人間が俺を見つけやすくするために屋敷の居間に帰って俺の定位置であるコタツの中に入っていることにした。今日コタツの上に乗っているミカンは何だかいつものミカンとは違ってだいぶ大きな上にミカンのヘタの部分がポッコリ膨らんでいた。一つ皮をむいて実を出して半分に割ったら、薄皮が薄くてそのまま食べられそうだった。
なので、白い周りのケバケバを取って口に放り込んだら、甘くておいしかった。島フルーツ並みのおいしさだ。リサがどこかから買ってきてくれたのか分からないがグッドジョブだ。
そういえば、島バナナはアイテムボックスの中から出しておかないと緑のままなので、二房アイテムボックスから取り出して、食堂の窓際の台の上に置いておいた。
2、3日すれば食べごろになるだろうが、アキナちゃんが食べごろになる前に食べてしまいそうな気もする。
島バナナ以外の島フルーツもちゃんと毒見してみんなに出さないとな。
昼食後。居間で寛いでいたら、アスカ3号がやってきて双眼鏡の入った小包を渡してくれた。これを待ってたんだよ。どうせアキナちゃんが欲しがるし、他の子どもたちも欲しがるだろうから、包装をとった後、箱を開ける前に箱ごと5つコピーしておいた。
紙箱から取り出した発泡スチロールの内箱に入っていた双眼鏡は俺が思い描いたものと違い何だかゴツイし重かった。しかしアスカたちが選んだものだからいいものなのだろう。説明書をざっと見たところジャイロで手振れを防止するそうだ。そのため電池が必要らしい。付属の電池を入れてスイッチを入れたら確かに何かに動きを妨げられる感じがする。これなら手振れはなさそうだ。
こうなってくると船長の帽子が欲しくなってくるよな。船員たちには水兵帽だ。まてまて、うちの船員たちにはセーラー服だろう。その辺りまで来ると俺の想像の中だけにしておかないとエライことになりそうので決して口には出さないように口にチャック・ファスナーだ。
双眼鏡の他に船外用スピーカーも届いたそうでこれからアスカ3号がロイヤルアルバトロス号に取り付けて配線してくれるそうだ。アスカ3号は電気屋ではないがその程度のことはできるようだ。
俺は双眼鏡に付属のストラップを付けて、さっそく首から下げて、玄関から屋敷の外に出て周囲を見回して見た。周囲に高い建物があるわけではないのだが、見えるのは遠くの方の山とよそさまの屋敷の屋根だけだった。




