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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第397話 後藤真由美1


 夕食後風呂から上がったはるかさんはすぐに友だちに電話したそうで、さっそく明日の午後7時にマンションにやってくることになった。はるかさんの友だちの名まえは後藤真由美さん、はるかさんと同い年だ。


 後藤さんがマンションに到着したら、アスカ3号にそのまま屋敷の応接に連れてくるよう指示している。


 そういうことなので、明日の算数の授業はお休みになる。子どもたちへの算数だが、今は中学生レベルの数学を教えているらしい。




 そして翌日。


 その日朝から俺は、頭の上にミスリルヘルメットをかぶり邪魔にならないように造船所の隅の方からロイヤルアルバトロス号の艤装工事を見物していた。船体への塗装は終わっている。表面が鋼鉄製ではないので当たり前だがさび止めは塗っていない。真っ白な船体に青いラインがカッコいい。


 船体の中央部分、喫水線下から斜め下に向かって左右2枚のヒレが伸びている。航行中、船の揺れに対応してヒレの角度を適切に調整することで横揺れをかなり防げるそうだ。さらに、船底部に軸を水平にしたメタルゴーレムコマを回転させてジャイロスタビライザーとしているので停船時でも横揺れをかなり防げるそうだ。


 船内の配線、配管は完了して、壁材も張られており、レーダーや測深器といった航行に必要な機器の取り付けも完了している。白い屋根の上に乗っかっているレーダードームもカッコいい。後は注文中のベッド、ソファー、厨房器材などの後付け器材が届いてそれらを設置すれば完成だ。


 


 昼食後。アキナちゃんの様子を見ようと思ってマンションに顔を出したら、雨音がかすかにしていた。居間のカーテンをめくって外を見ると雨がけっこう降っていた。


 アスカ3号によると雨は昼まえから降りだしたそうだ。


 アキナちゃんのトレーディングルームからは、高笑い、忍び笑い、そしてパチパチパッチーンが聞こえてくる。扉を開けて様子を見ようと思ったが止めることにした。



 後藤さんがあいさつにやってくるころには小降りになっていてくれればいいと思っていたのだが、スマホで天気予報をみると、夕方から雪が降るような予想だった。しかも大雪だ。大丈夫だろうか。最寄りの駅からマンションまで10分近くかかる。大雪の中初めての場所を探すのは大変だろう。


 夕食を早めにとって、後藤さんを待つことにしていたのだが、午後6時10分にはるかさんのスマホに電車が遅延して30分ほど遅れそうだとメールが届いた。


「向こうは雨だし、困っちゃいましたね。

 駅まで迎えに行くか。

 はるかさん。後藤さんに、茶色の毛糸の帽子をかぶった男が迎えに行くから駅の西側の出口にでたら連絡してくれるようメールしておいてくれますか?

