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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第400話 ロイヤルアルバトロス号、内覧会

400話。皆様のおかげです。ありがとうございます。


 昼食までコミックの再読で暇をつぶした俺は、ローゼットさんと昼食をとってから、気分良く屋敷に戻った。国王陛下がコミック、それも再読で暇をつぶす国は少ないかもしれないが、まさか俺だけということはあるまい。



 屋敷に戻ったら俺のところにアスカ2号がやってきて、マンションに荷物が届いたので造船所まで運ぶよう頼まれた。エレベーターに入らない荷物は駐車場に置いたままなので急いでそれを収納し、うちのマンションの玄関前のテラスまで運送屋によって運び上げられていた荷物をその後収納した。


 荷物を収納し終わった俺は、アスカ2号を連れて造船所に跳んだ。


 造船所で荷物を下ろしたら、ゴーレムたちが集まってきて、残した足場に取り付けられた荷物搬入用の傾斜路を上っていき、船上に運び上げていった。



 俺はヘルメットを被って船の中を見せてもらったが、もう完成といってもいい感じにまで仕上がっていた。


「アスカ2号、これなら週末前に竣工して試運転できそうだな」


「はい」





 俺はそれから数回マンションに届けられた荷物を造船所に運んだ。


 そして、金曜の午前中、ロイヤルアルバトロス号が完成したとアスカ2号から報告を受けた。


 俺は造船所に跳んでいき、その場で収納した。そして念のためコピーしておいた。かなり大きなものだったので素材が不足するかと思ったが問題なくコピーできた。



 昼食時。


「ロイヤルアルバトロス号は完成したので、試運転を13時くらいからしよう。

 みんな時間になったら玄関ホールに集合な」


「「はい」」


「ようやく完成したのじゃな。嬉しや」


「アキナちゃん、トレードの方は大丈夫なのか?」


「月曜の朝には大儲けすることは確定しておるので、放っておいても大丈夫じゃ」


「それならいいな。

 ネットは使えないけどそれ以外ならこの屋敷よりもロイヤルアルバトロス号の方が快適だからな。

 大空洞の湖だか海でしか使えないから、長期の航海はできそうにないところは残念だけどな。台所もあるし、デッキの上でバーベキューも簡単にできるから楽しいんじゃないか」


「「楽しみー」」


 昼食が心持ち早く終わり、食後のデザートの楽園イチゴをみんな急いで食べて、後片付けが始まった。


「みんな、靴は運動靴をはいた方がいいぞ。そのうち本物のデッキシューズを買った方がいいかもな。ワーク○ンで売ってればいいのにな?」


「あそこなら作業に関係しそうな身に着ける物はなんでも売っていますから、たぶん売ってるんじゃないでしょうか?」と、華ちゃん。




 みんなそわそわしていたので、時間を早めて、探索を中断した大空洞の岸辺にみんなを連れて跳んだ。もちろんアスカ2号も一緒だ。


「ええっ!? ここがダンジョンの中?」


 大空洞の中を始めて見たはるかさんは相当驚いていた。もちろんはるかさんにも大空洞の話はしているのだが百聞は一見にしかず。そのままだ。


 当然一心同体のキリアとアキナちゃんは平然としているが、エヴァたちも口を半分開けていた。



「それでは、ロイヤルアルバトロス号を水の上に浮かべます」


 水平になるように注意して岸から100メートルほど離してロイヤルアルバトロス号を浮かべてやった。


 上下の揺れが落ち着いたところで、


「それじゃあ乗ってみましょう」


 みんなが手を取ったところで、ロイヤルアルバトロス号の船尾のデッキの上に転移した。


「大きい!」


「すごい」


 建造中の様子はみんな見ているはずだが、上に上がれば何かしら思っていた以上のものがあったのだろう。


 そういった感想をみんなが口にしている中、アスカ2号が、


「マスター、船底に大型のバラストタンクとバラストタンクを兼ねた小型のタンクが2つずつありますので、大型のバラストタンクには適当な水を、小型のバラストタンクには清水の注入をお願いします。わたしは発電機を起動して錨を下ろし、ジャイロスタビライザーも起動しておきます」


 ジャイロスタビライザーと聞いて一瞬『?』となったが、きっと横揺れ防止のコマのことだろう。


 アスカ2号はステンレスの梯子を上って一番上の階層にあるブリッジに向かった。


 俺の方は2種類のタンクを認識して、立ったまま大型のバラストタンクには海水を、清水タンクには飲料水を入れて満タンにしておいた。だいぶ喫水が下がった。


 上に上っていったアスカ2号がブリッジから操作したようで、船首の横から鎖につながった錨が水面に下りていき、しばらくして鎖が止まった。錨が利いているのかどうかは分からないが船が流されて移動すれば錨は利き始めるだろう。


 ブリッジから帰ってきたアスカ2号に案内を任せて俺たちは船内を内覧していった。まさにマンションの内覧会だ。船内の照明はちゃんと点いていてかなり明るい。わずかに空調の音がする。


 船内各デッキには前部と後部で2カ所折り畳みできるタラップが付いている。


 後ろ側のタラップを下りていき船底から見学を始めた。まずは機関室。説明者はアスカ2号だ。


「ロイヤルアルバトロス号は直径75センチのメタルゴーレムコマを動力とした2800馬力のエンジンを4基搭載(11200馬力)しています。これにより予想最高速度35ノット、時速にして65キロで航行できると考えていますが、実測すればもう少し速度を出せると思います。

