第392話 視察団帰国。イワナガ・コーポレーション3、採用面接1
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俺が日本の第1ダンジョンまで迎えに行ったわけだが10日間の視察を終えた視察団が帰ってきた。
その10日間のあいだ。
華ちゃんによるとネットではオストラン視察団のニュースがかなり流れていたそうだ。どれも好意的な内容だったようだが、視察団全員、日本語がペラペラだったことが衝撃だったらしい。
このことについて、以前山口某がテレビで話していたそうで、山口某のコメンテーターとしての評価は爆上がりしたそうだ。どうでもいいけどな。
それと、エヴァのファンクラブができたらしい。そうなってくると、やたらと街中を歩けなくなるよな。
そして今俺は玉座の間で、帰国したというか俺が連れ帰ったエヴァを含めた視察団員10名を前に一席ぶっているところだ。
「みんなご苦労。
今回の視察でみんな思うところがあるだろう。
王国を発展させるため、それを活かしてくれ。
王国の未来はきみたちにかかっていると言っても過言ではない」
「「はい!」」
出発前の『はい!』も元気がよかったが、今の『はい!』はあの時以上だ。収穫はあったようだ。
視察団員たちが解散し、エヴァが俺の前にやってきた。
「陛下、ありがとうございました」
「ご苦労さん。
うちに帰って夕食を食べてゆっくり休んでくれ」
「はい」
「それじゃあ、ブラウさん。よろしく」
「はい、陛下」
もう夕方だったので、ローゼットさんを神殿に帰し、それからエヴァともども屋敷に帰った。
もう遅かったので子どもたち用に風呂の準備をしただけで俺は風呂には入らなかった。
子どもたちが風呂から上がって、髪を乾かしてからしばらくして夕食になった。
「エヴァ、日本はどうだった? 今まではスーパーとかデパートとかの小売くらいしか見ていなかったから、少し驚いただろ?」
「ハナお姉さんとDVDを何度も見てたから、そんなものなんだろうなー、って思ってたんだけど、実物は違ってました。向こうの世界のすごさを今まで以上に感じたけど、逆にオストランは伸びしろがあるわけだし、ちゃんとした目標ができたことで、かえって良かったのかもしれないと思いました」
「なら、よかった」
「お父さんありがとう」
「うん。
それはそうと、イワナガ・コーポレーションのことだけど」
「視察中にもアスカ3号がメールしてくれていたのでだいたいのことは分かります」
アスカ3号はかゆいところに手が届くやつだな。人間だったらボーナスものなのだろうが、アスカたちは何か貰うと嬉しいのだろうか?
「聞いているならいいけど、明日は採用面接だからな」
「はい」
入社希望者は労務管理者、経理責任者各定員一名のところ、それぞれ2名応募している。
労務管理者2名は9時30分から、経理責任者は10時から一人15分で面接する予定だ。マンションの空いた部屋を面接会場と待合室にする予定で、面接会場の部屋には長机にスチール椅子3脚、その前にスチール椅子が1脚。待合室には念のためスチール椅子を4脚用意している。
「明日が楽しみなのじゃ。
わらわは華ちゃんのDVDで見た圧迫面接というのを一度やってみたかったのじゃが、夢が早々に叶う訳じゃ」
未成年者に妙なドラマは見せない方がいいんじゃないか? 神さまに圧迫面接されるとなると入社希望者にとっては得難い経験になるだろうが、なんの役にも立たない経験だろう。
翌朝。
珍しく屋敷の方は朝から雨だった。だからどうなるわけでもないが。
今日は週末なので王宮への出勤日なのだが、午前中はイワナガ・コーポレーションの採用面接があるので午後から出勤することにした。
定時にオストラン神殿へローゼットさんを迎えにいかないとローゼットさんが心配するので、いったん神殿の大ホールの出口辺りに跳んだ。そこから大通りの方向を眺めたら、曇り空だったが雨は降っていなかった。
大ホールで俺のことを待っていたローゼットさんに、
「ローゼットさん、申し訳ないけど、午前中用事ができたんで、午後から宮殿にいきます」
「了解しました。
宮殿でお待ちしています」
「それじゃあ」
オストラン大神殿から屋敷の玄関ホールに跳び、そこで待っていたエヴァとアキナちゃんを連れダンジョン経由でマンションに移動した。
マンションで待っていたアスカ3号を連れて玄関の扉を開けたら、日本晴れともいえそうな雲一つない快晴だった。
俺たちは直接会社に跳んでいかず、4人で素直に歩いて会社に行った。
会社の鍵を開けて中に入り、照明をつけ、エアコンも動かしておく。窓にはカーテンではなく会社らしくブラインドを付けているので照明を点けないと結構暗い。
アスカ3号を連れてきたのは、面接官3名だけでは格好がつかないので、助手として応募者の面倒をみさせるためだ。
面接開始は9時30分。
9時10分に最初の応募者がマンションにやってきた。
1階のオートロックを開けてやったら、3分ほどで会社に到着した。
アスカ3号が控室に案内して椅子に座らせた。
それからすぐに2人目が現れ、しばらくして面接開始時間となった。
最初の応募者の名をアスカ3号が呼んで、面接室に案内した。
面接室では、俺たち3人が長机の後ろの席に座って偉そうにしているのだが、席順は、扉に近い方からエヴァ、アキナちゃん、俺の順だ。
「足立康人さん」
「はい」
「これまで、大企業で労務管理のお仕事をされていたのにお辞めになられたのは、どういった理由でお辞めになられたのですか?」
履歴書を見る限り労務管理をする上での経験や資格等は申し分ないようだ。リクルート会社を通してここにきている以上当たり前か。
「お恥ずかしい話ですが、役員の不正を見つけ告発しようとしたところ、告発する前に証拠を握りつぶされてしまい、会社に居づらくなって辞めました」
「なるほど」
正義感の強い人物なのか。あまり正義感が強いのも考え物だし、さらに言えば今の話が全く逆のパターンの可能性もある。
はっきり言って俺のような若輩者では何の判断もできないな。こういったところはこれまでかなりの数の従業員を採用してきたエヴァの方が俺よりはるかに適しているはずだ。
「わらわが思うに」ここでいきなりアキナちゃんが話し始めた。目の前で椅子に座る足立さんから見た場合、俺たち3人はどう映るだろう。美少女=未成年者、と30前の男が並んでいる。かなり怪しい会社に見えるのではないだろうか。
うちの会社は資本金だけをみれば100億の大企業だ。リクルート会社もうちの会社の登記情報を確認しているだろうから、応募者もそれくらいは知っているだろう。ということは、目の前の3人は一体全体何なんだ!? と、思っているに違いない。会社と言っても3LDKの中古マンションだし。従業員はどう見ても未成年者の2人を加えても4人しか見当たらないし。得難い体験だろう。
「わらわが思うに、世の中には2種類の人間しかおらぬ。
できる人間と、できない人間の2種類じゃ。
おぬしは自分のことをどちらの人間と思う?」
急にアキナちゃんが哲学を始めてしまった。かなりきわどい質問だ。アキナちゃんの頭の中には正解があるのだろうが、足立さんは正解を答えられるのだろうか?
「私は自分のことをできる人間と思ったことは一度もありませんが、周囲、これまで勤めていた会社では、私のことをできる人間だと認識していたと確信しています」
「なるほど。よい答えじゃ」
足立さんは正解を引き当てたようだ。俺なら確実に落とされたな。
その後、エヴァが当たり障りのない質問を足立さんにして、一人目の面接は終わった。




