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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第401話 RA号1、試運転


 船内の内覧を終えた俺たちはアッパーデッキ(上甲板)のキャビンの居間に集合した。


「これから俺とアスカ2号はブリッジに上がって船の性能試験を始めるから、みんなは自分の部屋の備品で足りないものや欲しいものがないかチェックしていってくれ」


「「はい」」「わらわもブリッジで様子を見ていたいのじゃ」


 俺とアスカ2号とアキナちゃんはタラップでブリッジに上り、リサは台所のチェック、はるかさんと華ちゃんは寝室のあるミドルデッキに下りていった。



「それじゃあ、速度試験だな。

 アスカ2号、どうやってこの船を運転するんだ?」


「ロイヤルアルバトロス号の舵輪に向かって『ロイヤルアルバトロス号、出発準備』と口頭で指示してください。実際は出発準備でも出港準備でも意味さえ同じならロイヤルアルバトロス号は反応します。

 ロイヤルアルバトロス号だと長いのでRA号、RAでも構いません」


「了解。

 RA号、出発準備」


 舵輪の前にはモニターが3台並んでいたのだが、そのモニターが起動した。


 左のモニターに映し出された画像は、レーダー画像、右のモニターには音響測深機で探った海底の地形が映し出されているようだ。そして中央のモニターには速度、水深など文字が映し出されている。何気にカッコいい。


 俺たちのいるブリッジからでは見えないが錨が巻き上げられているようだ。


 3台のモニターの下にたくさんランプが並んでいて、そのうち2つのランプが赤から緑になった。


「錨が上がりました」


「それじゃあ、RA号、微速前進!」


 エンジンの振動は全く感じられないのだが、RA号はゆっくり進みだした。


「RA号への指示は漠然としたもので構いません。

『RA号、このまま直進して岸を目指せ』でも構いません」


「それだと、岸に乗り上げないか?」


「RA号はレーダーや音響測深機のデータをもとに水深が浅い場合など座礁を避けるよう転舵ないし加減速を行ない、岸から安全な距離を保ち停船します」


 優れモノだ。


「RA号もう少し速度を上げてくれ」


 RA号が加速を始めた。レイダーや音響測深機とは別のモニターに速度が表示されている。


「10ノット=時速18.5キロか。船に乗っていると10ノットでも結構早く感じるな。

 20ノットまで増速!」


 ……。


 いつまで経ってもモニターの速度表示は変わらず増速しない。


「あれ? 増速しないな?」


「ゼンちゃん『RA号』と呼びかけないと反応しないと思うのじゃ」


「確かに。

 あらためて、RA号、20ノットまで増速」


 見る間に速度表示は20ノットになった。


「よーし、水深も100メートルを超えたからそろそろ最高速度に挑戦だ。

 RA号、最高速!」


 船内にはエンジン音が聞こえるわけでも、振動が伝わってくるわけでもないのだが、RA号の速度はぐんぐん上がっていった。船首の作る波がだんだん大きくなってきた。


 モニターに表示される速度が30ノットを超え、33、34、35、36。そこでしばらく間が空き37ノット、そしてまた間が空いて38ノット=時速70.3キロ。これが最高速度だったようだ。


 10分ほどそのまま全速力で進んでいった。レーダーのモニターには出発した岸周辺の地形が映っている。


「しかし、この海。本当の海みたい広いな」


「ゼンちゃん。わらわが思うに、生まれて間もないZダンジョンであの広さの空洞が32個もあったのじゃ。

 このダンジョンがどれくらい古くからあるのかわらわでも知らぬが、ひょっとしたらこの海はとんでもなく広いのかもしれぬぞ」


「さすがに、いくら広くてもZダンジョンの大洞窟くらいじゃないか?」


「そうじゃろか?」


「今日は試運転だから、それほど遠くには出かけないけど、そのうち本格的に航海して見れば意外と早く岸が見えてくるよ」


「そうじゃな。

 それはそうと、この船は快適じゃから屋敷とここを結べんかの?」


「結ぶ?」


「いつものダンジョン経由で、チョチョイのチョイで」


「いくらコアといえども動いているものにダンジョンへの出入り口を繋げられないんじゃないか?」


「そうじゃろか?

 たとえば、ゼンちゃん、この船から屋敷に跳んで帰ることはできるじゃろ?」


「できると思うぞ」


「じゃあ、屋敷からこの船に戻ってくることはどうじゃ?」


「できそうだな」


「そもそも、地球は回っておるし、その地球は太陽の周りをものすごい速さで回っておるのじゃろ?

 それでもダンジョンの入り口がちゃんと動かずに止まっておるではないか。ならばこの船の中にダンジョンへの出入り口を創るなぞ造作もないことと思うぞ」


「確かに。動いていてもいいかもしれないけど、いったん停船して、居間の壁に揺らぎを作ってみるか。もしそれができたら、屋敷と行き来できるしワイファイも引けるぞ」


「楽しみじゃな」


「RA号、ゆっくり停船」


 RA号の速度がすこしずつ低下してそのうち停止した。


「アキナちゃん、ちょっとコアルームにいってみる」


「了解なのじゃ」



 俺はコアルームに跳んで、


「通路にしている部屋で残っている壁を、ここに繋げてくれ」


 コアに手を置いて、俺はRA号の居間の壁を思い描いた。


「できました」


 簡単にできてしまった。


「コア、サンキュウ」


 俺は連絡部屋に跳んでそこに新しくできたダンジョンの出口、黒い板の中に入っていった。


 その先はちゃんとRA号の居間だった。


 居間の中には誰もいなかったが、アキナちゃんが上から下りてきた。


「どうやらうまくいったようじゃの。わらわの思った通りじゃった」


「うん、これで相当便利になった」


「ところで、ゼンちゃん。この船はいったん造船所に戻すんじゃろ?」


「壁を取り払って子ども部屋を広げたりしたいからな。それに揺らぎが居間の壁にあると見た目があまりよろしくないから周りを囲むよう小部屋を作った方がいいだろう」


「それは良いのじゃが、どうやってこのロイヤルアルバトロス号を造船所に戻すのじゃ?」


「もちろん俺のアイテムボックスに収納して造船所に跳んでいって架台に乗っけるだけだ」


「どうやってアイテムボックスに収納するのじゃ?」


「あっ! 俺が乗ってちゃまずいし、屋敷に帰ってしまえばさすがに収納認識できないし」


「どこかの岸からこの船を見ながらじゃないと収納できないじゃろ?」


「ここまできたけど、出発点に戻るしかないな」


「じゃろ」


「俺は上に上がって出発点に戻るようRA号に指示してくる。

 アキナちゃんは居間に誰か戻ってきたら、ロイヤルアルバトロス号は引き返し中だと伝えてくれ」


「了解なのじゃ」



 ブリッジに戻ってロイヤルアルバトロス号に元来た場所に戻るよう指示したら、RA号はゆっくり回頭を始めた。


 回頭が終わり船の正面には陸地がはっきり見えた。そしてRA号は増速を始めた。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] うーん、高性能なんだけど、周りの環境のスケールがデカ過ぎてスペックが足りてない感、水中翼船に改造するか、舷側に水中翼船用の可変式下駄を取り付けてみては?ゴーレム推進機を取り付けてやれば…
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