 ここに並んでいる4機の大きな機械がそのメタルゴーレムエンジンになります。ゴーレムコマはブリッジからの電気信号に反応して回転数を上げ下げします。もちろん逆転も可能です」


 機関室から水密扉を抜けた先には大きな囲みの付いた機械が真ん中にありその両側に発電機が左右各1基置かれていた。発電室の左右の空間は給排水用のポンプ室になっているそうだ。


「ここはジャイロ兼発電室になります。真ん中の大きな機械がジャイロで内部でコマが高速で回転しています。コマの軸が水平かつロイヤルアルバトロス号の船首から船尾までの軸に直角になっているため、ジャイロ効果で横揺れを低減します。

 発電機の出力は1基当り130kWですので2基で260kWになります。発電機はこのほかに非常用として、ブリッジデッキにあるブリッジの奥に130kWの発電機を置いています。ここにある2基が浸水などで停止した場合、自動で起動するようにしています」


 発電室の水密扉を抜けた先にかなり大きな部屋が広がっていた。今までの部屋は幅が狭かったがここは幅も広い。そして部屋の両脇には水中展望窓が並んでいた。熱海の遊覧船で見た展望窓はそれほど大きなものではなかったが、ここに並んだ展望窓は横長の楕円形で、長さは2メートル、高さは1メートルある。それが左右に4枚ずつ並んでいる。


「おおー」


「ほーー」


「「すごい!」」


 熱海の海では魚やイカがたくさん泳いでいたのだが、ここでは残念ながら魚は近くに見えなかった。そのかわり水が透き通っている関係でかなり遠くまで見通せ、遠くの方で泳いでいる魚が見えた。海藻らしきものも生えているので、生き物のいない海ではないようで安心した。


 水中展望室の先には空室が並んでいた。いちおう倉庫の予定だそうだが、俺が乗っている以上あまり意味はない。その先は錨の鎖を納める錨鎖庫だそうだ。


 バラスト用清水タンクの他に船底各室の床下や、各部屋と船側との間の空間に海水などをポンプで注入しバラストタンクとしている。


 船底見学を終えた俺たちは前方タラップを上がり、アッパーデッキ(上甲板)から1段下りたミドルデッキにでた。


 この階は、各人の寝室や風呂場、洗面所、トイレなどが並んでいる。寝室には大きなガラス窓が取り付けられているのが特徴的だ。風呂場は船尾にあり3方向がスモークガラスで覆われている。広さは10人が一度に入れる広さだ。屋敷の風呂よりもちろん広い。風呂場にはサウナを付けることもできたのだが、熱海の件もあるのであえてサウナは付けていない



「寝室の扉には名札を貼っているから、そこが自分の部屋だ。空いている部屋はまだあるから、好きに移動してくれていいぞ」


「わらわたちは、同じ部屋でいいと思うのじゃが、机を置くとなると5人では少し狭いのじゃ」


「アスカ2号、造船所に戻ったらアキナちゃんたち用に壁を取っ払って、2部屋繋げてしまおう」


「はい」


 ミドルデッキの次はアッパーデッキ(上甲板)。アッパーデッキの舷側にはステンレス製の手すりが巡らしてあり、キャビンの中にあるタラップを使わなくても、一段上のブリッジデッキへの梯子が数か所に取り付けられている。


 そのアッパーデッキ上には金属製の箱が数カ所に置かれていて中には浮き輪、救命胴衣などが納められている。


 アッパーデッキのキャビンには居間と食堂と台所がある。居間は屋敷の居間ほどではないがかなり広い。食堂は屋敷の食堂よりも広くなっている。台所はオール電化製品だ。食器棚に納められている食器などはプラスチック製のものだ。居間の壁の3方向の上半分はガラス張りになっているので見晴らしはよい。


「この居間なら、ピアノも置けるのじゃ」


 確かに。グランドピアノも置けないことはないが、アップライトで十分だろう。オリヴィアが嬉しそうな顔をしたので、俺は居間の隅の方にインシュレーターとかいうピアノの脚の下に置くゴムを敷いてその上にアップライトピアノを置いてやった。船が大きく傾くと危ないので、あとで足を固定してもらおう。


 アッパーデッキから一段上がったブリッジデッキのブリッジでは、舵輪の前にモニターが並んでいた。モニターの下にパイロットランプが全部緑に点灯していた。ブリッジの前面の窓にはワイパーが取り付けられている。このダンジョン内で大雨が降ったり、海の上が荒れたりするのか分からないが備えあれば憂いなしだものな。ブリッジデッキの後方はテラスになって船外で飲食もできるようになっている。


 ブリッジの上の屋根部分コンパスデッキにはレーダーなどの機械装置の部品が乗っかって、屋根には梯子で上り下りする。


 船底以外の各デッキの床は白い板製だ。見た目は木なのだがプラスチックなのだそうだ。





        ―――――           コンパスデッキ

    ―――――――――――――――――   ブリッジデッキ

――――――――――――――――――――――― アッパーデッキ(上甲板)

 ―――――――――――――――――――――― ミドルデッキ

  ――――――――――――――――――――  船底




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― 新着の感想 ―
[一言] 400話おめでとうございます。そして、毎回、楽しいお話ありがとうございます。 これからも頑張って下さい。
[気になる点] 完成後に壁を抜いたりすると強度が落ちたり、左右・前後・上下等のバランスが崩れて危険な気がします アスカ2号がなんとかしそうな気がしますが
[一言] 地球での船は底に海藻や貝やフジツボが付着するので、定期的なメンテが必須なのですが、この場所は大丈夫そうですね。
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