第407話 果物島探検2
廃墟の中にあったゆらぎの中に直接入っていくのは危険だということで、ゆらぎに向けてメタル大蜘蛛を放ってみた。
メタル大蜘蛛がゆらぎに入ったかと思ったら、ゆらぎに入ることができずそのまま通り過ぎてしまった。
「あれ? これはダンジョンのゆらぎじゃなくて、カゲロウか何かだったのか?」
「どう見てもダンジョン出入口のゆらぎなのじゃが、はて?」
「もしかしたら、ゆらぎの先がなくなってこっち側だけ残った?」
「謎だが向こうに行くこともできない以上どうしようもない。
そろそろ昼食時だから屋敷に戻ろう」
「「はい」」「デザートは島バナナじゃな」
そういうことなので、俺たちは探検をいったん中断して屋敷に戻った。俺たち一心同体の4人は防具だけ脱いで昼食をとった。
昼食のデザートにはアキナちゃんの要望通り島バナナを出したら、やはり好評だった。
昼食後少し休憩してから、俺たちは防具を着けて、ゆらぎのあるあの廃墟に跳んだ。
「このゆらぎがダンジョンのゆらぎで、以前はちゃんと動いていたとして、
ここにいた連中は、向こうと行き来してたってことだよな」
「それはそうじゃろうな」
「ここに住んでいた連中がいないところを見ると、ここの連中が向こうに移住したってことかな?」
「今現在向こうの出口がなくなっているところを見ると、その逆で、向こうからこっちに逃れてきたってことじゃないでしょうか」
「確かに。
向こうからこっちに人がやってきて、ここを拠点に広がっていったと考えた方が自然なのか。じゃあ、なんでここに人がいないんだろう?」
「わらわが思うに、向こうの世界。あえて世界と言うが、
向こうの世界が何かによって滅ぶ前にここに逃れてきた人々が記念にこの建物を作ったのではないじゃろか?」
「それで、逃れた連中はこちらの世界に広がっていきやがてここは忘れ去られた」と、華ちゃんがアキナちゃんの後を続けた。
「何だかロマンがあるな」
「この廃墟も、100年、200年とかの時間じゃなくて、1000年、2000年の時間で崩れ去ったのかもしれません。場合によってはそれ以上前かも」
「それもこれも、今となってはこのダンジョンのコアに聞く以外には確かめようはないな。
さて、傷んではいるが石畳の道をたどって先に行ってみるか? それともこの島の探検は止めて、ロイヤルアルバトロス号に戻ってコアを目指す探索を再開するか?」
「せっかくじゃから、もう少し先まで見てみたいの。それこそ人がまだ住んでおるかもしれんしの」
「じゃあ、もう少し進んでみるか。ゴーレム白馬に乗っていけばいいだろう」
ゴーレム白馬とゴーレム列車の先頭車を出して、俺たちは半ば草に埋もれ傷んだ石畳の道を進んでいった。
道を進んでいくとちらほらと石造りの家のようなものが見えてきた。もちろんいずれもわずかに壁を残しているだけで人の気配などはどこにもない。どの廃屋も故意に破壊された感じはなくいずれも人が住まなくなって時間が経って自然と崩れてしまった感じがした。
「なんだか、住んでた連中が住処を捨ててどこかに移動したって感じだよな」
「移動した理由って何でしょうか?」
「うーん。日本みたいに田舎は嫌だから都会に移住するように、どこか他所で住みやすい土地を見つけたとか。逆に何かの災害の前触れを知って逃げたとか。例えば津波のような」
「津波がこの島に来てたらここの廃墟はなくなってたんじゃないです? あまり高い山はないかもしれないけど、それでも、200メートルくらいの丘はここからでも見えるし」
「華ちゃんの言うように、津波はなかったかもな。そもそもここはダンジョンの中だし。
となると食糧危機でよそに逃げた?」
「果物があんなに生っているのに飢饉ですか?」
「あの果物はここが廃墟になった後に生えたのかもしれない。もともとこの島の気温は階段の下り口あたりの気温で、それこそ何かの災害の後気温が暖かくなって。
気温が上がれば好き嫌いの前に、それまで植えていた作物もできなくなるだろうしな」
「なるほど、災害のせいかどうかは別として気温の急激な変化で飢饉になり、どこか別の土地に逃げた。それはあり得ますね」
「真実を知ってもいまさらだが、いちおう向こうに見える丘の上に上ってこの島の様子を掴んでからロイヤルアルバトロス号に戻ろうか」
「「はい」」「そうじゃな」
俺たちはそこから1時間ほどかけて高さ200メートルほどの丘の上に登った。丘の上の周辺に木は生えていなかったので、そこから島を見渡すことができた。
島の全容というわけではなかったが、かなり遠くまで見渡すことができた。ロイヤルアルバトロス号が停泊した位置から回り込むとその先は大きな湾になっていて、その湾の岸にも廃墟の跡が残っていた。港町だった可能性もある。もし何らかの理由でこの島に住んでいた連中がこの島を捨てて逃げ出したのなら、海の波は穏やかなので、船でこの島から逃げ出した人も多いかもしれない。
丘から見下ろした島の中には、そのほかにも廃墟にみえる集落がいくつかあった。
この島に利用価値があるのかというと、将来的に観光資源にするくらいしか思い浮かばないが、観光資源的にはかなり貴重な資源だ。
「これで見るものは見たから、そろそろ帰るか」
「そうですね」「はい」「そうじゃな」
俺たちはゴーレム白馬とメタルゴーレム列車の先頭車から下りて、それらを俺が収納した後、屋敷に跳んだ。
屋敷に跳んだら、華ちゃんがさっそくロイヤルアルバトロス号のブリッジに置いたままにしていたピョンちゃんを連れ戻してきた。俺はすっかりピョンちゃんのことを忘れてた。
ピョンちゃんには心の中で詫びて、ちょうどいい時間だったので俺は風呂を準備してさっそく湯舟に浸かった。そして今日の廃墟のことをじっくり考えてみた。
『建造物があったということは、人がいたってことだろう。モンスターでもなく動物でもなく人だ。
あの大空洞の広さは不明だが、一つの世界と考えていい。
ダンジョンの中で類人猿が人に進化して文明が生まれたのか? ダンジョンの外から中に入って棲みついたのか?』
『ニューワールドに拉致召喚された時は、周りにいたのはどこからどう見ても人間だったし、あれを人類のファーストコンタクトという意識を持ったことはないが、あの島にいた人らしきものとは純正の人間とは限らないわけで、彼らに出会えばそれこそファーストコンタクトに成り得る』
『言葉の問題もあるし、何が起こるか分からない。襲ってくるようならたとえ人の姿かたちをしていても戦わざるをえない』
『華ちゃんたちを人間とは戦わせたくないから俺が戦うしかないな。
最大戦力を欠いた状況でもダンジョン内だからゴーレムも使える。今ではメタルドラゴンゴーレムもいくらでも作れるから、戦いとなったとしても負けることはないだろう』
『明日は宮殿への出勤日だし、明後日は防衛省の会議だし。俺って案外忙しいよな』
ロイヤルアルバトロス号は停泊したままだが、護衛モンスターもいるし、あのままでいいだろう。