 あと後藤さんの服装を聞いてください」


「はい。

 ……。

 送信しました」


 はるかさんが送信して5分ほどで返信があった。


「服装は、ベージュのコートを着て、黒ぶちの眼鏡をかけているようです」


「了解。

 連絡が来るまで仕方ないので、コタツに入って待ってましょう」


 しばらくコタツに入っていたら、はるかさんのスマホにメールが届いた。


「駅に着いたそうです」


「それじゃあ迎えに行きます」


 俺は靴を履いて駅の西口の手前に転移した。


 大雪で魂消たまげてしまった。人はみんな傘をさして足早に通り過ぎていくので、いつものようにいきなり現れた俺のことに気づいていないようだった。


 俺は急いで駅の(ひさし)の中に入って、西口に向かったら、そこで立ち止まっている女性がいた。顔は見えなかったがベージュのコートを着ていたので、後藤さんだろう。


 女性に近寄り、


「岩永ともうします。後藤さんですか?」


「あっ! はい。後藤です。遅れてすみません」


「この天気ですから。それじゃあ、うちにお連れします。ここではさすがに人が多すぎるので少し移動しましょう」


 後藤さんは、俺の言葉がやはり理解できたような顔ではなかったが、素直に俺についてきてくれた。


「後藤さん、変な意味じゃないんですが、わたしの手を取ってもらえますか。その前に傘を持ちましょう」


 後藤さんが持っていた傘を預かり、恐る恐るといった感じで後藤さんが俺の二の腕を摘まんだところで、


「ビックリするかもしれないから目を閉じていた方がいいかもしれません」


 そう言ったけど、後藤さんは目を開けたままだった。仕方ないのでそのまま後藤さんを連れて屋敷の玄関ホールに転移した。


「真由美、久しぶり」


「はるか。ってここどこ?」


「ここは、岩永さんのおうち。わたし今ここで暮らしているの」


「えっ! 同棲?」


「何言ってるのよ。家族のような感じで下宿してるって真由美には教えてたでしょ?」


「そ、そうだったっけ?」


「そうなのよ。真由美しっかりしてよ」


「二人とも、玄関で話していても仕方ないから応接室に移動しましょう」


 応接室はエアコンを点けているのでかなり暖かくなっているはずだ。


「はい」


「は、はい。

 オウム?」


 ピヨン、ピヨン。


 ピョンちゃんのことが気になるのだろうが、とにかく応接室に入ってもらった。そこで俺はアスカ3号に来客を待てと言っていたことを思い出したので、スマホからマンションに電話してアスカ3号に来客は俺が連れてきたと連絡しておいた。


 ただ待たせていたら、いくらゴーレムといってもかわいそうだものな。思い出せてよかった。


 応接室の中はかなり暖かだった。後藤さんからコートを預かりコートかけにかけておいた。預かった傘はアイテムボックスの中だ。後藤さんは俺が玄関のどこかに置いたものと思っているのだろう。


 後藤さんを座らせ、俺とはるかさんが並んで向かいに座った。


「まずはごあいさつから。

 岩永善次郎です。日本的な肩書は、防衛省の特別研究員というのとイワナガ・コーポレーションの会長というのがあります。はるかさんも防衛省の特別研究員ですけどね」


「は、どうも。後藤真由美です。

 今は、塾で数学の講師をしています」


 やはりリケジョだったか。数学の先生というのは実に頼もしいな。


 話をしていたら扉がノックされ、エヴァがお茶をワゴンの上に乗せて運んできてくれた。


 エヴァは、ちゃんとお客さまの前に最初にお茶のカップを置いた。


「どうぞ」


「どうも」


「ありがとう」「エヴァちゃんありがとう」


 はるかさんと俺の前にお茶を置いてエヴァは一礼して応接室から出ていった。


「養女ですが娘のエヴァです。

 先ほどわたしが会長をしているという会社ですが、会社があった方がいいだろうということでこのエヴァが創ったんですよ。本人は社長です。社員はまだ2人しかいませんが、資本金は100億あります」


「社員2名で資本金が100億? えっ!?」


「岩永さん、お金持ちなの。それも想像できないくらいの」


「想像できないくらいお金持ち。はあ」


 想像できないくらいだから想像できないよな。


「それはそれとして、その会社ですが、実は後藤さんを受け入れるにあたり日本の社会保障を受けた方がいいだろうという意味も含めて創った会社です」


「はあ」


 頭が追いつかないかもしれないが、あとではるかさんにじっくり聞いてくれればいい。


「早いうちにここの生活に慣れてもらった方がいいと思うんですが、いつくらいからこちらで働けるようになりそうですか?

 こちらで働くという意味は、まず後藤さんにイワナガ・コーポレーションの正社員になっていただきます。

 勤務地はこの屋敷の隣りにある学校ということになります。住居はこの屋敷です。申し訳ないですがはるかさんと同室になります。

 まず、日本円での給与は年収で1000万円を考えています。月給55万+ボーナス3カ月2回といった水準になります。

 この金額はイワナガ・コーポレーションの管理職相当になります。

 それに、はるかさんと同じように1年あたり金貨120枚が加わります」


「年収1000万というと今の2倍半。そんなに頂いていいんですか?」


「まあ、1000万ですし」


「はあ。それと金貨? メープルリ〇フ金貨ですか?」


「今は似て異なるものと思ってください」


 国交が正式に樹立されれば為替も決まって、日本でもオストランの金貨を両替できるようになると思うんだよな。主な両替商はイワナガ・コーポレーションになるだろうけどな。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらず、女性に『だけ』挨拶する、あざといピョンちゃん(笑)
[気になる点] ふと思いましたが、神殿から紙幣を造幣してもらうのはアリかもですなぁ、実際に作るのは他でも構わないが、偽造防止というか、劣化防止というか、祝福を付与したら安心して使える様になるかもですね…
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